先週末、フランス・ブガッティサーキットで開催されたFIM EWC(世界耐久選手権)2019-2020年シーズン第3戦のルマン24時間は、2018年の同大会を制した日本のF.C.C. TSR ホンダフランスが、波乱の展開の中で見事2度目となる勝利をおさめました!

雨が、優勝候補たちを翻弄

予選でポールポジションを獲得したのは、ヤマハのオフィシャルチームであるYART(カレル・ハニカ、マービン・フリッツ、ニッコロ・カネパ)でした。2番手はBMWモトラッド・ワールド・エンデュランス ・チーム(ケニー・フォレイ、イルヤ・ミハルチク、マーカス・レイテルバーガー)、3番手はランキング首位のSERT=スズキ・エンデュランス ・レーシング・チーム(エティエンヌ・マッソン、グレッグ・ブラック、ザビエル・シメオン)、4番手はF.C.C. TSRホンダフランス(ジョシュ・フック、フレディ・フォレイ、マイク・ディ・メリオ)、5番手はドゥカティワークスのサポートを受けるERCエンデュランス(ランディ・ド・プニエ、ジュリアン・ダ・コスタ、ルイ・ロッシ)と、優勝候補チームがずらりとトップ5に並ぶことになりました。

ルマン24時間のスタート!

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長丁場の24時間耐久のスタートでは、ポールポジションからの発進に出遅れたもののYARTのN.カネパが順当に先頭に立ちました。カネパは首位を保ちM.フリッツにライダーチェンジ。そしてフリッツも1位をキープしつつ、K.ハニカにYZF-R1を託すことになりました。

しかし、降り出した雨が強くなって路面コンディションが悪化。2時間半を過ぎたところで、K.ハニカが痛恨の転倒! YARTに代わり、F.C.C. TSRホンダフランス、SERT、BMWモトラッド・ワールド・エンデュランス ・チーム、そして予選7位だった2018-2019年FIM EWCチャンピオンチームのWebike SRCカワサキ・フランス・トリックスターが、首位争いをすることになりました。

新型ホンダCBR1000RR-R SPをルマン24時間に投入したF.C.C. TSRホンダフランス。

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注目のドゥカティ久々のワークスサポートでの24時間挑戦というミッションを担ったERCエンデュランスですが、初回スティントの終盤に燃料切れというトラブルで後退・・・。レース全体の1/3にあたる8時間経過したところでの順位は、首位のF.C.C. TSRホンダフランスが2位のSERTと3位のWebike SRCカワサキ・フランス・トリックスターを周回遅れにしてリード。

転倒したBMWモトラッド・ワールド・エンデュランス ・チームが4位、5〜6位はヤマハ系のVRD イゴール・ ピエレ・エクスペリエンスと3ART ベスト・オブ・バイクがつけ、7位には猛烈な追い上げで順位を挽回したYARTが走っている展開になりました。

最後の最後まで波乱が! そしてフィナーレへ・・・

24 Heures Motos 2020 - Onboard lap by night with Freddy Foray - F.C.C.TSR Honda France

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24時間レースの醍醐味のひとつ、夜の走行時間帯にも波乱が・・・。現地時間深夜2時ころ、2位を走行していたWebike SRCカワサキ・フランス・トリックスターのZX-10RRにマシントラブルが発生! 首位F.C.C. TSRホンダフランスに続く2位の座には、SERTが浮上しました!

初の24時間挑戦となったERCエンデュランスのドゥカティパニガーレV4 Rは、数々のトラブルに見舞われながらも完走を目指していましたが、現地時間で早朝5:30ころに電気系統の問題で残念ながらリタイアとなってしまいました。

17時間経過時点、首位は依然F.C.C. TSRホンダフランスが堅守! 2位SERTが3周遅れ、3位Webike SRCカワサキ・フランス・トリックスターが5周遅れで続きます。そして4、5番手にはともに転倒を喫するものの、BMWモトラッド・ワールド・エンデュランス ・チームが6周遅れ、YARTが8周遅れで諦めることなくレースを続けました。

波乱の展開続きの24時間・・・終盤戦になって再びブガッティサーキットに雨が降り出しました。そしてラスト2時間あたりで、なんと2位のSERTのG.ブラックが転倒! 2位の座をWebike SRCカワサキ・フランス・トリックスターに明け渡すことになりました・・・。

