学生時代から自動車関連の仕事を始め「オートバイ誌」から始まった評論活動は30年超。現在は「Motor Magazine誌」を中心に自動車の論評を執筆しているモータージャーナリスト石川芳雄氏。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもあり、クルマを趣味の対象としてだけでなく実用ツールとも考え、ファミリーカーとしての使い勝手や乗り心地も評価基準に加えている。そんな石川氏がホンダのSUVのルーツであり、現在に繋がるSUVのルーツと言える1台“ホンダ CR-V”に試乗。今回は1.5Lターボエンジンを搭載するガソリン車、CR-V EX マスターピース。その印象を語ってもらった。

2種類のパワーユニット 余裕ある室内スペース

新しいCR-Vは、先にデビューしたシビックと同じ新世代のプラットホームを採用している。これに伴いリアサスペンションはダブルウイッシュボーンからマルチリンクに刷新された。搭載するパワーユニットは、シビックなどにも使われる1.5Lターボ+CVTと、2Lのガソリンエンジンを主に発電に使う、ホンダがi-MMDと呼ぶシリーズ方式のハイブリッドの2種類を揃えている。

グレード展開は1.5ターボ/ハイブリッドともども、EXとEXマスターピースの2種類が基本。ベースのEXでも安全運転支援のホンダセンシングや、インターナビ+リンクアップフリー+ETC2.0車載器が標準となるなど装備は極めて充実している。

上級仕様のマスターピースはこれに加えて、ハンズフリーアクセスの(足の動きを感知する)パワーテールゲート、電動パノラミックサンルーフ、本革シートと専用インテリア、助手席4ウェイパワーシート、ルーフレールなどが装備される。

ガソリン車にはパドルシフトが採用される。車内のノイズに対して逆位相の音を出力することでノイズを打ち消すアクティブノイズコントロールを全車に標準装備する。

最初に試したのは1.5LターボのEXマスターピースだ。 ハイブリッドは後部にバッテリーを搭載する関係上、2列シートの5人乗り仕様のみとなっているのだけど、1.5Lターボには3列シートの7人乗り仕様も用意されている。今回試したのもこの7人乗り。駆動は4WDではなくFFモデルだった。

モデル毎にサイズアップしたと先に書いたけれど、改めて最新のCR-Vに触れてみると、そんなに大きくは感じない。全長4,605mmは日産エクストレイルより短く、マツダのCX-5よりは長いといったところ。3列シートを用意するSUVとしては最も小さいことになる。全幅は1,855mmとちょっとワイド。全高は1,680mm(2WDモデル、4WDは1,690mm)で、ミッドサイズのSUVとしてむしろ低い部類に入る。

衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制装置、歩行車事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、アダプティブクルーズコントロール、車線維持システム、標識認識機能、オートハイビーム、先行車発進お知らせ機能など先進の安全・運転支援システムが充実している。

しかしこれだけの大きさがあれば、さすがに室内スペースは余裕がある。幅の広いフロアコンソールで仕切られたフロントシートはゆったりした乗車感だし、スライド機構が備わるセカンドシートも後方にセットすれば足元空間をかなり広く取れる。

ただ、サードシートに関しては短距離限定の緊急用という感じ。着座位置が低くて膝を抱え込むような姿勢を強いられるし、セカンドシートを前方にセットしても、足元にそのスライドレールがあるので足の置き場が限定されるのだ。普段は畳んで広い荷室とするのが一般的な使い方だろう。

搭載される1.5Lのターボエンジンは、ステップワゴンやシビックなどにも搭載されているL15Bだが、重量のあるCR-Vが採用するに当たって専用のターボチャージャーが用いられ、最高出力190ps、最大トルク240Nmとパワーもトルクも引き上げられている。

その甲斐あってか普通使いには不足のない動力性能が得られているのだけれど、やはりこの体格に1.5Lだと余裕はあまりなく、ワインディングロードなどに持ち込んで活発に走らせようとすると高回転域を多用することになる。

その際、CVT任せにしていると、回転だけが上がって車速が後から乗って行く感覚が強い。このCVTは、パドル操作でステップ変速が可能なので、これを使うとラバーバンドフィールはかなり低減した。ぜひお試しを。

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