近代BMWの中興の祖的モデル、/5シリーズの50周年
今の大型アドベンチャーバイクブームの発火点となったGSシリーズや、SBK(スーパーバイク世界選手権)やマン島TTなどのリアルロードレーシングで活躍するS1000RRシリーズなどの人気により、現在世界中にファンを持つBMW製モーターサイクルですが、じつは1960年代にBMWは「もう利益の薄い2輪事業やめようかな・・・」と考えていた時期もあったのです。
そんな時代BMWの中の人たちの、2輪を愛する開発者たちは、2輪事業を存続させるために次世代の主力機を熱心に開発していました。そして1969年に発表されることになったのが、"/2シリーズ"に代わる"/5シリーズ"でした。
もともとBMW製2輪は"信頼性の高いエンジン"に定評がありましたが、大型ロードスポーツの大排気量化という当時のトレンドに対応するため、アイコニックな水平対向2気筒エンジンを刷新。/5シーリーズは従来からあった500、600ccに加え、750ccをラインアップしていました。
そして、当時のハンドリング作りのベンチマークだった"フェザーベッドフレーム"を採用する英国製市販GPレーサー、マンクスノートンを目標に車体を一新。フロントフォークは/2シリーズで用いられたアールズフォークから、ISDT(国際6日間トライアル)参戦などを通し開発されたテレスコピックフォークに変更し、まったく新しい車体を/5シリーズのために用意しました。
当時、新世代のフラットツインとして誕生した/5シリーズのエンジン・・・2バルブ・エアヘッドは、その後基本設計を変えることなく1990年代半ばまで存続する息の長いエンジンとなりました。1976年にはAMAスーパーバイク選手権を制覇し、1980年代にはパリ-ダカールラリーで連勝するなど、2バルブ・エアヘッドを搭載するマシンはモータースポーツ界でも大活躍しました。
ノスタルジックなデザインがクール!
/5シリーズのもうひとつの特徴は、それまでのミュンヘン工場ではなく、新しいベルリン工場で生産されたことでした。当時、東西冷戦下の西ドイツは政治的理由から、ベルリンに工場を作る企業を優遇をする政策を行っていました。それにBMWは呼応し、ベルリンに2輪生産工場を移したのです。
もっとも、東西冷戦の最前線であるベルリンで働きたい・・・と考える西ドイツ人は少なく、ベルリン工場ではトルコ人などの移民工員が活躍することになりました。東西ドイツもすっかり今では昔話ですが、/5シリーズ誕生の背景にはそのような歴史もあったのです。
/5シリーズ誕生とベルリン生産開始から50周年にあたる2019年、記念的モデルとして生まれたのがR nineT /5です。人気のR nineTをベースに、かつての/5シリーズをイメージさせる意匠を与えているのがその特徴です。
スタイルはノスタルジックですが、中身は最新・・・EURO4対応でABSとACS(オートマチック・スタビリティ・コントロール)を標準で装備し、しっかり現代のモーターサイクルとしてのクオリティを確保しております。日本に導入されるのはいつになるのかわかりませんが、その日がくるのが楽しみですね!