地下鉄では隠れてしまう都心の景色も、クルマで走ると見えてくる。気になる建物を発見したらクルマを停めてじっくり鑑賞……そんな休日ドライブはいかがでしょう? 今回は建築家の岩間誠治さんをお迎えし、Honda・シャトルで都内のユニークな建築を巡ってきました。

建築家・岩間誠治
1978年千葉県生まれ。建築物の調査・企画・設計やデザイン監修、家具・キッチン、インテリアデザイン業務などを行う。東京・千葉をメインに全国対応の設計事務所・岩間誠治一級建築士事務所代表。

今回紹介する名建築は?
・代官山ヒルサイドテラス
・青山ラ コレッツォーネ
・すみだ北斎美術館の3カ所です!

建築家ならではの「建物の見方」とは?

職業柄、街をドライブしているときも自然と建物に目が行くという岩間さん。都心にある建物は、街並みとの調和にそれぞれの持ち味が出るといいます。

今回の相棒はHonda・シャトル。高級感のある内装で自ずと気分も上がる!

「街に対して開かれている建物か、逆に閉じているか。人の出入りを見せるのか見せないのか。そういう部分には設計当初からのコンセプトが現れるので、建物の重要な要素になります。そんな点に注目して建物を見ると面白いですよ」

建物が群れをなす「代官山ヒルサイドテラス」

最初に訪れたのは、渋谷区にある「代官山ヒルサイドテラス」。建築家の槇文彦が設計し、1967年からおよそ25年の年月をかけて段階的に作られました。

「50年も前に始まったプロジェクトで、僕が最初にこの建物を見たのも高校生の頃なんですが、その頃からまったく色褪せないのが凄い。この建築が面白いのは、いくつもの建物が群れをなして街並みそのものを作っているところですね。街と店舗、住居とがゆるくつながっている。そのつながりをあえて見せているんです」

建物自体はすっきりしていてシンプルな印象です。
「建物というのはシンプルなほど難易度が高いと僕は思います。とくに古い建築では設備やリフォームが後から追加されることも多いので、これだけの年月を経てもすっきりした雰囲気を保っているのは貴重なんですよ」

岩間さんが特に注目するのが、つながりの緻密さ。
「例えばあの天井材と柱のつなぎ目、見えますか? つなぎ目が柱の中心にぴったり合っているんですよね。一般の方はそこまで気付かないとは思いますが、こういう細部が『理由は分からないけどなんとなくすっきりしている、居心地がいい空間』という印象につながっていくんです」

代官山の代名詞ともいえるヒルサイドテラスは、旧山手通りの左右に各棟が建ち並んでいるので、まるで一つの建物の中をドライブしているような気分が味わえます。

代官山ヒルサイドテラスはこちら

都内では珍しい初期の安藤建築「ラ・コレッツィーネ」

続いての建物は、港区・南青山にある「ラ・コレッツィオーネ」。こちらは日本を代表する建築家・安藤忠雄の設計で、1989年に竣工しました。

街並みとなじむように、建物の大部分が地下に埋め込まれているのが特徴。地上からのぞきこむとおどろくほど迫力のある大空間が広がっています。

「青山の安藤建築といえば表参道ヒルズが有名ですが、こうした初期の建物には大胆さがあってより面白いかもしれません。外壁なんか分厚いコンクリートで、あえて釘の跡を残しているんですよ。そういった荒々しさが味になっているんですよね」

中は円柱と立方体の組み合わせで構成されていて、その間をつなぐように通路が設けられています。
「建物の中なのに屋根がない部分があったり、部屋と部屋の間に橋があったり。目の前に部屋が見えるのにどこから入ればいいか分からない、まるで迷路のよう。もっと効率よくギュッと詰め込めばたくさん部屋が作れるところを、遊びの空間として残しているのがとても贅沢です」

重厚感と同時に、開口部が多く人を受け入れるおおらかさも持った「街に開かれている建物」です。

ラ・コレッツィオーネ はこちら