年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき映画を紹介。今回の100分の1の映画は、実在のナチスの高官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺作戦を描いた戦争サスペンス。

ナチス統治下のチェコスロバキアを舞台とした実話ベースのスリリングな戦争サスペンス

1941年、ナチス統治下のチェコスロバキアで起きたナチスの高官暗殺計画”エンスラポイド作戦”の一部始終を描いた実話ベースのサスペンス映画。
暗殺されたのは、ヒトラー、ヒムラーに続くナチスの実力者ラインハルト・ハイドリヒ。彼はホロコースト計画(ナチス側は湾曲に「ユダヤ人問題の最終的解決」と表現していた)の考案者の1人であり、ナチスの秘密警察ゲシュタポを束ねる国家保安本部の長官でもあった。

英国政府と、ロンドンに拠点に置いていたチェコ亡命政府は、チェコがナチスとの徹底抗戦を行う意志があることを示すため、ハイドリヒの暗殺を計画し、ヨゼフ・ガプチーク、ヤン・クビシュら7名の兵士をチェコに送り込む。
ヨゼフらは紆余曲折ののち、ハイドリヒの暗殺に成功するが、チェコからの脱出は至難の業であった・・・。

わずか数十年前に存在した過酷な環境での人間ドラマ

本作のベースとなっているハイドリヒ暗殺は、第二次世界大戦中に計画された(ヒトラーを含む)ナチス高官暗殺計画のうち、成功した唯一の事例。
ただ、暗殺を実行した兵士たちは1人残らず非業の死を遂げており、英雄として称えられることはなかった。

本作のストーリーの中で、どこが映画のために脚色された部分かはわからないが、全体としては実話通りの展開となっている。だから本作についてはストーリーをどうこういうよりも(逆にいえば筋書きを隠しても隠さなくても意味がない)、国を愛し、自分たちを侮蔑する侵略者たちに対して立ち向かった様々な者たちの信念と、そうはいっても少なからず彼らを動揺させた恐怖心や不安、卑怯な道であっても生きていたい、という極めて人間らしいが利己的な感情が根底にはあったことを直視するべきだろう。

本作は映画としては地味だし、重々しいものであるが、最近の高等教育では、近代史を学ぶ機会が少ないので、わずか数十年前に存在したこうした過酷な現実を知るためにも重要な意味を持つ作品であると思う。

『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』予告編

youtu.be