先だっての週末のイリノイ州。ショートトラック + マイルレース2連戦という "トリプルヘッダー" で行われた伝統のAFTスプリングフィールド・ラウンド。件の感染対策・帰ってきた暴れん坊・新たな世代の台頭などなど、トピックには事欠かないレースウィークとなりましたが、その話題の中心に今回限りで38年間のナショナル・レースツアーを終えることにした、ある写真家夫婦がいました。

みなさんもきっと、彼らの作品をどこかで目にしたことがあるはずですよ。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。もしあなたがデイブ&キャシーのホーニッグ夫妻と、2人が長年運営する "FLAT TRAK FOTOS" という写真販売サイトを全くご存知なかったとしても、彼らが活き活きと切り取った本場アメリカンダートトラックレースシーンの一葉は、我が国を含め世界中の人々の目に触れるところにありました。

www.flattrakfotos.com

ホーニッグ夫妻はAMAグランドナショナルチャンピオンシップ、現AFT = アメリカンフラットトラックのオフィシャルフォトグラファーとして、スタッフ用の青いパドックシャツを纏って (そのためレーススタッフは通称 "ブルークルー" とも呼ばれます) ほとんどすべての全米選手権レースに帯同。これまで実に数十年間、公式サイトで使われる写真の多くは夫妻の手によるものでした。

www.cyclenews.com

また1965年創刊の老舗モーターサイクル・マガジン "サイクルニュース" にはその毎戦の写真と詳しいレースリポートをいち早く寄稿。特に今日のようにSNSや動画配信の発達する以前は、本家AMAサイトよりどこより早く・詳細にレース結果を知ることのできる貴重なニュースソースでした。ちなみにサイクルニュース誌は2010年に紙媒体からWEB配信へと姿を変え、現在も毎週膨大な情報量の世界のモーターサイクルニュースを読むことができます。(しかも無料!スマホ対応!)

日本でアメリカンダートトラックレーシング撮影の第一人者といえば、言わずもがな中尾省吾さんですが、我が国で目にすることのできる本場アメリカのプロスポーツレベルの写真の実に半分以上は、中尾さんとホーニッグさんの撮ったものと言ってもさほど大袈裟ではないでしょう。

1988年のライマ・1/2マイル戦。1ババ・ショバートと11スコット・パーカーの攻防。PC: Dave Hoenig

このスポーツへの長年のサポートに深い感謝と、静かな引退生活に敬意を!

ホーニッグ夫妻はプロレースを軸に自身が撮影した写真を販売するとともに、ライダーがファンたちにサイン入れして配る "オートグラフシート (単にハンドアウトとも)" や様々なプロモーションアイテムのデザインと製作なども請け負い、このスポーツの現場がより一層華やかになり、さらに広く一般に認知されるための多大な貢献を果たしました。

誰もがスマートフォンでそれなりのクオリティの写真を撮ることができ、簡単にWEBで公開することのできる時代。撮影で身を立てるプロカメラマンとアマチュアとの境界は一層曖昧に、職業としての厳しさは増す一方という話を聞きますが、彼らホーニッグ夫妻のように長年コミュニティに寄り添い、発展に尽力してきた人々の存在感は、これからもきっと後進に受け継がれていくことでしょう。

引退はお二人の健康上の理由などではなく、ただそろそろゆっくり過ごしたい、とのこと。
GNC → AFTとか、まだまだ先の長そうな感染対策のことは関係しているのかもしれませんけどね。

なにはともあれHappy retirement!
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!