夏らしく楽しげな風物詩の話題もめっきり少ない、ある意味では特別すぎるこの夏、もはや連日の厳しい暑さばかりが肌身に滲みますが、真逆の季節の寒いところ限定のオーバル系モータースポーツ = アイスレーシングの映像なんかにささやかな涼を求めるのはいかがでしょうか?

トゲトゲしいスパイク付きタイヤで競うスタイルが一般的(?)ですが・・・

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。欧米やロシアのとくに北部、厳寒期には雪と氷で閉ざされるのが当たり前の地方で盛んなアイスレーシングですが、アメリカ・カナダではフラットトラックスタイル、ユーラシア大陸ではスピードウェイスタイルのマシンを用い、"レース用スパイク" を組み付けた専用タイヤを履かせて形作られるのが (あまり知られていませんが) そのスタンダード・フォーミュラです。

北欧やロシアの "スピードウェイスタイル" で使うスパイクタイヤは、下の写真のような神々しいまでのトゲ状突起を路面に突き刺して、ハングオフ・フォーム主体で走行します。バンク角はダート路面の比ではなく、マルケス並みとでもいいましょうか、横向きに寝てるんじゃないかというレベル。

それに対してアメリカ大陸でのアイスレーシングでは、"外から六角ボルトをねじ込んだかのような" 下のスタイルが主流で、トゲトゲ式の使用はレースレギュレーションでも明確に禁止されています。

トゲ状突起よりは断然マイルドな印象ですが、ボルト頭の六辺は不用意に触ると手がズタズタに切れるほど鋭利で、中央の一文字をどちら向きに置くか、スパイクそのものの方向に依ってトラクション・バランスを調整可能です。厳密にいうとアメリカ仕様とカナダ仕様はタイヤ表面から頭を出すヘッド部分の長さが2倍程度違い、丈の低いUS仕様はよりダートに近い "滑りながら食いつく" フィーリングを得ることができます。

2017 Ice Track Racing - American Flat Track Style

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天然自然にフラットな路面を提供してくれる、硬い氷の表面を力強く捉えるための競技用スパイクタイヤ。レースレギュレーションではお互いの安全のため、上の動画にあるような簡易的な "ディープフェンダー" を取り付けることがマナーでありルールとして明文化されています・・・が?

スパイクあえて履かない?"ラバータイヤクラス"なる名称だけ普通な極北

コラム冒頭写真のアイスレース風景では、どのマシンもこのちょっと変わったウィンターカテゴリー特有の "大型前後フェンダー" を取り付けていません。というのも実は彼ら、スパイクタイヤを履かずに競う、"ラバータイヤクラス" のライダーたちなのです。凍った路面に対応してのスパイク→自らその方策を断つスパイク禁止のゴムタイヤクラス。逆の逆は正?ある種いっちゃってる極北です。

かの地で冬となれば毎シーズン、ラバータイヤクラスに情熱を燃やす第一人者の製作するお手製タイヤパターンです。タイヤトレッドに溝を追加するための道具 "ヒートアイロン = タイヤグルーバー" を縦横に駆使、ブロックを大きく動かす柔軟性を持たせ、接地面は薬品かパワーツールによるものでしょうか、ガサガサに荒らしてあります。

なおこのアイスレースに関してだと、専用レーシングスパイクメイカーやベースとなるタイヤのメイカーはありますが、完成品の販売自体なされていません。それぞれ参加者自前で、あるいはその筋の名人にお願いしてDIYで製作し調達するのが当たり前という、超コンパクトなマーケットです。

Flint Motorcycle Club Rubber Tire Final - Joe Barnes Win

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取りつく島もないほどツルッツルに凍る氷上トラックを、スパイクなしのゴムタイヤで走って無事で済むのか?それはスポーツになるのか?と疑念をもちますが、動画を見ると案外フツーにレースになっていますね!むしろ繊細なコントロールも必須で技術的には高度なのかも?お、奥深いな・・・。

ヒヤリとしたところでまた来週!
金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!