戦後、世界ロードレースGP(現MotoGP)が成立した1949年から10年を経て、1959年からホンダは日本のメーカーとしては初めてGPへ挑戦しました。この連載は、今日に至るまでホンダのマシンに乗って世界タイトル(個人)を獲得した英雄たちを紹介するものです。今回は2015年にMoto3王者になった、ダニー・ケントを紹介します!

バリー・シーン以来のGPソロ部門の英国人チャンピオン!

1993年に英国に生まれたダニー・ケントは、多くのGPライダーたち同様ミニバイクなどの小排気量車で技術を磨き、2008年にレッドブルのMotoGPアカデミー入りをすることになりました。初のGPエントリーは2010年の英国GP125ccクラス(ホンダ)でしたが、残念ながらリタイア。また同年、ケントはランブレッタから125ccクラスに日本GP以降の5レースに参戦しますが、結局この年は1ポイントも獲得できずに終わることになります。

2010年のバレンシアGP125ccクラスで、ランブレッタに乗るD.ケント。

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翌2011年はアプリリアで125ccクラスにフル参戦しますが、未勝利でランキング11位という結果に終わります。2012年からは廃止された125ccに代わる4ストローク250ccのMoto3にKTMで参戦。日本GPでついにGP初優勝! 最終戦バレンシアGPでも勝利し、ランキング4位に躍進しました。

2012年、KTMでMoto3を走ったD.ケントは2勝を記録しました。

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ケントは2013年、テック3に属してMoto2にステップアップしますが年間22位と低迷。2014年は再びMoto3にハスクバーナで参戦しますが、3位表彰台が2度の年間8位で、王者争いからは蚊帳の外でした・・・。

そして2015年、ケントはGPデビュー以来となるホンダユーザーの立場でMoto3に参戦し、第2戦アメリカズGPで久々の優勝を飾ります。続くアルゼンチンGPとスペインGPに勝って3連勝を飾り、チャンピオンシップの流れをリード。その後もカタルニアGP、ドイツGP、そして地元英国GPで3勝を上積みしたケントは見事自身初のタイトルを獲得しました!

2015年カタルニアGPのMoto3クラスで、この年4勝目をマークしたD.ケント(ホンダ)。

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サイドカークラスを除く、1977年のバリー・シーン(スズキ、500cc)以来の英国人GP王者の誕生に、当時英国のGPファンの多くが熱狂したのは言うまでもありません。また小排気量クラスという括りでは、ケントは1969年のデイブ・シモンズ(カワサキ、125cc)以来の王者でもありました。

王者獲得後は、苦難の道を歩むことに・・・

しかし、その後ケントがGPで輝くことはありませんでした。2016年は2度目のMoto2のフル参戦をするものの、年間22位と低迷。2017年はスッターとカレックスでMoto2を、また数戦Moto3をKTMで走るという、不安定な状況で不本意なシーズンを過ごすことに・・・。2018年はスピードアップでMoto2フル参戦ということになりますが、なんとシーズン途中でチームを首になってしまいました(ランキング25位)。

2018年、Moto2クラスをスピードアップで戦ったD.ケントですが、最高12位という成績不振でシーズン途中にかかわらずチームを去ることになりました。

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そしてなんと! 2019年3月に路上での揉め事の末に包丁を持ち出したことで、ケントは執行猶予付きの有罪判決を受けることに・・・。BSB(英国スーパーバイク選手権)に参戦し、レースキャリアの再構築を模索していたケントですが、これで今年はおじゃんな感じですね・・・。まだ若いのですから、英国人王者としての誇りを胸に再起を果たして欲しいと思います!