1907年初開催という歴史を持つ著名なリアルロードレーシング(公道を使ったロードレース)であるマン島TT、そしてアマチュア対象のマンクスGPで長年使用されてきた、ラップタイム、平均速度、そしてライダーのポジションを表示する「スコアボード」が交換されることになりました。腐食により修復不可能・・・という判断からの交換ですが、長年多くの名勝負を見守ってきた「証人」的存在の退役は、ちょっと寂しいことですね・・・。

デジタル時代になってからも、熱戦を見守ってきた手書きのスコアボード

マン島TTファンの方にはお馴染みでしょうが、サーキットのインフォメーション設備が電光/液晶表示になってから久しい今も、マン島を周回するTTコースのスコアボードは昔ながらの「手書き」仕様のままでした。

1950年マン島TT、セニア(500cc)クラス・・・。優勝のジェフ・デューク(57番)とアーティ・ベルが、同年ノートンワークスが投入したスイングアーム採用の"フェザーベッド"マンクスを、ゴールさせるシーンです。マン島の島外からの玄関口である街、ダグラスのグレンクラッチリーロードにある「スコアボード」は、このようなエポックな光景の"お馴染み"の背景として、多くの写真に記録されてきました。

primotipo.com

"アイコニック"なマン島TTコースの"手書き"スコアボードは、この島で行われてきたモータースポーツの伝統としてこれまで使い続けられてきました。なお現在のボード周辺のレイアウトは、1980年代に構築されたものを受け継いでいます。

www.bennetts.co.uk

2018年に行われた調査の結果、この歴史あるスコアボードの一部は長年の使用による腐食が著しく、修復が難しいことが明らかにされました。その結果ボードの一部は交換され、2022年に開設が予定されているマンクスミュージアムの新ギャラリーに、展示されることになりました。

多くの人が"アナログ"で継続されることを望んでいるようですが・・・

100年以上、スタンレー・ウッズ、ジミー・シンプソン、ジェフ・デューク、ジョン・サーティーズ、マイク・ヘイルウッド、ジャコモ・アゴスチーニ、フィル・リード、トニー・ラッター、ジョイ・ダンロップ、ジョン・マクギネス・・・などなどのスターライダーの活躍を見守ってきたスコアボードですが、このシステムの運用には70人のボランティアの「手」が必要でした。

管制の支持を受け、"デコレーター"と呼ばれるスタッフがプレートに手書きでデータを記入し、差し替え役の"スカウト"にプレートを手渡します。スコアボードの舞台裏もまた、真剣勝負の場となっているのです。

www.bennetts.co.uk

このシステム運用の当事者含む関係者の74%が、アナログなこれまでの方式の存続を望んだそうですが、2022年以降はリーダーボードパネルをデジタルスクリーンに置き換えることが検討されているようです・・・。

COVID-19感染拡大により2020年のマン島TTはキャンセルされましたが、2021年の6月にCOVID-19感染拡大が収束し、無事TT開催が再開された場合・・・その時の「スコアボード」はどのような構成になっているのか? それを見るのも、来年度のマン島TTの楽しみのひとつ、と言えるのかもしれません。