学生時代から自動車関連の仕事を始め「オートバイ誌」から始まった評論活動は30年超。現在は「Motor Magazine誌」を中心に自動車の論評を執筆しているモータージャーナリスト石川芳雄氏。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもあり、クルマを趣味の対象としてだけでなく実用ツールとも考え、ファミリーカーとしての使い勝手や乗り心地も評価基準に加えている。そんな石川氏がホンダのSUVのルーツであり、現在に繋がるSUVのルーツと言える1台“ホンダ CR-V”に試乗。今回は1.5Lターボエンジンを搭載するガソリン車、CR-V EX マスターピース。その印象を語ってもらった。

意外なことにSUVにはかなり奥手だったホンダ

ハイブリッドとガソリン車のボディサイズは同じ。4WD車は全高がFFより10mm高くなる。

今や軽自動車からスーパースポーツまで、極めて幅広い商品ラインナップを揃えるホンダだけれど、意外なことにSUVに関してはかなり奥手で、1990年代半ばまでオリジナルの4WD(四輪駆動)モデルを持っていなかった。

横置きエンジンの FWD(前輪駆動車)を基本としていたホンダ車にとって、その頃の四駆の常識だったラダーフレームの車体構造や、トランスファー付き4WDなどは遠い存在。そこで当時のホンダは、ランドローバーやいすゞからOEM供給を受けてRVブームをこなしていた。

そんな状況に終止符を打つことになったのが、1995年に初代モデルが登場したCR-V。つまりこのクルマこそ、ホンダSUVのルーツと言うべき一台なのだ。

ユニークな挑戦の結果、軽快な走りと燃費性能の高さを実現
世界各国のマーケットへと進出することに

インパネにギアセレクターを配置することでセンターコンソールの使い勝手が増し、大型トレーを採用できた。

初代CR-Vは、当時のシビックの基本骨格をベースに、前輪が滑ったときにだけ後輪にもトルクを伝達するデュアルポンプ式の4WD機構を組み合わせていた。時を前後して登場したトヨタRAV4ともども、乗用車ベースのモノコックボディにシンプルな4WDシステムを搭載するというのは当時かなりユニークな挑戦だったのだけど、結果としてこれが走りの軽快さや、燃費性能の高さを実現することになり、この2台は世界的にも高い人気を獲得する。

そして気がつけば、現在のSUVはそのほとんどがモノコックボディとなった。その意味でCR-Vは現代版SUVのルーツの一台と言えなくもない。

1.5L直4DOHCエンジンを搭載する。最高出力は190ps、最大トルクは240Nmを発生する。

その後のCR-Vは、世界戦略車の素質をさらに高めるために、代を重ねる毎にサイズを大きくしていった。エンジンの排気量も2Lを超えて2.4Lあたりが中心となり、海外では盤石な人気を得ていたものの、国内では売りにくい存在になりつつあった。日本市場では、2013年に登場した弟分に相当するヴェゼルが高い人気を得たこともあって、CR-Vは4世代の半ばの2016年7月に一度国内のラインナップから姿を消す。

その後CR-Vはフルモデルチェンジを受け、5世代目が北米を皮切りに世界各国のマーケットへ順次上陸。そして欧州仕様が発売された後の2018年8月から、2年ぶりの国内再登場となったというわけなのだ。