近頃は久々の量産市販車の4気筒250ccモデル、カワサキZX-25Rが話題になっていますが、そもそも一番最初にメジャーメーカーから量産市販車の4気筒250ccとして販売されたのは、どのモデルかみなさまはご存知でしょうか? そのほか4気筒250ccのよもやま話を交えて、ご紹介いたします。

レースの世界では、なんと1940年代には完成していました!

そもそもエンジンの多気筒化のメリットは、高回転・高出力化など動力性能を高めやすいことにあります。そんなワケで4気筒250ccというフォーマットは、まず高出力が大事なテーマのひとつであるロードレース用エンジンからトライされています。

4ストロークの4気筒250ccのロードレーサー・・・といえば、我々日本人的には1959年のホンダRC160から始まる、ホンダのRCレーサーがイメージされるかもしれませんね?

英国のナショナルモーターミュージアム所蔵の1961年型ホンダRC162(空冷4ストローク4気筒250cc)。初めてホンダに世界ロードレースGP(現MotoGP)の250ccクラスのタイトルをもたらした名機です。

nationalmotormuseum.org.uk

しかし、ホンダが活躍した1960年代以前、1940年代にはイタリアのベネリが、水冷4ストローク4気筒250cc+過給器という、かなり凝ったメカニズムのレーサーを完成させていました。なおベネリは、ホンダ同様1960年代に空冷4ストローク4気筒250ccマシンをGPなどに投入しており、1969年にはケル・キャラザースがGPタイトルの獲得に成功しています。

先日お亡くなりになった、ジャンカルロ・モルビデリのコレクションのひとつだった、1942年型ベネリ4気筒250cc(過給器付き)。なお第二次世界大戦後のロードレース界は、過給機がレギュレーションで禁止されてしまいました。

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1969年、世界ロードレースGP250ccクラス王者に輝いたK.キャラザースとベネリ。

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量産公道用4気筒250ccは、1970年代に登場しました!

1960年代後半からは、急速に性能と信頼性を高めた2ストロークエンジンがロードレース界の潮流となり、そして世界GPのレギュレーションが250ccクラスでは2気筒まで・・・と気筒数を制限したこともあって、4気筒250ccはしばらくロードレースの世界から影を潜めることになりました。

そして1969年のホンダCB750FOURの誕生以降、1970年代はホンダ、カワサキ、そしてスズキが作る4気筒モデルが世界的に人気を集めることになりました。世の中には、スズキが1983年にデビューさせたGS250FWが初の量産公道用4気筒250cc・・・とご記憶している方もいるようですが、それよりだいぶ前・・・1977年にベネリ/モトグッツィの"254"というモデルが発売されていました。

アメリカのバーバーミュージアムに展示されるベネリ254。こちらは1981年型になります。

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こちらはモトグッツィ254。基本的には"バッジ・エンジニアリング"であり、231ccの空冷4ストローク4気筒OHCエンジンや、4連のデロルトPHBG18Bなどのコンポーネントは共用化されています。

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ベネリ/モトグッツィ254は、1975年のミラノショーでデビュー。ベネリ版はスポーティ、モトグッツィ版はツアラーというポジションで差別化していました。このモデルのアイデアは、当時ベネリとモトグッツィの両ブランドを持っていた、アレハンドロ・デ・トマソの考案と言われています。

当時フランス、英国、スペインなどは、250ccまでの排気量のモデルは税金や保険の面で優遇されていました。これらのマーケット向けのモデルとして、4気筒という商品力を高さをアピールしようと企画されたのがベネリ/モトグッツィ254でした。なお最高出力は27.8 hp/10,500rpmで、変速機は5段。最高速度は150km/hをというのが公称スペックです。

幻? のホンダCB250FOUR?

しかし残念ながら、ベネリ/モトグッツィの254は、デ・トマソが期待するほどの商業的成功をおさめられませんでした。

254は250ccクラスのモデルとしてはライバル車よりもかなり高額だったのが販売不振の大きな一因ですが、そのほかイタリア国内では初心者が350ccまで乗れるという制度的事情もあり、モトモリーニ3-1/2、モトグッツィV35、そして高性能で安価な日本製350ccモデルを、もっぱらイタリア国内の若いライダーたちが支持した・・・というのも254失敗の背景にはあります。

Moto Guzzi 254

youtu.be

254の生産は1981年には終了しますが、その後在庫処理のため1984年までカタログには掲載され続けました。そして先述のスズキGS250FWの誕生を皮切りに、1980〜1990年代に日本のメーカーはこぞって水冷4気筒250ccの量産公道車を製造販売するようになりました・・・。

1983年3月に国内発売されたスズキGS250FW。世界初の量産公道用水冷4ストローク4気筒250ccモデルであり、36ps/11,000rpmというスペックでした。

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歴史にもし・・・はありませんが、もしホンダが1970年代初頭にCB250FOURと名付けられるであろうモデルを市販していたら、初の量産公道用4気筒250ccという称号はそのモデルに与えられていたでしょう。

実際、ホンダは当時CB750FOUR、CB500FOURなど4気筒ラインアップの1台として、空冷4ストローク4気筒OHCエンジンを搭載する250ccモデルの開発はしていました。しかし諸問題により、満足できる商品化は難しい・・・ということでお蔵入りになったそうです。

その代わり・・・として、CB750FOUR、CB500FOURに続くホンダの量産公道用4気筒第3弾、CB350FOURが1972年に発売されることになったワケですね。

347㏄の排気量から、34ps/9,500rpmの最高出力を発生したホンダCB350FOUR。現在プレミア価格がつく人気モデル・・・CB400FOURの母体となったモデルですが、CB350FOURはあまり人気を獲得することができず、短命に終わりました。

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2020年に発売と言われているカワサキZX-25Rは果たして、1980〜1990年代の日本製水冷4気筒250ccモデルのように人気を得ることができるのでしょうか? 当時は初心者や女性ライダーにも扱いやすいキャラクターと、リーズナブルな価格などが評価されての4気筒250cc人気だったと記憶していますが・・・やっぱりZX-25Rの価格設定がどうなるのかが気になりますね。

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ともあれ、国内で販売されるモデルのバリエーションが増える・・・選択肢が増えることは歓迎されることには違いないでしょう。ZX-25Rの後に続く4気筒250ccモデルがこれから登場するのかも含めて、楽しみに待ちたいです。