バラードスポーツCR-Xとホンダをこよなく愛するカメラマン伊藤嘉啓氏の愛車CR-Xのオドメーターはなんと70万kmを越えている。これまで一体どこへ向かったのか、なぜそこまでCR-Xを愛するのか、そして今後の走行距離は何万kmに到達するのか…この連載を通してCR-Xの魅力とともに徐々に紐解いていく。今回はデルソルの生みの親でありCR-Xの開発元担当者でもあるレジェンドに聞けたお話をご紹介。(文:伊藤嘉啓/デジタル編集:A Little Honda編集部)

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実はCR-Xととても縁が深い“繁サン”

14話で書いたデルソルミーティング。このイベントには、デルソル生みの親ともいうべき、元ホンダの繁浩太郎サンが招かれてた。

繁浩太郎サン

実は繁サン、ボクが乗っているバラードスポーツCR-Xとも非常に縁があったりする。実は、バラードスポーツCR-X初期型のセミリトラクタブルライト周辺は、繁サンの設計だったりするんだな。

繁サン曰く、ホンダに転職してインパネ等の内装関連から外装関連の部署へ異動して、最初に手掛けた機種がCR-Xだったとか。

しかも、外観上で最も特徴的なセミリトラクタブルライト周りの設計を担当。参考になる他社製品も少ないし、しかも新素材を使っていたからとても苦労したらしい。

ヘッドライト周りにあるガーニッシュの設計では、降雪地帯で雪が積もってライトを点けても前が見えなくならないように、雪を落とすためスリットを入れたんだけど、剛性がなくってフニャフニャになっちゃうから裏に補強を入れたんだよ……って裏話を教えてくれた。

ちなみに、この写真のヘッドライトガーニッシュは、ボクが持ってる貴重な予備パーツ。裏側には、しっかりとスチールの補強が追加されてる。

この雪落としは、初代プレリュード、初代ビガー(2代目アコードの兄弟車で角目4灯ライト)、2代目バラードセダン前期型、ワンダーシビックの1300シリーズも同じようなデザインだったりするんだよね。

ボクも雪の中を走ったりしたことがあるけど、残念ながら絶大な効果は感じないかな。それよりも、ボクが以前から不思議に思ってたのは、CR-Xもバラードセダンもリトラクタブル機構を動かすモーター以外に互換性がないってこと。それを繁サンに尋ねたら、設計した担当者が違うからだよ、だって。

一般的に考えると、内部機構は部品を共用してコストを抑えるってのが当たり前だと思うんだけど、担当者が違えばその都度新たに設計するんだとか。そこがホンダらしいトコロだ。繁サンによればドアミラーも同様で、この時代はシビックもCR-Xも、アコード、プレリュード等、ほぼ同じようにみえるデザインなんだけど、車種事に微妙に違ってて互換性がまったくない。

マニアックな目線でいえば、サプライヤーも車種毎に違うし……。こういった事情からか、この時代のホンダ車は残存率が低いように思う。実際、維持してくのは結構大変なんだよね。

繁サン担当、マニアも唸る設計のヒミツ

繁サンが担当されたのは、ライト周りやドアミラーだけじゃなく、リアワイパー、左右テールライト間にあるCR-Xのロゴが入ったリアガーニッシュ、さらにはウォッシャータンクなどがある。

リアワイパーとしては、国産車初のダブルリンク式を採用して払拭面積が広くなる優れモノ。スッキリしたリアスタイルを優先して外してるオーナーも少なくないけど、ボクは結構重宝してるんだ、コレ。

あとつまらないトリビアだけど、このリアワイパー、1.5iとSi、モデル末期に設定された1.3Lの特別限定車(AT)、イギリス仕様のSiだけで、アメリカやドイツといった左ハンドル仕様には設定がない。

そして、ウォッシャータンクだ。これは、エンジンルームの車体前方にある隙間に上手く収められてるけど、当時は3Dで簡単に設計できたわけじゃないから、複雑な立体を造るのに苦労したんだとか。

写真だと単純に見えるかもしれないけど、車体の隙間に収めるために微妙な逃げがいっぱいある。特筆すべきなのは、上部にある10mmボルトを外せば、簡単に脱着できるってこと。自分でクルマいじりをするには、とっても有り難い造りになってる。

このウォッシャータンクは、CR-Xとバラード、ワンダーシビック、シャトルとも共通部品なのが珍しい。ただ、パワーステアリングが付いてるクルマは、違う部品になっちゃうんだけどね。

リアスタイルを引き締めるガーニッシュは見てのとおり単純なもの。これは、短時間で図面が書けたんだってさ。 繁サン、色々と教えて頂き有り難うございました。

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