クローズドサーキット = レーストラックでのスポーツライディングの合間、マシンを降りている時間を、上がった息を整えるための単なる休憩? お仲間とのご歓談タイム? としてだけ充てるのは、少しばかり勿体ない過ごし方ですよ。マシンの状態を確認し、その日のコンディションに合わせた様々な調整を加え、次の走行に向けより良いセットアップを探りたいところです。パドックでの"アイドリングタイム"をより一層有意義に過ごすため、時短・効率化にも必須のアイテム、そのひとつが今日ご紹介するレーシングスタンド。というわけで本場にならったダートトラック・スタイルのそれらにスポットライトを当ててみましょう!

いつでも直ちに念入りに、車体を整えたい。"レーシング"スタンドは必須。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。スポーツ的ライディングの合間、水分補給や手を洗うための人間側からの理由での小休止なら、マシンの留め置き方法などどうでも構いませんが、次の走行に向けチェックや調整を加える必要があるのなら、車体を直立させ、しかも前後輪いずれかをわずかに地面から浮かすのが、より正しい状態です。

オンロード / オフロードを問わず、クローズドトラックを走行するためのスプリント = 短距離型スピード種目の専用車両には、車体を左側に傾けて停車させる "サイドスタンド" は最初から装備されないのが常です。市販車をスポーツに使う場合でも、転倒時のトラブルなどを減らすため、場のルールで取り外しを求められる場合は多いことでしょう。

そしてなにより、左サイドへの極めて深いバンク角が要求されるダートトラックでは、サイドスタンドの存在そのものが、あなたのライディングの上達を妨げているかもしれません。スタンドの付け根や一部が走行中に強く接地したならば、次の瞬間にはリアタイヤが浮き、トラクション = スリップ状態を細やかに感じながら制御し、安定したコーナーリング動作を続けることは難しくなります。

モトクロスレーサーが採用する、ワンタッチで抜き差し可能ないわゆる "三角スタンド" はとても簡便で、車両を停める、という最低限の機能だけはしっかりと満たしますが、前後のサスペンションや車輪にまつわる調整、セッティング変更を企てるのなら (←超ビギナーを除けば全てのライダーにそうあってほしいものです) 正立・ジャッキアップができる、別の方法を検討しなければなりません。

前後両輪ジャッキアップ可能。質実剛健な定番"腹下センター型"がこちら。

筆者主宰のレースシリーズ・FEVHOTSオリジナルアイテムとして国内製作した定番スタイルのレーシングスタンド。通常品は価格を抑えるため鉄製無塗装だが、こちらはニッケルプレーテッドフィニッシュの特注仕上げ。

使用する車種 (フレーム) ごとに横幅と高さが異なるため、それぞれがサイズ調整可能な可変ジョイント仕様。

モトクロス場でよく目にする所謂 "ビールケースタイプ" の箱形スタンドは、車体腹下レイアウトのエキゾーストパイプとダウンマフラーを採用するマシンの少なくない我々ダートトラッカーにはあまり向いていません。このため上の写真のような、テコの原理を用いた形状でエンジン下側の左右フレームを受けとめ、エキゾーストパイプが中央を通り抜ける "H型" のセンタースタンドが、古くからこのカテゴリーでは定番のスタイルとなっています。

このタイプのスタンドは、車体前後方向の任意のポイントを支点とすることができるため、前後車輪を取り外してのタイヤ交換や、ホイール・ナックオフ (オーバルトラックでは左サイドしか摩耗しないので左右反転すること) 、トラックコンディションに応じた適切なギアリングを選択するためのスプロケット交換や前後サスペンションの調整なども比較的容易に、速やかに行うことが可能です。

モトクロッサーベースのDTX + ダートトラックらしいダウンパイプとの組み合わせにもこのように対応。

後輪整備に特化した"スイングアーム固定・追尾型(?)リアスタンド"。

スイングアーム後端に用意される専用取り付け部に固定するリア用スタンド。黒い球のハンドルを引いて脱着。

前輪と後輪、どちらがより整備にウェイトを置かれるかは、セットアップメニューの数からいってもリア重視なのは間違いありません。リアにしか装備されないブレーキのタッチ調整・頻繁なスプロケット交換・最近多いモノショック (1本サス) を弄るためには、後部のジャッキアップが不可欠です。

車輪付きのこちらの物体は、スイングアーム後端に取り付ける仕組みのリア用レーシングスタンド。車体から外すにはシンプルながら確実なバネ仕掛けの解除が必要なため、ガレージなどでの定置にも便利。このタイプの特徴として、車体に取り付けたまま共に転がして移動することができます。アメリカのレースピットではよく目にしますが、日本ではまだまだ珍しいアイテムです。

よくよく意識しなければ、このスタンドがスイングアームとどう固定されているかに思いは至らない、かも?

"神は細部に宿る"。佇まいも含めて、本場のパドックスタイルを参考に。

いかがでしたか?必要に応じて少しずつ本格的な道具を身の廻りに揃えていくことも、それらしく走れる自分を見つけるための何かの手助けになるかもしれません。といったところで今週はここまで。ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!