前走車が盛大に巻き上げた砂塵・・・そのフォルムがまるで雄鶏の尾羽のようだからルースター・テイル→ルーストと言います・・・を全身に浴びつつ、ざくざくの路面にパワーを奪われないよう多めにスロットルON!硬質トラックに比べたら間違いなく派手めに横を向きながら周回!何十年も大きく姿を変えることなく連綿と続いてきたアメリカン・ダートトラック・レーシングの原風景は、オハイオ州ライマのクッション・ハーフマイル戦に今も活き活きと現れています。

"洗車と洗濯を楽に済ませたきゃ、一番前を走ればいいんだよ"という金言

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。つい先日、6月最後の週末に、今シーズンのAFTシリーズ第7戦として開催された "ライマ・ハーフマイル" 。昨年はたしかCOVID-19禍で、世の中の状況が極めてシビアーな時期に予定されていたために中止となりましたが、全米を巡るトッププロ・シリーズにはなくてはならない伝統の一戦です。

ライマのクッション・ハーフマイルを語るうえで欠かせない要素のひとつ。それは、トラックを形成する "ライムストーン" です。我々ダートトラッカーはしばしばレーストラックの土質、という表現を用いますが、実際にはここのトラックは非常に小さな "石" なんですね。日本ではやや馴染みのないライムストーンですが、数ある天然石のなかで、おおきく石灰石のひとつとして分類される堆積岩の一種。太古の時代、海中で貝やサンゴの死骸が沈殿し、長い年月を経て固まった岩石です。

地熱による変成作用を受けていないため結晶化していないライムストーンは、大理石や御影石の仲間で、鍾乳洞を形成する岩石としても知られるとおり、長い年月のなかでは "雨水に溶ける" 性質をもっていて、短期的にも吸水率が極めて高いのが大きな特徴です。

埃を抑え平滑を維持する路面整備のための撒水は、ざくざくのライムストーンを重たい粒に変え、マシン後輪が巻き上げるそれは、後続のライダーとマシンを弾丸のように襲います。モロに被り続ければ全身土色の塊と化し、レースナンバーが判別できないどころか大きな抵抗にもなって、徐々に先行車との距離が離されていってしまいます。

ライマ・ラウンドを戦った後のヘルメットはほらこのとおり。"pea gravel" = 砂利とか豆石とか言われるほどの粒が高速で全身に襲いかかり、革ツナギの下もアザだらけになるのは当たり前、だそうです。それが嫌ならライバルより前を走るほかない、とは誰が言ったか金言でしょう。確かに確かに。

単気筒クラスと"11人制トッププロ"はいつもの有力ライダーたちが勝利!

今シーズンのライマ・ハーフマイル、若手の登竜門AFTシングルスは年齢制限ギリギリのベテラン、ヘンリー・ワイルスが、気づけば11人のエントリーしかない寂しいトップカテゴリーAFTミッションフード・スーパーツインズはディフェンディング・チャンピオンのブライアー・バウマンがそれぞれ勝利。いずれも実力派の常勝ライダーですが、ここでの盤石の戦い方はそれこそ積み重ねてきた経験が生むものと言えるでしょう。

市販車改造クラス "AFTプロダクションツインズ" は、久々に登場のジョニー・ルイス + ロイヤルエンフィールド650が勝利。ライダーの技量も確かなものですが、新興メイカー (レーシングチーム) のマシンがこの特殊なコンディションを制したことは、これからの流れを大きく変えるターニングポイントとなるかもしれません。今後の飛躍に一層期待、かな?

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!