24 Heures Motos 2020 - Gregg Black crash

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そして終了10分ほど前・・・YARTに抜かれ4位から5位に下がったBMWモトラッド・ワールド・エンデュランス ・チームのイルヤ・ミハルチクがクラッシュ・・・! 耐久レースのシビアさを味わうことになってしまいました。

そして栄光のゴール・・・スタートライダーのJ.フックが予選前のフリー走行で右足を痛めたり、マイナートラブルに見舞われたり、雨やセーフティーカー介入などの外的要因に翻弄されつつ・・・ブランニューモデルのホンダCBR1000RR-R SPを見事国際レース初優勝に導いたF.C.C TSRホンダフランスが、2018年大会以来のルマン24時間制覇を達成!

2位は2019年大会優勝のWEBIKE SRC カワサキ・フランス・トリックスター! 3位はSERTという結果になりました。ランキングはSERTが首位を死守しましたが、8時間経過&16時間経過時点の順位に対して獲得できるボーナスポイント=1位の10ポイントx2、優勝40ポイント、そして予選順位(4位)の2ポイント・・・合計62ポイントをルマン24時間で稼いだF.C.C TSRホンダフランスが2位に浮上! SERTとF.C.C TSRホンダフランスのポイント差は40ありますが、最終戦までタイトル獲得の可能性を残すことに成功しました! ルマン24時間の優勝候補筆頭だったYARTは、転倒で失った時間を懸命にリカバーして4位でゴール。24ポイントを獲得してランキング3位で最終戦にのぞむことになります。

最後の決戦は、9月27日のエストリル12時間に!

栄光の表彰台! 優勝のF.C.C. TSRホンダ・フランス (J.フック/F.フォレイ/M.ディ・メリオ )、2位WEBIKE SRC カワサキ・フランス・トリックスター (J.ガルノニ/E.ニゴン/D.チェカ )、3位スズキ・エンデュランス・レーシング・チーム (E.マッソン/G.ブラック/X.シメオン )。

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FIM EWCの2019-2020シーズンは・・・秋の鈴鹿8耐が中止となったため、開幕戦ボルドール24時間、第2戦セパン8時間、第3戦ルマン24時間に続き、9月19〜20日にボルドール24時間が最終戦として行われることが予定されていました。

しかしボルドール24時間は無観客では開催しない! ということで急遽中止となり、その代替としてポルトガルのエストリル12時間が9月27日に最終戦として開催されることになりました! 慣例どおり、エストリル12時間は最終戦ということで決勝ポイントは150%で計算。また8時間経過のポイントと予選ポイントが加算されます・・・。

SERTの優位はカタイ・・・と思いますが、何が起こるかわからないのがレースであり、とりわけ耐久レースは「何が起こるかわからない」度が高いです! COVID-19に翻弄されたシーズンを制覇するチームはどこになるのか・・・注目しましょう!

2020 ルマン24時間 決勝
1 F.C.C. TSRホンダ・フランス J.フック/F.フォレイ/M.ディ・メリオ
Honda 24h00m57s502(816Laps)
2 WEBIKE SRC カワサキ・フランス・トリックスター J.ガルノニ/E.ニゴン/D.チェカ
Kawasaki 24h02m33s761(2Laps)
3 スズキ・エンデュランス・レーシング・チーム E.マッソン/G.ブラック/X.シメオン
Suzuki 24h02m16s192(3Lap)
4 YART ヤマハEWCオフィシャル・チーム K.ハニカ/M.フリッツ/N.カネパ
Yamaha 24h00m57s952(5Laps)
5 VRD イゴール・ ピエレ・エクスペリエンス F.アルトF.マリノ/N.テロル
Yamaha 24h01m22s949(17Laps)

FIM EWC 2019-2020 ランキング ※8月30日現在
1 Suzuki Endurance Racing Team Suzuki 127
2 F.C.C. TSR Honda France Honda 87
3 Yamalube Yamaha EWC Official Team by YART Yamaha 82
4 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM BMW 82
5 TEAM SRC KAWASAKI FRANCE Kawasaki 80
6 Wójcik Racing Team Yamaha 70

24 Heures Motos 2020 - Highlights of an amazing race

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