伊藤嘉啓氏
バラードスポーツCR-Xとホンダをこよなく愛するカメラマン。ホンダだけではなく旧車にも滅法詳しい。そのため、ホンダ社内からも一目置かれる存在である。当然、写真も腕も一流だ。
そんな彼の愛車CR-Xのオドメーターはなんと68万5000kmを越え。これまで一体どこへ向かったのか、なぜそこまでCR-Xを愛するのか、そして今後の走行距離は何万kmに到達するのか…この連載【地球まで、もう少し。】を通してCR-Xの魅力とともに徐々に紐解いていく。
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生産終了から30年以上が経って、ホンダからはオーバーホールに必要な純正パーツはほとんど供給されないって状況だったから、オリジナルのエンジンをベースにオーバーホールするのは諦めることにした。
結局、とある取材をきっかけに知り合った、ホンダ好きのベテランメカニックがひとりで切り盛りする修理工場にストックしてあったZCエンジンの一機を譲ってもらい、それを載せることになった。
そのエンジンはスペシャルなパーツを使ってオーバーホールされ、数千キロ走らせた後に車体から降ろされて、十数年以上も工場の片隅で保管されてたモノである。長年、眠ってたエンジンをそのままポンと載せるワケにも行かないから、予算の都合も考えてタイミングベルトやテンショナー、ウォーターポンプ、各オイルシール、ヘッドガスケット以外のパッキン類を総て交換、オイルポンプのクリアランスを再確認するだけという、最低限の整備で済ませすることにした。
組み上げはプロの手に委ねるけど、再使用するボルトやナット類の洗浄はボクが担当して、もうチョットでンジンの整備が完了するっていう直前、55万km(!)走ってくれたオリジナルエンジンから異音が......。
修理工場で新エンジンの整備を手伝いに行ってた帰り道、流れの速いバイパスに合流しようとアクセルペダルを踏み込むとエンジンノイズが格段に大きくなった。その昔、取材車両がメタルを焼き付かせたときの音に似てたので『あっ、メタル逝っちゃったか』と思って、直ぐに工場に引き返し代車を借りて家に帰ることに。
その後、予定を早めて新エンジンの整備を終わらせ、すぐに載せかえた。降ろしたエンジンを分解して異音の原因を探ると、2番ピストンのコンロッドメタルが正規の半分位の厚さになってて表面にもキズが入ってた。どうやら、これが異音の原因だったようだ。
だけど、それ以外の致命的なダメージは見当たらず、とても丈夫なエンジンだなと思った。この分解作業に立ち会ってくれた、ZCエンジンの開発を担当した元ホンダエンジニア氏からも、55万km以上という走行距離を考えれば、良好な状態という感想を頂いた。
そんなワケで、残念ながら今のCR-Xにはオリジナルのエンジンは載っていないんだな。平成も終わり、今現在のオドメーターは、後3000km程で“700000km”を迎えようとしている。
地球と月の往復の距離は、約760000km。ということはボクのCR-Xは後60000km程で、その距離に到達することになる。
このCR-Xとの話はいったんここで区切りをつけるが、この先、何が起こるかわからないけど、可能な限り長くCR-Xと一緒に走り続けて行きたいと思う。無事、地球と月の往復距離を走破できたなら、またここで記念の報告をしたい。