長年勤めてきたテレビ局を辞め、自由な生活を求めてほぼ廃墟化したカフェを借りて住み着いた松ちゃん。そんな彼を慕ってリナは、松ちゃんのドヤに入り浸るが、そんなリナの気持ちを知ってか知らずか人生に思い切り迷いまくる松ちゃん。
Mr.Bike BGで大好評連載中の東本昌平先生作『雨はこれから』第36話「回転木馬の憂鬱」より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集 by 楠雅彦@ロレンス編集部

私、リナ。20代後半のバイク乗り(え?アラサー?そんな言い方気に入らないわ!)。
今日は松ちゃん、シゲさん、炉炒のマスター、そして私の妹の咲希と一緒にオフロードバイクのイベントにきてる。

松ちゃん。
元テレビ局、今漫画家志望?の謎のおじさん。いつもなにかに悩んでる気難しい人♡

シゲさん。70歳超えてると思えないほど元気なおじいちゃん。カワサキのW800乗り。

いきつけの喫茶店、炉炒のマスター。最近ダートトラックにハマってる。

妹の咲希。

いつものことだけど、何か考え込んでる様子の松ちゃんが気になったけど、とりあえず私もダートトラックに乗り出す。オンロードとは違って、なかなか乗りこなせないけど、気分は爽快。多少転んだって痛くないしね。
てか、松ちゃんも難しい顔してないで、ガンガン走って汗をかくべき!

そう思った私はみんなのところに戻って、ダメ元で松ちゃんにも勧めてみた。「松ちゃんもやってみない!?」

慣れないダートトラックで手こずったけど、気分は最高。

すると、松ちゃんはちょっと笑って「そうだナ!」と言った。
言ってみるものだわ。

自分より年上のマスターが夢中になっているうえに、さらにシゲさんまでが挑戦する気になったのをみて、松ちゃんもその気になったってことらしい。それでもいいの、松ちゃんが元気出してくれれば。

松ちゃんは、昼間書き上げた漫画の原稿をもっていつもの出版社の編集部にでかけていた。帰ってきてから何か考え込んでいるようで疲れたような表情だったんだ。
何かあったのかな、何があったのかなって気になってたけど、私は訊かなかった。訊いても話してくれる人じゃないしね。

でも、いまトラックに出ていこうとする松ちゃんの顔は、昼間に比べれば少し明るかった。何か吹っ切れたのかもしれなかったんだ。私は少し安心しながら、松ちゃんの横に立っていた。

トラックに出ようとする松ちゃんと私。

横を見ると、とても70歳を超えていると思えないシゲさんが、颯爽と駆け出している。気がつくとそんなシゲさんの背中に熱い視線を送っている咲希(妹)がいた。

颯爽と走り出すシゲさん

シゲさんの背中を少し上気気味に見送る咲希。

そんな咲希に気づいたのは私だけじゃなかった。
「なあ・・・あの二人デキてるのか?」と松ちゃんは言った。
ねェ!と私も答えた。「咲希のほうが熱いかな」

姉妹そろっておじさん好きか・・・と私は心の中でため息をつく笑。
松ちゃんもどうせ気づくなら、私の気持ちに気づきなさいよw

やがて松ちゃんも走り出した。

グルグルとトラックを走り続ける松ちゃんに、私は心の中で「がんばれ」と声援を送った。

走れ!松ちゃん。行け!松ちゃん。

私の心の声が届く日が来るかどうかわからない。だけど、松ちゃんが走っている姿をみながら、私は嬉しかった。

(続く)

疲れた松ちゃんが何を迷っていたのか、それは本誌をご覧ください・・・