年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき映画を紹介。今回の100分の1の映画は、堺雅人・高畑充希が年の離れた夫婦を演じる『DESTINY 鎌倉ものがたり』。

妖気が蓄積された古都 鎌倉で暮らす夫婦を襲う魔手

堺雅人演じる一色正和は小説家。長く独身を貫いてきたが、年の離れた編集アシスタントのアルバイトをしていた亜希子(高畑充希)に一目惚れして結婚する。2人は鎌倉にある一色家で新婚生活を開始するが、そこは魔物や幽霊、古代の神々が人間と共に暮らす不思議な世界だった。

天性の明るさを持つ亜希子はすぐにその生活に馴染むが、あるとき不慮の事故で命を落としてしまう。悲嘆に暮れる正和だったが、やがて亜希子の死にまつわる陰謀に気づき、亜希子を取り戻すべく、黄泉の国に乗り込む決意をする・・・。

摩訶不思議な古都を舞台に、愛する人を残して旅立つ者の気持ちや、愛する人を失うことを拒否して運命に立ち向かおうとする者の強い想いを描いたファンタジー映画。

CG・VFXの使い手として知られる山崎貴監督作品だが・・

予算が限られた映画だからこそCGを駆使するという山崎監督。
今回は、あたかも『千と千尋の神隠し』で描かれた黄泉の国を実写化するかのような試みで、現実にはない世界を巧みに再現しようとしているため、結果的にCGに頼ることになる。

例えば、丑の刻に現れて、現世から亡くなった人の魂を黄泉の国につれていく不思議な駅と電車が、まるで銀河鉄道999のような姿で走り抜けていくが、美しく巧みに描かれているものの、空に浮かぶ線路を共に描いていながら、そのうえを走る列車の重量感がまるでなく(弾んだり跳ねたり沈んだりまったくしない)背景に対して浮いて見えるのがとても惜しい・・・。CGやVFXにしても結局は予算や時間をかけて練っていくものだから、本当であればもっと緻密で現実感のある画を山崎監督なら作れるのだろうが、そこがやはり日本映画の限界かと感じざるを得ないところだ・・。

ふんだんな予算で思う存分時間をかけれらる作品の監督をさせてあげたい、と思わざるを得ない。

また、黄泉の国を描く終盤はやはりお金がかかるためだろう、思ったより短く、宣伝では妻の魂を追いかけていく夫の冒険譚のような映画と思わせておいて、実際には鎌倉の家での生活や余計なエピソードが多く、事前情報を持っている観客ほどまどろっこしさを感じてしまう作りになっているのが残念だ。(黄泉の国で正和が剣の腕前を披露するのだが、前半にそんなシーンが出てこないのも気になった)

ただ、堺雅人と高畑充希の”年齢差のある新婚夫婦”は、演技というより、雰囲気で互いを強く愛していることに説得力を持たせていて好感持てた。

なので全体としては悪くない。悪くないが、繰り返して申し訳ないが、もっと予算をかけて、余計なエピソードを廃して、妻を追って黄泉の国に向かう夫の勇気と冒険を描いてくれたらもっと面白いのに、と思わざるを得ない。

この作品だけを観ていればさほど文句もないのかもしれないが、洋画も邦画も同じ金額なのだから、どうしても本物のエンターテインメントのレベルを要求してしまう。
(だから僕はほぼ邦画を観ない。同じ金額を出して観るならより良いものがいいからだ。その僕がこの作品を観ている、ということは、やはり山崎監督に期待してしまうからなのである)

「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告2

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