21インチと17インチの間、最も初源的で中庸なサイズ感?が19インチ!
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。このカテゴリーで要求される性能に応える競技専用タイヤは、本場アメリカのプロ選手権・AFT: アメリカンフラットトラックシリーズで使用される唯一の公認指定タイヤ "USダンロップDT-4" をはじめ、マキシス・シンコー・ミタスなどいくつかのタイヤメイカーで製造されていますが、フルサイズ車両用モデルはいずれも "19インチのみ" です。(例外的に、小排気量の小型マシンに向けた同一パターンの17インチ版が複数のブランドからリリースされています)
モーターサイクル用ホイールは、タイヤを保持するリムとワイヤースポーク (本場のダートトラックシーンではステンレス製が好まれます) とで構成される "スポークホイール" と、鍛造・鋳造・あるいは削り出しや組み立て溶接などで製作される一体型の "ワンピースホイール" に大別することができます。一般にスポークホイールはしなやかで衝撃吸収性に優れ、ワンピースホイールは硬く高剛性でチューブレス使用可能 = 基本的にタイヤチューブを必要としません。
ここまででお分かりのとおり、本場アメリカのダートトラックレースシーンの最新トレンドは後者のワンピースホイール・・・アルミ合金ブロックからCNCマシニングセンター (コンピュータ制御の大型複合切削機械) を駆使して削り出される、この写真のような美しい逸品たちです。
センターハブからリムへと伸びるスポーク部の形状には同一ビルダーでも様々なバリエーションがあり、ホイール単体重量にもセッティング幅を持たせる工夫がなされているのが特徴のひとつ。ほぼディッシュホイール・一枚皿的後輪デザインなんか異様でことさらに目を惹きますね。レーシングマシンだからと言って軽ければいいわけでもなく、近年は重めのリアホイールがよく好まれるようです。
かつて2016年のシーズン中には、後輪内部にホイールウェイト (重し) を付け加えてレギュレーションの上限を超える重量増加で不当な優位を得たとして、ブライアン・スミス選手がランキング首位を争うライバルからクレームを受ける出来事がありましたが (結果的に処分なしでスミスは同年シリーズチャンピオン獲得) 以来現在まで数年間、"重いホイール・ブーム" は継続中です。
聞いた話だと90年代まではタイヤチューブへ空気の代わりにコッソリ水をパンパンに入れて重量を増し、トラクション性能を飛躍的に向上させる禁断の?テクニックもあったようですが、誰だかがマイルレースでパンクし公にバレて禁止になったとか?規則とのイタチごっこの種は尽きませんね。
潰して大地を捉える専用タイヤの特性に呼応する、幅広リムが必要なのです
ひとくちに19インチ径といっても、タイヤの断面形状に起因する路面を捉える感覚はホイールリムの幅によってガラっと表情を変え、また空気圧の調整とも相まって、マシンが大きく傾くターン中のタイヤ接地面積の大小は、パワーデリバリー= トラクション性能にも直結する大きな要素です。
公道を走る一般的な市販車の (フロント用) 19インチホイールの幅は、2.15 (WM3) とか2.50 (WM4) といったサイズです。またDTXマシンのベースとなるモトクロス車両のリア19インチホイールは、1.85 (WM2 / 250ccクラス) か2.15 ( WM3 / 450ccクラス) が普通。当然ながらアフターマーケットで国産ホイールメイカーが販売する高剛性アルミリムも、19インチの場合、最大で2.50幅までしか設定がありません。かつては2.75とか3.00とかあったんですけどね。日本じゃダートトラッカー以外必要ないんだろうし、いつの間にかラインナップから消え去ってしまいました。
19インチ径ダートトラックレーシングタイヤのサイズ表記はどのメイカーもおおよそ前130サイズ・後140サイズ相当ですが、これに見合うスタンダードなリム幅は (個々のセッティングや乗り手の好みや付いてさえいればどれでも構わんみたいな鈍感野暮は置いておいて) 、前リム2.75 (WM4.5) ・後リム3.00以上 (WM5+) がその標準サイズです。17インチのミニマシン用は2.75以上が適正リム幅。
もちろん一般にもっとも普及する2.15幅とか、理想的な標準サイズより細いリムにダートトラックレーシングタイヤを組み込むことも可能です。タイヤトレッドのブロックパターンで蹴散らして走るようなザクザクのクッション系トラックや、より軽くシャープなハンドリングを求める向きには細めのリムが合う場合もあるでしょう。車両メイカーによってはフロントフォーク幅狭めのモトクロス車だと太いホイール&タイヤは履けないケースもあります。アメリカ人はすぐワイドな三つ又作ってしまったりしますけど・・・。
日本では生産されなくなりもはや中古もほとんど流通しない "太めのアルミリム" ですが、アメリカ製ブランドでは今でも現行品として存在します。そしてもちろん本日ご紹介した重め・太め・硬めの削り出しホイールも作ってるヒトがいるし、羨ましい限り。たとえ我が国が車両そのものの製造国ではあっても、本場の貪欲な畑にはなかなか追いつかない居心地悪さを感じる残念な点のひとつです。
お気軽に車両を仕立てたい・・・大きめな壁だったりそうでもなかったり?
本場アメリカでダートトラックホイールを用意しようと思ったら、いくらくらいかかるものでしょう?新品前後であればスポークホイールで1200ドル〜、ワンピースホイールなら2000ドル〜くらいかな?モノ自体は当然アメリカ国内で揃いますが決してお安くはないんですね。
だったら無理だ!いらないや!諦めよう!だと思考停止でちっとも面白くならないんですが・・・。スタートラインに立つべく整えるにはどうしても予算が必要です。ここはなんとか頑張って調達するしかありませんかね。その前に我々が、使いたくなる場を今一度作らないと、なのかな。
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!