今の時代、かつてモータースポーツ界でおなじみだったタバコ会社のスポンサーは、すっかりサーキットから消え失せてしまった観がありますね・・・。ところでみなさんは、モーターサイクルのロードレースの世界で、一番最初にタバコブランドのカラーリングを採用したのはどのチームか、ご存知でしょうか?

1960年代末から、流行したタバコブランドのスポンサーカラー

フェラーリはタバコを吸わない・・・これはフェラーリ創設者のエンツォ・フェラーリの有名な言葉です。ただエンツォの死後、フェラーリはフィリップモリス社のブランドであるマールボロと、長い間協力関係を築くことになったのは、ちょっと皮肉にも思えますね。

4輪レースで世界で、最初に"タバコを吸った"のは英国のロータスでした。1968年のタスマン・シリーズで、チーム・ロータスはロータス49に、スポンサーとなったインペリアル・タバコのブランド、プレイヤーズ・ゴールド・リーフのカラーリングを与えました。

1969年、ドイツ・ニュルブルクリンクでロータス49をドライブするグラハム・ヒル。赤いゴールドリーフカラーが、印象的です。

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以来モータースポーツの世界では、広告の舞台としてサーキットを利用したいタバコ会社と、開発・運営資金を欲するチームの濃密な関係が、タバコ広告禁止時代まで長年続くことになった・・・のは周知のとおりです。

では、2輪・・・モーターサイクルのロードレースの分野で、最初にタバコ会社がスポンサーについてのは? これもインペリアル・タバコのブランドであるジョン・プレイヤーのプレイヤーズ・ネイビー・カットで、スポンサー資金の提供を受けたのは英国の名門ノートンでした。

1972年型ジョン・プレイヤー・ノートンF750。フィル・リード、ピーター・ウイリアムス、ミック・グラントなどのライダーが起用されました。

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インペリアル・タバコのノートンチームのタッグは1972年からスタートしました。当初はネイビー・カットの「青」だった車体は、のちに「白/赤/青」に変更されることになります。この3色は、プレイヤーズNo.10という製品のパッケージカラーをイメージしたものでした。

1968年にインペリアル・タバコは、タバコ増税に対応した安いタバコのブランドとしてプレイヤーズNo.10を発売したのですが、4輪F1のロータスは高級なプレイヤーズ・ゴールドリーフやジョン・プレイヤー・スペシャルのカラーリングを採用していたのに、2輪のノートンは安タバコ・・・。なんかモーターサイクリストとしては、理解はできますけどちょっと寂しいハナシです・・・。

モノコックフレームを採用した、1973年型ジョン・プレイヤー・ノートンF750を、マン島TTで駆るピーター・ウィリアムス。非力な空冷OHVツイン搭載車ながら強力なパワーを誇る日本車のライバルたちを退け、F750クラスで優勝を飾りました。

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なお1988年から再び、インペリアル・タバコとノートンは手を組み、ロータリー(ヴァンケル)エンジン搭載のRCW588によるレースキャンペーンで、ジョン・プレイヤー・スペシャルカラーを披露しました。この関係も1991年までと短期間でしたが、久々のジョン・プレイヤーカラーのノートンのロードレースでの活躍に、多くのファンが注目をしたものです。

おなじみ? の黒/金のジョン・プレイヤー・スペシャルカラーを身にまとった、ノートンRCW588。

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昔の煙、今いずこ・・・?

インペリアル・タバコとノートンの関係が成立して以降、2輪のレースの世界には様々なタバコブランドがスポンサーとして参入したものです。

思いつくままに記していくと、マールボロ、ゴロワーズ、スコール、ロスマンズ、HB、ウエスト、フォルトナ、キャメル、ラッキーストライク、チェスターフィールド、リズラ・・・日本のブランドも、キャビンやセブンスターなどもありましたね。

1988年、ホンダNSR500を駆るワイン・ガードナー。今でも多くのホンダファンは、この「ロスマンズ」カラーが一番カッコよかった・・・と言ったりしていますよね。

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2005年、ヤマハYZR-M1に乗るバレンティーノ・ロッシ。広告規制でタバコブランドのロゴを表記できないため、このように「GO!!!!!!!!」とブランドを連想させるような文字を入れてみたり、バーコードを入れてみたりと、タバコ会社はあれこれ策を練ったものでした。

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ご存知のとおり、世界保健機関(WHO)がタバコ規制に関するフレームワーク条約(WHO FCTC)を2005年に打ち出したことで、すべてのタバコ広告やプロモーション、そしてスポンサーシップが禁止される流れが加速しました。

もっともその後も、タバコ会社はあの手この手でモータースポーツへのスポンサーシップのアプローチを試みており、まだまだモータースポーツはコマーシャルの場として魅力的であると、タバコ会社側が認識していることがうかがえます。

2019年のドゥカティチームの体制発表会にて。アンドレア・ドヴィツィオーゾとダニロ・ペトルッチのレザースーツ、そしてデスモセディチGP19のフェアリングに記された“Mission Winnow”のロゴは、同チームがマールボロブランドを擁するフィリップモリスから、依然多大な支援を受けていることの証でもあります。

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WHOなどの機関とタバコ会社のモータースポーツ業界における「イタチごっこ」というレースは、もうしばらく続くことになりそうですね? ともあれ、愛煙家のみなさまは「健康のため吸いすぎに注意しましょう」!?