世の中には様々なクラシック系モータースポーツがありますが、クラシック50ccユーロカップは欧州ならでは・・・と言えるイベントです。日本では原付一種に区分される50ccが、140km/hをゆうに超える最高速で競い合う光景は、小排気量のGPマシンが活躍した古き良き時代を彷彿させます!

2008年からスタートしたイベント

かつて1962年から1983年まで間、世界ロードレースGP(現MotoGP)には最小排気量クラスである50ccクラスが存在しました。第二次世界大戦後、日欧では復興の足として小型2輪の需要が高まり、多くのメーカーが2輪製造業に進出。そして1950年代後半の世界的"モペッドブーム"により、50ccマシンに人気が集まることになりました。

そんな人気を背景に、50ccマシンによる選手権は欧州選手権としてスタートしましたが、1962年からは世界選手権に昇格。黎明期のGP50ccクラスはスズキとホンダの2メーカーが席巻することになりましたが、日本勢がGPワークス活動を休止してからは欧州メーカーが主役のクラスとなります。そして1984年以降は50cc→80ccに排気量が変更されることになりますが、1989年のクラス消滅まで欧州勢中心のカテゴリー・・・というトレンドは変わることなく続くことになりました。

去る1月、77歳でお亡くなりになったオランダのヤン・デ・フリスとファン・フィーン・クライドラー50。1971年と1973年にGP50ccクラス王者となった氏は、オランダ人初の世界GP王者でもありました。

www.motogp.com

「クラシック50ccユーロカップ」は、その時代・・・1983年以前の50ccGPマシンによるクラシックロードレースイベントです。2008年からスタートしたこのイベントは、毎年オランダほか欧州大陸のサーキットで年間4〜6戦が開催され、ポイント制でチャンピオンを表彰しています。

もっとも、シリーズ戦のロードレースではありますが、あの時代のGP50ccクラスを愛する同好の士による家族的な集まりになることを最大の目的とした催しであり、競技至上主義というよりフレンドリーなミーティングイベントとしての側面が強いです。

グリッドに並ぶのは、かつてこのクラスで活躍したGPライダーもいれば、レース経験の少ない小排気量GPマシンコレクターもいて、参加者の国籍もオランダ、ドイツ、ベルギー、スウェーデン、フィンランド、セルビア、オーストリア・・・と、国際色豊かです。

2011年のイベントのスタートシーン。元GPライダー、ホビーレーサー、経歴を問わず50ccレーシングマシンを愛する人たちが一緒になって、走りを楽しんでいます。

www.classic50racing.com

17,000rpmという高回転域の、2ストローク50ccサウンドをご堪能ください

もちろん、同好の士の親睦をテーマにしたイベントではありますが、レーストラックでの彼らの走りはやっぱり"ガチ"です。こちらに紹介する動画は、2019年の年間4位の実力者、ウィーブ・プランティンガさんのYouTubeチャンネルにアップされている、プランティンガさんのクライドラー50のオンボード映像です。

2019年、クラシック50ccユーロカップ、アッセンでのオンボード映像。17,000rpmまでキッチリ回して、小さな50ccの2ストロークエンジンからパワーを絞り出す走りを楽しめる動画です。

www.youtube.com

欧州大陸で非常に人気が高かったGP50ccクラスということもあり、日本ではこの手の50ccレーサーが走るイベントは非常に稀です。そんな50ccGPマシンが二桁台数集って全力で疾走するシーンが見られるのは、この手のマシンが好きな日本の人にとっては実に羨ましいイベントですね・・・。

2020年度はCOVID-19パンデミックの影響で開催されませんでしたが、2021年は現状4戦のカレンダーが公開されています(+2戦の可能性も?)。早くこの厄災が世界から去り、こういうイベントを安心して楽しめる日が来ることを祈りたいです。

Eurocup Assen Wedstrijd-1 Kreidler 50cc Nr. 79 07-07-2019

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