長年勤めてきたテレビ局を辞め、自由な生活を求めてほぼ廃墟化したカフェを借りて住み着いた松ちゃん。詐欺にひっかかってバイクを盗られかけている若者をほっとけなくて・・・。
Mr.Bike BGで大好評連載中の東本昌平先生作『雨はこれから』第42話「盆の犬、追わず」より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集 by 楠雅彦@ロレンス編集部

愛車をカスタムするつもりが、サギに引っかかったゼファー乗り

オレ、ソウルスピード。ゼファー1100をこよなく愛するイケてる男、のはずが、うっかりサギにひっかかっちまって、愛車を盗られちまいそうなんだ・・。

カスタムショーの雑誌でよぉ、えらくかっこいいゼファーを見つけて、ちょいと問い合わせしてみたら、フルカスタム400万円のところを20万でそこそこいけるとかいうからよぉ、うっかりバイクを預けて20万も払っちまったのさ。

そしたら3ヶ月前から連絡取れなくなっちまって、いつ行っても閉まってる。近くにゃ警察もうろうろしているしよ、もうどうしようもない状況に陥っちまったってわけ泣。

もうどうしようもなくて、松ちゃんにとりあえず泣きついたオレ。マジ卍情けねえ・・・。

いつ行ってもシャッター閉まったままの工場

オレのゼファー、どこいっちまったわけ?

なんでそんなトコ出すのヨ、と松ちゃんは言うけど、いい感じのカスタム作ってたんだ、雑誌に載ってたんだよ・・・。

ほっとこうとも思ったけれど、捨てておけない人情家の松ちゃん

この手のハナシは昔からあることだ。
先に金を要求されたら疑うものだが、こいつはどこまで世間知らずなのか。
私は話を聞きながら、あまりの馬鹿さ加減に呆れ返っていた。

世間知らずにはちょうどいい。勉強のためにはほっておこう、とも考えたが、バイクを盗られるのは同じバイク乗りとしてはさすがに忍びない。

我ながらお人好しとも思ったが、私は彼を乗せてその夜逃げしたらしい工場へと向かうことにした。
明々と電気のついた工場には、債権の取立て業者らしい連中が数人集まっていた・・・。

はたしてソウルスピードは愛車を取り返すことができるだろうか。

あなたなら、こんな単純なサギにひっかかる若者を助ける?見捨てる?