2018年3月スタートで毎週金曜更新を続けてきた当コラム、読者の皆さまに愛されて本日100回目を迎えました。20代はライダーとしてダートトラック競技に明け暮れ、30代でレース・イベント主催を始めた筆者ハヤシ、昨年2児の父となりまた40の大台に乗って、これからの10年とか次の世代に目を向けたとき、50歳を迎えるまでにプライベートなトラック・・・間借りの土地とかバックヤードとかじゃなく、時にはレースもできる規模で自前の・・・を"所有"したいな、と考え始めましたよ。

あのバレンチノさんですら実現までに15年かかったビッグプロジェクト?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。古来より "Once a racer, always a racer. 〜一度始めたらいつまでもレーサー" などと言われますが、この先も自分が乗り続けることやレースを主催することは当然として、ダートトラッカーとしての次のステップ・目標をどこにどう見定めようか、実はここ何年かじんわり考えあぐねていた私。家族が増えたり近しく若いライダーたちに接する機会がますます多くなる中、これまでの自らの経験を活かした本格的な自前のトラックビルド・・・"オーナーへの道" に挑戦したくなってきた昨今なのです。

ダートトラック系のプライベート施設として、現在世界的に最もよく知られているのは、実は競技の本場アメリカではなく、MotoGPライダーのヴァレンティーノ・ロッシが、生まれ故郷にほど近いイタリア・タヴッリアに造った "モーターランチ" でしょう。トラックは丘陵地帯の地形に沿い、二重に配されたオーバルと、その外に広がるロードレース的レイアウトの高速セクションが特徴です。

彼と父グラシアーノがこのランチ ( = 元の意味は"牛囲い" ) を造り上げるまでには、基本構想と土地の選定に始まって実に15年の歳月を費やしたとのこと。現在は自治体などとも連携し大掛かりな事業化を進める一方、近隣住民との騒音に関する議論やゴシップの種にも悩まされているようですが。

VR46 モーターランチ

そのロッシとヤマハMotoGPチームで同僚だったテキサス人ライダーのコーリン・エドワーズが手がける、一般にも大きく扉を開かれたライディング・エクスペリエンス "テキサス・トルネード・ブートキャンプ" の会場施設は、ヒューストン近郊のコンロー湖近傍に位置しています。次の写真でわかるとおり、施設群は露天のショートトラック・オーバル、TTトラック、そして大屋根に覆われた全天候型アリーナという大きく3つのパートと、 "サルーン" と称するクラブハウスで構成されます。

テキサス・トルネード・ブートキャンプ

ケンタッキー州オーウェンズボロのヘイデン家のプライベート・トラックはイタリアとテキサスの (半ばオフィシャルな) 施設に比べれば、遥かにこじんまりして見えますが・・・それにしても広大です。メインビルディングの傍ら、写真左手に位置するショートトラックと、その長手方向それぞれに拡張されるかたちのTTセクション、写真右上はイボイボMXタイヤの450ccマシンでも走行可能なクッション・TTあるいはフラット・モトクロストラック。プールとテニスコートがご当地らしい。

サンセット・ダウンズ

上の3点の写真はいずれもほぼ同じ縮尺なので、それぞれ施設のスケール感を動画や写真とオーバーラップさせてイメージ遊びをしてみるのも一興です。我が国でこのような規模のトラックを造るのはやや困難かもしれませんが、土地選びから手間をかければいいところが見つかるかも?(実は筆者もう見つけてるかも?) いずれ事を急ぐ気は全然ないので、時間をかけてじっくり取り組みますけど。

トレーニングやファンライドのためにフラットダートを積極的に取り入れ、その拠点を "牛囲い" と称するニュアンスはアメリカならではのものです。カリフォルニアのケニー・ロバーツ・シニアやケン・メーリーのランチがダートトラック業界では古くから有名?かもしれません。残念ながらすでに人手にわたって現存しないようですが、ケニーズランチ全景を空撮した映像もご紹介しましょう。

Drone Footage over the Kenny Roberts Museum and Compound last weekend

youtu.be

どこに・どんな規模で?一から始める個人的計画、面白くなる気配かも。

これまで筆者主宰のレース・イベントの会場として使用してきた各地の "パブリックな" ダートオーバルは、それぞれのオーナーの心意気と、粉骨砕身の努力によって日々維持されてきたもの。我々が各所とこれまで以上に良い形を目指してお付き合いを続けるのはもちろんのことですが、家族と親しい仲間と +α の人たちのため、立地環境から吟味したささやかでプライベートな場所を造りたい、という筆者の願望、時間はかかっても次の10年で本腰を入れて取り組みたいテーマとなりそうです。

Beach Grease Blackmore Ranch IPA Release

youtu.be

昨年御年57歳でAFTシングルスに挑戦したオフロードレーシング界のレジェンド、ジェフ・ワードがトレーニングを重ねた、カリフォルニアの "ブラックモア・ランチ" も近年存在感を増すプライベート・トラックのひとつです。ブランドとのタイアップやグループへのトラック貸し出しはするものの、パブリックに向けてフルオープンな場ではない様子。こちらのトラックオーナー兼トラックキーパー?のジェフ・ブラックモアは、なんとでっかいグレーダー屋の社長様らしいです。いいなぁ。

というわけで筆者40歳で迎える連載100回目という節目、有言実行を企図してペロっと記しておきます。映画だと "おら国に帰ったら農場を買うんだ" と熱く語った青年兵は、だいたいの場合タマをいただいて退場・・・というのがお約束のネタ (フラグ) ですけど。なんとか実現したいものですね。

ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!