"路面の状態が酷くて・・・" とか "タイヤが全然食わなくて・・・" とか、今日はちょっと巧く乗れない理由づけなどいくらでもできますが、それにもかかわらずあなたよりも速く走るライダーが同じトラックにいるならば、そんなモンは負け犬の遠吠え、単なるエクスキューズです。本日は今から半世紀近く前、映画 "オン・エニー・サンデー" の少し後、そして80年代黄金時代のちょっぴり前、今よりマシンが素朴で男たちがもっと漢だったころ?の貴重な2気筒TT戦の模様をご紹介しましょう!

路面もマシンも"こんなモン"。はてさて乗り手のパフォーマンスたるや?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。本日ご紹介する動画は1973年のGNCピオリアTTでのツインズ戦。当代No.1プレート = ディフェンディングチャンピオンはヤマハを駆るケニー・ロバーツで、他の顔ぶれもデイヴィッド・アルダナ、マート・ローウィル、ジーン・ロメロ、ディック・マン、ジェイ・スプリングスティーン (ルーキーイヤー以前!) らといったレースファンなら誰でも知っている?錚々たるラインナップです。さっそくどうぞ!

Peoria TT

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1973年というと、すでに前年アロイシリンダーの後期型 (つまり一般的にそのスタイルを知られるツインキャブレター + 左出しマフラーの) ハーレーダビッドソンXR750が登場したころですが、タイヤは今より数世代前?ピレリMT53なんかのいわゆる "ユニバーサルタイヤ時代" 。グリップレベル (いやむしろ "スリップレベル" かな?) など、当然ながら今日とは雲泥の差です。

ターン進入で小刻みに前後輪が跳ねる様とか、ジャンプの着地でサスペンションが受け止めきれずにさらに1バウンドする様子とか、今日的ダートトラックレースシーンと全く違わぬ細部を見ることもできますが、現代と比べればレーストラックのラフさ、マシンの暴れ方はより獰猛で原始的な感じ。

そんな条件を御しマシンをさらに前へと進めようと奮闘する当時のトップライダーたちのメンタリティとパフォーマンスは、あるいは今日のアスリートと比較しても決して劣るものではなさそうです。妄想ドリームマッチではあるけれど、若いままの彼ら70年代選手がもしもインディアンFTR750を駆ったとしたら、21世紀の現役選手たちといったいどんな戦いを繰り広げるでしょう?

走れば荒れる?開けたら滑る?・・あったりまえを攻略することが成功の鍵

幼い家族たちが我が家に増えたこととか忌々しいCOVID-19禍のこととかが重なって、筆者が日常的に各地のレーストラックへと足を運ぶ機会はここ数年メッキリと減ってしまったままでいますが、トラックコンディションに関する悩みや不平不満はかつてより多く耳に入ってきます。みんな贅沢ね。

レースをより安全かつスムーズに主催して進行することが最優先のテーマとはいえ、"水撒きおじさん" としても優秀なんだなぁ私。という自画自賛は冗談ですが、良い条件で楽しんで走りたいのは誰しも同じ、人の常。しかしことレースでは、路面や場が荒れてからが本当の勝負だとも言えます。

荒れてきたからうまく走れな〜い!とか開けたら滑るから速く走れな〜い!などと宣ってらっしゃるうちは・・・まだまだあなたは動くパイロン、誰かにとっての "抜かれる対象" でしかありません。

路面がガッタガタに荒れてきて → さてどう走ろうか?開けたらツルっと滑るのは当たり前 → それでも他者よりさらに前へとマシンを運ぶにはどうすれば良いだろうか?と夜も眠れず真剣に考え始めたとき、実ははじめて次のステージへの扉がギイッと音を立てて開くのですよ。

まぁ集まってワイワイやってるだけでもじゅうぶん?楽しいですけどね、ダートトラック。でもね、ここだけの内緒の話なんですけど、正しいヨーイドンから他者どもをコテンパンにやっつけるのってね、実はさらに100倍楽しいんですよ (当社比) 。"ワイワイ楽しく" からはアドレナリンとかドーパミンとかドバドバ出ないからなぁ。別に結果としては勝てなくてもいい。勝つ気でやるか否か、だ。

一人でも多くの方たちにこの素朴なフィーリングを味わっていただけたらいいんですけどね。ま、世の中が落ち着いたらそのうちに。ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!