ダートトラックレーシングの本場アメリカでも、競技の専用パーツやその補修部品を実店舗に並べて日々営業するショップなんてほぼ皆無です。なにか欲しければ大きなレース会場での出店か、メールオーダー (カタログ販売) 、現代ならSNSも絡めてレースコミュニティを頼って人づてに探してみるとか・・・?あちらのeBay、日本ならネットオークションとかフリマアプリなんかじゃそうそうヒットする機会も少ない、家内制手工業っぽさバリバリのレーシングアイテムたちですが、時にはなんでこんな珍しいものがこんな値段 (安) で?みたいなケースに遭遇することもあります。

左右対称でブレーキなし・素朴なアルミ削り出し・40穴の "糸巻型" ハブ

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。オーバル競技のダートトラックで用いられるマシンには、フロントブレーキシステムを一切装備しないのが基本 (※右コーナーとジャンプありのTTレイアウトを除く) ですが、そうなるとスポークホイール前輪の "ハブ" は、自転車並に小径・軽量シンプルなもので十分に用を為します。

かれこれ20年以上も前から "リアホイールは重め" が好まれる本場のダートトラックシーンですが、ハンドリングに直接関わるフロントホイールは、可能な限り軽く小さいものが求められている模様。

写真左は今回筆者が国内ネットオークションにて競り合いゼロの格安で手に入れた、アメリカ製ダートトラック用スプールハブ。重量400g。詳しくないんですけど競技用MTB自転車の後輪ハブくらいの重さ?ざっくり素朴なアルミ削り出しで、スポーク本数はハーレーと同じ40本。

比較対象としてやや選択を誤ってる感じもしますが、写真右はハーレーダビッドソン・ダイナの純正フロントハブ。左右のベアリングとセンターカラー込みだとその重量は1,800gくらいです。その差驚きの450%!?本来ここにブレーキローターも (下手すりゃ左右2枚) 取り付けられるわけで、種々様々なモーターサイクルの多様性を感じずにはいられません。

ブレーキの付かない超小径の糸巻型 = スプールハブホイールと言ったら、ピーター・フォンダのキャプテンアメリカ号 (映画イージーライダースに登場するチョッパーカスタム) とか、そのテイストのショーバイクでもお馴染みですが、実利に適ったホンモノ感がたまらない感じです。

ハブの真ん中に刻まれた "RW" のイニシャル?の意味するものは・・・

さてさてこちらのスプールハブですが、中央部分の目立つ箇所に "RW" なる刻印があります。アメリカン、ヴィンテージ、ダートな方面でイニシャルRWと言えば?カナヅチみたいなハマーヘッド・スタイルが特徴の RED WING サスペンション?それとも伝説のダートトラックマシンビルダー Ron Wood さん?なにやらおそらくヒストリーがありそうですが、よくわからないから本場のコミュニティにズバっと質問してみましょう。こういう時、SNSって使えるなーと実感しますよね。

"そりゃお前さん、オクラホマシティ郊外のリチャード・ウィリアムスって職人が作ったハブだわ" "後輪用のクイックチェンジハブはまぁまぁ見かけるけど前輪用スプールはけっこう珍しいと思うな" "もう随分前に仕事やめたヒトだと思うけど、そんなのが遠く日本で見つかるんだねぇ。大事に使いなよ" "ウチのトラックマスター・トライアンフにもついてるよ?"

などなど・・・コミュニティの層の厚さというか歴史?わずかな価格で買った中古パーツにもこれだけ蘊蓄が出てくるんだもの、やはりよく言う "神は細部に宿る" ってのは本当なのかもしれません。

RW刻印の入った後輪用クイックチェンジハブ。日本でも3つくらい見かけたことがあります。

こんな "他に使い道のなさそうな" ダートトラック競技専用で少量生産のスペシャルパーツ、本場でなら入手することはもちろんできますが、なんとなくオークション眺めていたらほんの軒先で拾い上げられた、ってのがなんだか不思議な感じです。どうやって日本に来たのかな?とか、前の持ち主はなんのために買ったのかな?とか、想像してみると可笑しいですよね。

筆者はこの手のパーツをコレクションする芸風ではないので、たとえ年代物の貴重な品でもバリバリ有効に使いたいと考えています。やがて大手を振って走れるようになったら、ですけどね。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!