1961年スコットランド生まれのジェフリー・ワードは、アメリカン・モータースポーツ界で知らぬ者のいない、ほぼ生きる伝説とも言える偉大なアスリートです。これまでにプロモトクロス、スーパーモト、さらに4輪オープンホイールやスタジアムスーパートラックなど多くのジャンルで活躍してきた彼が、2019年シーズンに挑戦の場として選んだのは、ほとんど世には知られていなかった自身にとってのルーツへの回帰、ダートトラックレーシングでした。全米最高峰AFT: アメリカンフラットトラックのシングルス・450cc単気筒クラスで5つのTT戦とショートトラックに出場することを正式表明した、現在57歳のマルチタレント、ジェフ・ワードについて本日は掘り下げてみましょう!

ワーディ若干5歳・ご幼少の砌のレース原体験はフラットダートオーバル!

4歳で家族とともにアメリカ合衆国へと移住したジェフは、トライアルライダーである父親の影響で、幼少期のかなり早くから本格的にモーターサイクルライディングに親しむことになります。

5歳ですでにキッズカテゴリーのダートトラックレースに参加するようになった彼は、南カリフォルニア一帯で瞬く間にその名を轟かせるように。そして10代に入るとモトクロスへと活動の場を移し、やがて同時代筆頭の有望株として、全米から注目されるユースライダーへと成長していきます。

10代前半の少年が駆る "レッドホンダ = XR75" は、コラム冒頭のとおりメイカーが本人ともども自社広告に使うほど強い印象を与えるものでした。トロイリーデザインズ本社の壁に額装されたこの写真のイメージは、今日でもビンテージモトクロス・フリークには定番スタイルのひとつと言えます。

そうそう、"あの名作ドキュメンタリー映画" に登場する、誰もが知ってるロングウィリー少年は、実はなんと10歳になるかならないかのジェフ・ワード。有名なネタですが、彼のその後の華麗なるレーシングキャリアのあらましは宮﨑健太郎さんのこちらのコラムからご覧下さい。

KTM450を駆り、気心の知れたレーシングパーティと共に"孫世代"へ挑む!

"南カリフォルニアのオーバルトラックでついこの前も走ってきたんだ。ライディングをとても楽しんだ。去年2018シーズンのアメリカン・フラットトラックシリーズはライブストリーミングで全戦見てたんだ・・・ようやく考えがまとまったよ。俺はまだ速い、トライしてみるかって"

ジェフ・ワードの現時点の考えでは、2019シーズンのAFTシリーズ全18戦のうち、5つすべてのTT戦に加え、ひとつかふたつのショートトラックへの参加を計画しています。

南カリフォルニアを本拠地とするワードは、フロリダ州での開幕戦・デイトナTTでは当地在住のナショナルナンバー10 ジョニー・ルイスが用意するKTM450SXをライド。4月のアリゾナ州ワイルドホースTTには、カリフォルニアで仕立てる自身のニューマシンで出場する予定。以降のラウンドへの車両輸送手段などの確保のため、資金面の支援を含め、現在共に戦うサポート / スポンサーを募っているようです。広大なアメリカ大陸を股にかける真剣なチャレンジであることが伺えますね。

1月上旬に "西海岸用" の2台のKTM450 (DTX化するベース車両) を受け取ったジェフ・ワード。

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プロフェッショナル・モトクロスライダーを引退した後、2000年代前半に2輪レースに復帰し、新たにスタートしたAMAスーパーモト (モタード) では自身の半分ほどの年頃のライダーと戦い、2度のシリーズチャンピオンとXゲーム・ゴールドメダリストに輝いたワード。今回57歳のプロ・ダートトラックへの挑戦では、AFTツインズ = トップカテゴリー昇格を目指すイケイケのティーンエイジャー、もうそろそろ孫でも不思議でない新世代のヤングスターたちとも相見えることとなります。

このプロジェクトを強力に支援するのは、先のナショナル10 ジョニー・ルイス/モトアナトミーのみならず、長年ワードとタッグを組む盟友トロイ・リー/Troy Lee Designs、KTM USA、マルコム・スミスなどなど。次世代に向けたダートトラックレーシングのニュースタイルを探るAFTのビジョンとも呼応して、新たな層からこのカテゴリーへの注目を呼ぶことは間違いありません。

50代でプロ選手権の上位を走る "ダートトラック専業のライダー" は珍しくありませんが、他カテゴリーで長く鳴らしたジェフ・ワードの "ルーツを目指す久々の戦い" は彼のレーシングキャリアにどのような新しい輝きを刻むでしょうか。3月14日のAFT開幕戦デイトナTTへの期待が高まります。

ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!