連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。ホンダ偏愛主義Vol.28は、マニアックに「ホンダのエンジンの回転方向」のお話です!(デジタル編集:A Little Honda編集部)

いまのホンダのFF車用エンジンは、「右側」!

しかし、今は、ホンダのFF車用のエンジンは右側に置かれている。ということは正転、時計回りになっているということだ。ではいつからホンダのエンジンは変わったのだろう。一般的には1999年のS2000からとされている。FRだからさもありなん。確かにそれ以降のホンダのFF車は右エンジンになっている(すべてチェックしたわけではないけど……)。

以前、私はホンダの関係者から「正転は1986年のローバー800シリーズの開発から」と聞いていた。当時イギリスのローバーと提携関係にあったホンダは、エンジンを独自に左回りとしていたら現地での部品調達に支障をきたすことや、今後、ホンダがワールドワイドに展開するには右回りの方がいいと考え変更したのかもしれない。

だからローバーに搭載されたC型エンジン以降は右回り、つまり正転に順次移行して行ったと思われる。ちなみにC型エンジン横置きミッドシップのホンダNSXは右エンジンとなっている。NSXの日本デビューは90年9月。ちなみに91年登場の我がビートは左エンジン。ホンダ車の90年代は左右が交錯していたようだ。

ローバーと関わっていた80年代後半と言えばホンダがV6ターボでF1に参戦していた頃。ウイリアムズ、ロータス、マクラーレンと続き、88年にはマクラーレン+ホンダで16戦15勝を成し遂げたのは、ホンダ党ならご存じのはず。この時代は間違いなく一般的な右回りだろう。でなければF1マシンはバックしていただろうから。

エンジンなんてどっち回りでもいいじゃん、と言う人も多いと思う。ところがホンダ党は左か右かにこだわるのだ。懇意にしてるディラーの工場長によれば、「タイミングベルトの交換時に左回りを意識しましたね。最近はチェーンになったんで関係なくなりましたが……」とのこと。かく言う私は今でも左回りだった頃のホンダエンジンが好きです。

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