長年勤めてきたテレビ局を辞め、自由な生活を求めてほぼ廃墟化したカフェを借りて住み着いた松ちゃん。バイク盗難に遭ったヒトシに自分のSRを貸している松ちゃんだが、今日は虫の居所が悪いようで・・・。
Mr.Bike BGで大好評連載中の東本昌平先生作『雨はこれから』第40話「そばねり芭蕉ネギ」より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集 by 楠雅彦@ロレンス編集部

ぶっきらぼうすぎるオヤジにちょっと腹を立てたヒトシだった

オレ、ヒトシ。
バイクを盗まれてしょげてたオレは大学(ガッコウ)さえいく気がしなくて、松ちゃんのドヤに入り浸ってはため息ばかりついてた。そんなオレを見てられなくなったんじゃないかな、松ちゃんが自分のSRを貸してくれた。それ以来、オレはいい感じに弄ってあるSRをアシにしてる。

松ちゃんはいつも無愛想で何考えてるかわかんねえし、無口でぶっきらぼうだから、まあ付き合いやすいってほうじゃない。だけど本当は人のことをほっとけない、人情家なんだとみんな気づいてる。だからなんだかんだと松ちゃんのドヤに顔を出すんだ。

だけど、今日の松ちゃんはいつもにもまして機嫌が悪かった。
家の前の空き地を耕してる松ちゃんを見て、またなんか始めたんかいなと思ったオレは「何してんのよ」と声をかけたんだけど、松ちゃんはちらっとこっちを見ただけで何も言わねえ。
「畑ェ?」ぶっきらぼうな態度には慣れてるから、オレは構わず言葉を続けた。「つくってんの!?」

ところがそれでも松ちゃんは無視して口を開こうとしない。黙々と作業を続けて、オレなんかそこにいないみたいな態度をとるじゃないか。
さすがにちょっとオレもムッとするよ。「なんだよ、ソレ?なんかあったの?」とオレは言った。
「少しは話せよ、タイド悪いゾ!」

すると松ちゃんはこっちを向いて不機嫌な顔のままこう言ったんだ。
「オマエに説明したらなんとかなるのか?」

いや、なんともならないかもしれないけどよぉ、そんな言い方ってある??
オレ、なんか悪いことした?そんなにオレ嫌われてるの??

はるか年上だからと言ってさ、そういう態度をとる必要がどこにあるの?

それともやっぱりオレがなにか無神経だったってこと??