オーバルトラックを可能な限りのハイスピードで周回して速さを競う、シンプルな競技フォーマットが身上のダートトラックレーシング。今日は今から半世紀前の最先端の姿を忠実に再現したビンテージスタイルの1台と、およそ見慣れたそれっぽい現代的な1台、それぞれの時代が生んだ "スタンダード" な単気筒レーシングマシンを比較する、ちょっと興味深い試みをご紹介しましょう!

1960年代のソニックウェルド x 2000年代のC&Jの2台を比べてみると?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。今回比較の俎板に上ってもらうのはこちら2台の "フレーマー" 。1968年のソニックウェルドフレーム・ヤマハDT1 (空冷2ストローク250cc・白) と、2008年のC&Jフレーム・スズキRM-Z450 (水冷4ストローク450cc・黄) です。

エンジンはそれぞれの時代により、競技の特性に合わせたチューニングを施すことを前提に、現行モデルとして有利に入手可能なものを選択し、アフターマーケット製 "競技専用シャシー" に搭載するトップノッチのレーシングマシンを、ダートトラックの世界では "フレーマー" と呼んでいます。

ケニー・ワトキンスとレイ・ヘンズリーが1960年代に生み出したソニックウェルドフレームは、メイカー製市販モーターサイクル以上に優れたハンドリングと、より軽量な素材・簡易な構成を狙った、(少なくともアメリカンダートトラックレースシーンで初の) "量産型汎用レーシングフレーム"です。

1969年か1970年? だったはずのAMAのルールブック改訂で、"アフターマーケット製スイングアーム" と "リアブレーキシステム" の使用が許可される以前に一般的だった、ハードテイル (いわゆるリジッドフレーム) スタイル + ブレーキレス、という今となっては古典的な仕様が大いに目を惹きます。

ソニックウェルド製フレームの誕生から時を経ること40年、2008年のスズキRM-Zエンジンを搭載したこちらの "C&Jフレーマー" は、全米プロダートトラック選手権・単気筒450ccカテゴリーに "アフターマーケット製フレーム" での出場が可能だった最後のシーズン、スズキファクトリーチームのジェイク・ジョンソンが使用した実車です。そのシャシー構成は、先達のハードテールからリアサスペンション2本の時期を経て、より現代的なカンチレバー (片持式) モノショックへと変化しています。

翌2009シーズンからの同カテゴリーは、"ゼロからの車両製作なら" フレーマーより安価に仕立てることができ、"メイカー品により近いルックスで" ブランド・アピール力にも優れた・・・と当時は信じられていた・・・モトクロスレーサー純正フレームのマシン "DTX" 主軸へと大きく姿を変えていく事になります。が、それはまた別のお話。今日の本題、新旧フレーマーの対比に戻りましょう。

変わるものと変わらないもの?数字で見るフレーマー40年の進化・・・?

ソニックウェルド(1968)C&Jモノショック(2008)※参考 - ホンダFTR250(1986)
ホイールベース1372mm (54")1372mm (54")1385mm
フロントサス長 ※1457mm464mm不明
キャスター角24°24°24.3°
左右フォーク幅180mm211mm184mm?
フォークオフセット65mm65mm67mm?
フォークインナー径35mm46mm37mm
シート高さ762mm (30")800mm (31.5")780mm
スイングアーム垂れ角なし8〜10°不明
前輪リムサイズ19 x 2.1519 x 2.5019 x 2.15
後輪リムサイズ19 x 2.1519 x 3.0018 x 2.50
前輪タイヤサイズ2.70 x 7.0 x 19"2.70 x 7.0 x 19"100/90-19
後輪タイヤサイズ2.70 x 7.0 x 19"2.75 x 7.5 x 19"120/90-18
※1 - ロワークランプ最下部〜前輪アクスル中心間の距離

車体各所の寸法など、今回の比較一覧表です。参考として我が国の量産市販ダートトラックマシン代表としてホンダFTR250 (1986) のデータも合わせて載せましたが・・・

40年の時を跨いだソニックウェルドとC&Jフレーマー、その骨格はだいたいほぼ、というか概ね? 限りなく? 同じ方向性で整えられていることがお分かりいただけるかと思います。なーんだ。ホイールリムやタイヤの幅は時代とともに太くなっていくのが定石ですが、トラックの大きさや性格によってライダーの好みも現れるところですし、フォークオフセット量やキャスター角もこれまたセットアップの範疇として、本日のトップ画像のように可変式となっているマシンだって少なくありません。

長い歴史のなかで数多の人々がモノ作りに拘っていけば、中には "車輪の再発明" 的な貪欲なチャレンジもおそらくあったことでしょうが、それらを超越して普遍的な形態とか考え方がこのように残っていること・・・単純明快な単なるアクションスポーツを?"文化" の域にまで高めてしまった本場の底力の秘密は、このあたりにもあるような気がしてなりません。

ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!