ホンダを自動車メーカーとして世界に広く知らしめたのがCVCCエンジンだった。本田宗一郎さんが1971年に「これでマスキー法をクリアします」とアナウンスしたエンジンである。

連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。デジタル編集:A Little Honda編集部)

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CVCCエンジンって!?

当時、日本はもとより世界中がクルマの排ガスがもたらす大気汚染に悩まされていた。アメリカではマスキー上院議員が提案した厳しい排出ガス規制が承認されていた。が、アメリカのビッグ3をはじめ世界の自動車メーカーが「無理です」と宣言。これに対しホンダは「できます」と言ったのである。たちまち世界中が大騒ぎとなった。

CVCCとはコンパウンド・ヴォルテックス・コントロールド・コンバッションの略で日本語にすると複合過流調整燃焼方式となる。どんな風になっているかと言うと、エンジンの副室内で濃い混合気を点火燃焼させ、その勢いを駆って薄い混合気を燃焼させるという、いわゆるリーンバーン方式である。

リーンバーン方式とは?

エンジンの効率を突き詰めたF1の技術から生まれたものなのだが、本田さんが発表した時点ではまだ実験段階だったのだ。技術的にはOKだったが市販するにはまだ遠い道のりだったのである。開発スタッフは本田さんの見切り発車の発表に慌てたと聞く。

アメリカでの試験は一発ではパスしなかった。が、二度目で見事クリアする。ホンダが世界的に不可能だと言われていたことを可能とした瞬間だった。今の技術者に言わせると「不安定なキャブレターで良く制御しましたね」と驚くことしかりである。