6月6日決勝のMotoGP第7戦カタルニアは、MotoGPクラスで数々のドラマが繰り広げられました。その中でも一番の見どころだったのは、前戦イタリアGPで2位表彰台を獲得したKTMのミゲール・オリベイラが、見事今シーズン初優勝を飾ったことでしょう!! ここ最近のKTM RC16のポテンシャルアップの秘密は、どこにあるのでしょうか?

魔のターン10とか胸をはだけたセクシー走行とか? 盛りだくさんの内容でした

カタルニアの決勝は、2周目からM.オリベイラが先頭に浮上。ファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)、ジョアン・ミル(スズキ)、ジャック・ミラー(ドゥカティ)、ヨハン・ザルコ(ドゥカティ)が先頭を追う展開が24周のレース中盤まで続きました。

左からM.オリベイラ(KTM)、F.クアルタラロ(ヤマハ)、J.ミラー(ドゥカティ)らワークスライダーたち。

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12、13周目はポールポジションスタートのクアルタラロがオリベイラを抜いて首位を走りますが、再びオリベイラが前に出て先頭集団を引っ張ることに。その後なんとクアルタラロは、レーシングスーツのファスナーが降りて、胸部プロテクターがない状態で走り続けることになります! 

結局先頭を守り抜いたオリベイラが今シーズン初勝利。後退したクアルタラロに代わり2番手に上がったザルコが、オリベイラに肉薄するも届かず2位。そして3位でゴールしたクアルタラロは、トラックリミット違反と上述の装具の問題でそれぞれ3秒ずつ合計6秒のペナルティが加算され、繰り上がりでミラーが3位表彰台に登壇することになりました。

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なお舞台となったカタルニアのコースは、ターン10のレイアウトを変更していたのですが、なんとこの場所でマルク・マルケス(ホンダ)、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア)、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)を含む6名が転倒! 今回のレースでは完走した者もそうでない者も、多くがタイヤのグリップに苦しむことになったようです・・・。

新フレームと新燃料・・・2つの武器を手に入れたKTM!!

カタルニアでは多くのライダーが、カタールでの2戦のときのようにタイヤのグリップ不足に悩まされることになりました。加速時にリアが振れ、そのコントロールに苦戦するライダーが多かったようです。ライダー各自のタイヤ温存走行に頼るだけでなく、ヤマハやアプリリアのようにタイヤを空気で冷やすデザインを持つフェンダーをカタルニアで使ったチームもありました。

なお優勝したオリベイラは、トップ10のライダーのなかで唯一前輪にハードタイヤを選んでいました。クアルタラロはタイヤ温存を心がけて先頭を走りましたが、オリベイラは彼との先頭交代をしているときに冷静に観察し、クアルタラロにはタイヤの余裕はないことを看破。自身も最後の8周は転倒しないように苦労しましたが、できるだけタイヤに優しく走ることを心掛け、自分のラインでミスをしないように走り切りました。

決勝レース後、カタルニアで行われたテストを走るM.オリベイラ(KTM)。この日は首位タイム=1分39秒4のマーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)よりコンマ636秒遅い9番手タイムでしたが、新たに試した仕様の評価などで好感触を得ることができた満足いくテストだったようです。

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前戦のイタリアGPよりKTMは新型フレームのRC16を託しており、オリベイラがイタリアGP2位に続いてカタルニアGPで優勝できたのには、この新型フレームが寄与するところが大きいのでしょう。新型フレームの狙いは、コーナーでのライン取りを選びやすくして、コーナー立ち上がり加速をよくすることにあると、オリベイラはイタリアGPのときに語っていました。

しかし、さらに注目したいのは、オリベイラが上述のコメントに続けた内容です。「フレームが良くなったのは素晴らしいことだけど、それ以上に素晴らしかったのは"新しい燃料"を手に入れたことで、少しスピードが増したことです」。

KTMは燃料をエルフからETSレーシングフュエールズに変更!

KTMはそれまでエルフの燃料をRC16に使用していましたが、イタリアGPより新たにETSレーシングフューエルズの燃料を使っています。国際的な炭化水素専門分野向けサプライヤーのHCSグループのブランドであるETSレーシングフューエルズは、2013年以来KTMのオフロードレース部門の技術協力をしており、FIMモトクロスやAMA SX/MXでの複数のタイトル獲得に貢献しています。

ETSレーシングフューエルズの製品は、2&4モータースポーツやジェットスキーなどPWCの分野で、日本のユーザーたちにも愛用されています。

global.etsracingfuels.com

新採用の燃料は何がスゴイのでしょうか? 現代のMotoGP用燃料は、1980〜1990年代には添加成分として使われていたテトラヒドロメチルシクロペンタジエンのような、パワーを向上させるジエン類(二重結合を2つもった炭化水素)を排除しています。ちなみにテトラヒドロメチルシクロペンタジエンとは、ミサイルなどの液体ロケット推進剤に使われています。

MotoGPマシン用のような高性能エンジンに使用するガソリンは、揮発性が高くすぐに気化し、高速で燃える混合気が作れること・・・と、高圧縮設計の燃焼室でもデトネーション(異常爆発)を起こさない・・・という2つの要求を満たすため、バランスをとった設計が必要になります。

カタルニアGP予選時のM.オリベイラの走り。決勝でのF.クアルタラロ(ヤマハ)との先頭争いを演じたときは、直線の速さでの優位性を披露していました。

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揮発性を高くするにはイソペンタンのような低分子炭化水素を使いますが・・・でもそれらは重い炭化水素のように高い耐デトネーション性を持ち合わせていません。でも揮発性が低い炭化水素を使って耐デトネーション性を上げると、気化が遅くなりピーク回転で混合気の状態が理想的ではなくなったり・・・。

ETSレーシングフューエルズがKTMに提供するRC16用燃料は、RC16エンジン諸元にバッチリ合わせたレシピの、スペシャルな燃料なのでしょう。車体、エンジンともに強化されたRC16が今後のMotoGPでどのような活躍をするのか・・・。まずは6月20日決勝のドイツGPを楽しみに待ちましょう!

MotoGP2021 第7戦カタルニア 決勝
1 M.オリベイラ Red Bull KTM Factory Racing KTM 40'21.749
2 J.ザルコ Pramac Racing Ducati 0.175
3 J.ミラー Ducati Lenovo Team Ducati 1.990
4 J.ミル Team SUZUKI ECSTAR Suzuki 5.325
5 M.ビニャーレス Monster Energy Yamaha MotoGP Yamaha 6.281
6 F.クアルタラロ Monster Energy Yamaha MotoGP Yamaha 7.815
7 F.バニャイア Ducati Lenovo Team Ducati 8.175
8 B.ビンダー Red Bull KTM Factory Racing KTM 8.378
9 F.モルビデリ Petronas Yamaha SRT Yamaha 15.652
10 E.バスティアニーニ Esponsorama Racing Ducati 19.297

MotoGP2021 ランキング ※6月6日現在
1 F.クアルタラロ Yamaha 115
2 J.ザルコ Ducati 101
3 J.ミラー Ducati 90
4 F.バニャイア Ducati 88
5 J.ミル Suzuki 78
6 M.ビニャーレス Yamaha 75