2017年8月に生産終了となった名機YAMAHA SR400だったが、2018年9月14日に平成28年排ガス規制に適合された新型SRが発表された(発売は11月22日)。
今回は、そんなSRを愛する男に現れた恋の機会の話。
オートバイ2018年11月号別冊付録(第84巻第17号)「Late Summer」(東本昌平先生作)より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集:楠雅彦@ロレンス編集部

40年目のSR。Photo by Shinobu Matsukawa

夏も終わり、秋めいた風の中、SRにまたがった私は温泉地に向かった

その日私は、紅葉が始まった温泉地に向けて愛車のSRを走らせた。
猛暑が続いた2018年の夏がようやく去り、暑くもなく寒くもない、バイクには最高の季節。私もSRもご機嫌だった。

色づき始めた木々の葉を眺めながらゆっくりSRを走らせる。それがこのバイクの良さだと感じながら。

特に目的地を決めたわけでもない、旅ともツーリングとも言える、気楽な走りを楽しんだ私は、観光地に集まる家族づれやカップルの中で、1人の気儘さを享受しながら、ぼんやりと美しい風景を眺めていた。

そのとき、彼女は言った。「SRって、バイクってかんじよね」

そのとき、私は後ろから声をかけられて振りかえった。

ぼうっと風景を楽しんでいると、後ろから「いいわねバイク!」と女性の声が・・

「ツーリングですか!?」

振り返ってみると、ボルドーカラーのジャケットを羽織ったショートカットの女性が微笑みながら、私のSRの横に立っていた。

ねえ・・・とその女性は私のSRを見ながら「このバイクかわいいよねぇ!」と言った。
「乗るんですか?」と私が訊くと、彼女はSRから目を離さないまま「いえ、これから免許取ろうと思って」と言う。

女性ライダーが増えるのは良いことだ。しかも(表情には努めて出さないように気をつけていたが)目の前の女性は、なかなかに私の好みだったのだ。

車で温泉めぐりに来たという彼女だったが、やがて意を決したような顔で言った。
「後ろに乗せてもらえません?」

チャンス・・・ではあった。しかし。
しかし、私は1人でここまできている。当然予備のヘルメットは持っていなかった。

さて、SRによって、降って湧いたような好みの女性との邂逅が!

あなたならこのチャンス、どうする??