バラードスポーツCR-Xとホンダをこよなく愛するカメラマン伊藤嘉啓氏による新連載【地球まで、もう少し。】がこのたびスタート。伊藤氏はホンダだけではなく旧車にも滅法詳しい。そのため、ホンダ社内からも一目置かれる存在である。当然、写真も腕も一流だ。
そんな彼の愛車CR-Xのオドメーターはなんと68万5000kmを越えているという。これまで一体どこへ向かったのか、なぜそこまでCR-Xを愛するのか、そして今後の走行距離は何万kmに到達するのか…この連載を通してCR-Xの魅力とともに徐々に紐解いていく。(デジタル編集:A Little Honda編集部)

愛車、バラードスポーツCR-Xとともに走行。気づいたら地球と月を往復できる走行距離にまで至っていた。

何とも仰々しいタイトルなんだけど、ボクの愛車「ホンダ バラードスポーツ CR-X Si」のオドメーターは、10月現在68万5000kmを越えてるんだ。地球から月までの距離は大体38万4000kmらしいので、往復だと76万8000kmほど。つまりあと8万4000kmほどで地球と月を往復する計算になるって勘定だ。ここ最近の走行ペースだと年間3万キロ前後なんで順調にいけばあと3年ぐらいで到達できそうな気もする…。

CR-Xとの出会いは実にシンプルだった。

今から30年以上も昔、そう時代は「昭和」。バブル景気の83年6月にバラードスポーツCR-Xはデビュー。3カ月後に発表される、通称「ワンダー」と呼ばれる3代目シビックとシャシやエンジンなどは共通なものの、内外装は似た意匠にもかかわらず、ほとんど互換性を持たないホンダらしいクルマだった。車名こそバラードスポーツとなっているけれど、開発陣の狙いは低燃費の追求にあったのはご存知だろうか。

そのために空力特性と軽量化に注力し、中でもフロントマスクやフロントフェンダー、サイドシルガーニッシュなどには、ポリカーボネイトとABS樹脂に新成分を加えて合成したH.P.BLENDと名付けられた新素材を採用しているんだ。後に聞いた話では、その新素材を製造するため鈴鹿製作所に専用棟を建てたんだけど、次期モデルのEF系には採用されず、このCR-Xのためだけだったらしい……。今現在、コストダウンが至上命令のホンダからは、考えられないほどに贅沢なクルマだったんだよね。

長年の愛車、CR-Xを手に入れた経緯は・・。

ボクが来春、高校を卒業するっていう84年の10月に追加発売されたSiは、ホンダ久々のDOHCエンジンを積んだモデル。まだ免許も持ってないけど、小さな頃からクルマが大好きで、スーパーカー世代のボクにとってはギュッと凝縮されたスタイリッシュな姿と、当時F1でトップ争いをするホンダエンジンの活躍にヤラレてしまってたから、乗りたいクルマ候補の最右翼だったのは間違いない。

無事に高校を卒業できたものの、進学先は代ゼミだったから免許の取得は遠退くばかり……。それでも、当時販売店だったホンダベルノにクルマを見に行ってカタログも貰ってきたし、そのときに貰ったカタログは今でも大切にファイルしてあったりもする。

そんなボクが、このCR-Xを手に入れたのは今から25年前。もう四半世紀も前のコト。学生時代から足を踏み入れていた自動車専門誌の出版社モーターマガジン社の編集者が乗っていたのを、譲ってもらったのが始まりだ。

その時のオドメーターは8万6000キロ位だったから、あれから60万キロは走ったことになっちゃう。この間、色んなドラマがあるんだけど、それは次回以降に。

続きの記事はこちら