BMWは近年、2輪EVにまつわる話題を多く提供していますが、先日2輪EVに関するパテントを公開し注目を集めています。その内容は、ICE(内燃機関)のフラットツインでおなじみの「縦置き」のモーター軸に組み合わせるファイナルドライブ・・・シャフトドライブに関するものです。

着々と、「電動化」に向けて準備を進めるBMW

ハーレーダビッドソンが開発したライブワイヤなどの例もありますが、近年生み出されている2輪EVの多くはICEの代わりに電気モーターを「横置き」にして、変速機を介さずに後輪をチェーン(またはベルト)で駆動するレイアウトを採用しています。

なかには変速機やクラッチを介したり、車輪に電気モーターを組み込むホイルインモーターもあったりしますが、既存のICEの2輪車で多いレイアウトを利用し、ICEの代わりに電気モーターを横置きするのが、経験的にもっともやりやすい「電動化」なのは確かでしょう。

今年に入ってからBMWは、自社の2&4輪EVに使うための全固体電池開発にさらなる投資をしたことを公表したり、近い将来に登場するであろうBMW製2輪EV用モデル名の商標権をおさえていたりと、電動化をめぐる活発な動きをみせています。

最近明らかになったBMWのパテントも電動化にまつわる技術で、それは1920年代からBMWが本格的に2輪事業をスタートさせた当時からなじみ深い、出力軸「縦置き」のレイアウトに組み合わせる、シャフトドライブなどの駆動系に関する内容でした。

BMW製のクランクシャフト縦置きフラットツイン完成車の初代モデル、1923年型のR32。ICEのサイドバルブ式フラットツイン500ccを搭載し、クラッチとギアボックス、そしてシャフトを介して後輪へ動力を伝えていました。現在販売されているBMW製フラットツイン搭載モデルも、この基本設計を伝承しています。

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モーターの減速には、遊星ギアを使用!

Fig.=図1で描かれているのは、前後輪のセンターに電気モーターの出力軸が並ぶレイアウトです。20番は遊星ギアによる一次減速機構です。入力と出力の軸を同軸配置でき、大きなトルクを伝達できる遊星ギアを一次減速に使うのは、機構をコンパクトにすることも同時にできるのでとても理にかなっているように思えます。

BMWのパテント図。遊星ギアの一時減速機構とシャフトドライブ機構は、CV(等速)ジョイントで連結されます。

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遊星ギアのアニメーション。減速され、内側(黒)と外側(赤)に速度差が生じます。

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図2では、前後輪のセンターからオフセットした位置に出力軸を配置し、その代わりにシャフトドライブと同一線上にした例がしめされています。この場合では50番に動力用バッテリーなどの重量物を配置させることで、オフセットされた電動モーターとのバランスを調整しています。

右から電気モーター軸、遊星ギア、CVジョイント、そしてシャフトドライブが同一線上に並ぶレイアウト図。

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クリーンさが"ウリ"の電動バイクに、シャフトドライブは適した構造!?

興味深いのは、2019年に公開されたビジョンDCロードスターのスイングアームが片持ちだったことに対し、このパテントでは図1、2ともに昔ながらの両持ちになっている点です。またビジョンDCロードスターのシャフトドライブは、パテント図とは逆の左側に配置されています。

2019年6月にBMWが公表した電動バイク、ビジョンDCロードスターのシャフトドライブ。

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もっとも、ドライブトレインを右側にするか左側にするかは、図面のレイアウトを反転させるだけみたいな作業ですので、如何様にすることも可能でしょう。またビジョンDCロードスターに遊星ギアの一次減速が採用されているかはさだかではありませんが、将来市販バージョンが登場するときは採用されることになるのではないか・・・と予想できます。

今現在市販されている2輪EVの多くは、ガソリンやオイルや排気ガスの匂いや汚れがないことを、2輪EVの魅力のひとつとしてアピールすることが多いです。確かに、今普及が進みつつある電動の子供用モトクロス/トライアルバイクなどでは、ICE搭載のそれらのように油汚れをほとんど気にすることなく、洗車が簡単にできることをメリットにあげるお父さんが世界的に多いです。

ドライブチェーンの代わりにシャフトドライブを採用することは、騒音を減らすという面でもメリットがあるでしょう。

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電動の子供用モトクロス/トライアルバイクなどで、唯一油汚れや給油を気にする箇所といえば・・・それはドライブチェーンです。またドライブチェーンは走行時の静かさがウリの電動バイクのなかで、ノイズを発生するパーツのひとつにもなります。ゆえに、チェーンの代わりにシャフトドライブを採用するというのは、2輪EVの騒音対策とメンテナンスフリー化策としては、"アリ"といえるのではないでしょうか?

また、2輪EVのなかには、チェーンよりもノイズが少ないベルト駆動を採用する例もありますが、消耗品として見たときにシャフトドライブはベルトよりもはるかに寿命が長いです。BMWが「縦置き」とシャフトドライブにこだわるのは、1世紀弱の伝統を活用したイメージ戦略的なものもあると思いますが、BMWが「電動化」にあたり縦置き+シャフトドライブのレイアウトを検討するのは、得られる諸々のメリットからしても、じつに合理的といえるのかもしれません?

2019年に明らかになった、出力軸「横置き」のBMW2輪EVのパテント図。

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もっとも2019年に、BMWは「横置き」の2輪EVを検討していることがパテント図から明らかになっています。そのディメンションは並列2気筒ICE搭載の現行モデル、Fシリーズとほぼ一緒なので、BMWは縦置きも横置きも、将来的にどちらのレイアウトもモデルの性格に合わせて使おうと考えているのでしょう。

ともあれ、市販バージョンのBMW製2輪EVを早く見たいものですね! そして、その乗り味を早く体験してみたいです!

The BMW Motorrad Vision DC Roadster.

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