来年のコトを話せば鬼が笑う・・・などとも言いますが、いま2020年に向けて検討されているAFT=
アメリカンフラットトラックのレースストラクチャーデザインは正直 "ちょっと笑えないもの" になるかもしれません。先週開催された第9戦オハイオ州ライマ1/2マイルにて、来期以降のAFTの目論みがうっすら見え始めましたが、そのあまりの内容に湯気立ててご立腹・あるいはそんなんなら辞めるわとキッパリ明言する古くからのレース関係者多数。そのマスタープランはいったいどのような代物なのか、本日は様々な方向から掘り下げてみたいと思います!

AFTの狙いはMotoGP・F1・NASCAR的な"プレミアムモータースポーツ化"?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。長年続いた "AMAプロフラットトラック = グランドナショナルチャンピオンシップ (GNC) " から、よりストレートな "アメリカンフラットトラック" という名称に変わって3年目の全米最高峰シリーズ。先週末とある関係筋がリークした来期のプランは、ヨーロピアン・スタイルの各カテゴリーや、アメリカで最も成功しているモータースポーツNASCARのビジネスモデルににじり寄る大転換・・・アメリカの誇る初源的スタイルのこのカテゴリーに過去例のない大々的な改変を加えるものでした。

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トップカテゴリーは固定メンバー16人のスター選手+チームによって争われる"スーパーツインズクラス"に改称・・・参加登録料だけで年間45,000ドル??

"テレビの前や現場に足を運ぶレースファンが、毎戦同じスター選手を支持できるよう、トップカテゴリーは予め登録された16人/チームによって通年のシリーズタイトルを争う方向とする"

伝統的な決勝グリッド18台という枠に対し、ここ数年は20から30名程度のエントリー台数で推移していたプロツインズクラスですが、来期は16名という限定されたライダーのみが登録され、チャンピオンシップを争うスタイルが計画されているようです。固定メンバーの全戦参加を基本とするならば、スポット参戦でダークホースが大活躍する面白さは排除されることになるのでしょう。怪我などでの欠場や出場停止のライダーが出た場合は出走台数を減らすことになるのでしょうか?

主催側の意図する16人とは、おそらく各メイカーのファクトリーチーム・すでに実績ある有力プライベートチーム "のみ" を指すことでしょう。このカテゴリーに参加するためのレジストレーションフィーは (いまだ噂の域を出ませんが) なんと1人/チームあたり想定45,000ドルだとか。これはブルーカラーを自認する人々が大半のダートトラックレースシーンにおいては現実的な金額とは到底言えません。資金力の乏しいプライベーターはそもそも門前払いされるであろうことが明白です。

近年アメリカでも人気の高まってきた、MotoGPなどの人気カテゴリーから参照したビジョンなのでしょうが、グラスルーツとして・ローカルレーシングヒーローが戦う場の頂点とも位置づけられてきた全米ダートトラック選手権に相応しいフォーマットかは、正直大いに疑問が残るところです。

2011年9月のスプリングフィールドマイル2。1989年にプロデビューした43歳の大ベテラン、ウィリー・マッコイが全米選手権でのキャリア初優勝を遂げた感動的なシーン。すでに第一線から退いてスポット参戦する選手の魅せたこのような美しい場面は"16人のスター"による新シーズンでは目にする機会が失われる・・・のかな?

"その他大勢"の2気筒コンペティターは下位サポートクラス"プロダクションツインズ"へご参加ください。※ただしインディアンFTR750は出走できません??

さて、選ばれたスターであるところの16人のスーパーツインズ・ライダーから漏れたその他のコンペティターは、今シーズンAFTシリーズの何戦かで試験的に開催されている "プロダクションツインズ" クラスへと活躍の場を移すことになるようです。

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市販マシン改での2気筒戦という登竜門的コンセプトのこのクラスでは、ハーレーダビッドソンXR750・ホンダRS750D・そしてインディアンFTR750といった "レース専用エンジン車" の参加を基本的に認めない線引きがレースレギュレーションから濃厚です。

で、現在ハーレーが主力マシンとして位置づける水冷の "XG750R" は市販車ベースという解釈が成り立つため、デビュー以来向かうところ敵なしの快進撃を続けたインディアンFTR750のみを排除しうる・・・数年前からその可能性が囁かれていた "FTR750外し" ・・・レースの世界ではさもありなんですが少々露骨です。1台50,000ドルのFTRを2台揃えた多くのチームとライダーはこの先どうすれば良いのでしょう?

ダートトラック伝統のレースフォーマット・決勝25周は"テレビ向きじゃない"という理由から○○分+2周というMX的ルールに改めます??

ダートトラックの、特に1,600m = 1マイル競馬場を25周するマイルレースの醍醐味のひとつは、レースプランとして50のターン + 50のストレートをそれぞれどのように使い、最終ラップのフィニッシュラインをどれほど速く駆け抜けることができるか組み立てる、という非常に緻密な戦略的要素にあると言えます。今回AFTは一見単調な、しかし伝統的な25周フォーマット (古くは倍の50周や100周だった時代もあります) を捨て、一般的にスーパークロスなどで運用される○○分 + 2周という、一見よりドラマティックな形式に変更しようとしています。

レースディスタンス全体でのライダー自身のデザイン・・・序盤や中盤でのポジション取りやタイヤトレッドの温存・そしてラストスパート数周での攻防に至るコントロールなどのすべて・・・は、これまでの伝統的なフォーマットに比較して奥行きを失うことでしょう。

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ここ数年でもLIVEストリーミングの放映タイミングを重視して "ほどほどのトラックコンディション" でライダーを走らせ、因果関係は明らかでなくとも大きめのレーシングアクシデントを幾度か経験してきたAFTです。最も重視されるべきはライダーの安全、そしてレース現場での催事としてのクオリティ、そして二の次として放映関連の演出が課題とされるべきですが・・・。

関係者の多くが疑問を持つ一大変革案・・・果たして来期AFTの行方は?

他にもサポートクラスである450ccのAFTシングルスクラスへの、各地方戦ライダーからの選出方法など、大いに不透明な点・・・それはつまり伝統的なこのスポーツのあり方との乖離を意味します・・・が多くのレース関係者から指摘されています。ここでは今のところ紹介を控えたいレベルの過激な意見などもチラホラと。

大きな変化が必ずしも悪とはなりませんが、主催するAFTとライダーを含めた現場のレース関係者たちが最終的にどのような結論を見出すのか?長年遠く日本から本場のレースシーンを眺め続けている我々にも、たいへん興味深いトピックです。こちらにはこちらでいくつもの頭の痛くなりそうな課題がありますけど・・・それはいずれまた別の機会に。

ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!