全国の2954もの峠をわずか10年で巡った峠研究家の中川健一氏による、「峠を楽しむ」ガイドブック、『全国2954峠を歩く』が内外出版社から、8月7日(火)に発売されました。

峠は歴史を感じさせてくれる「タイムカプセル」

普段は何気なく車で通りすぎてしまう峠。でも、 そこで一度立ち止まって、その峠のさらに上の方を確かめてみてください。そこには、太古の時代から人々が通っていた旧道の峠がたいてい残っています。

例えば、名作『伊豆の踊子』で有名な静岡県・天城峠。現在通常使われている新天城トンネルのほかに、明治時代に完成した天城山隧道、さらにその上には、踊り子たちが歩いた昔からの天城峠が残されています。

新天城トンネル

天城山隧道

天城峠

このように、峠道は、時代によって新しいものが作られてきました。旧道のほか、明治時代から平成時代に掘られた隧道やトンネルを含めると、第2世代、第3世代、また、それ以上の世代の峠道が今でも同時に存在しています。つまり、峠は、タイムマシーンに乗らなくても、その時代のことを入場料無料で楽しめる、タイムカプセルなのです。

峠で楽しむ歴史散歩

峠は物資を運ぶ道であったほか、軍事、信仰の道として使われていました。峠にある地蔵尊の裏にある年代表記を見ると江戸時代もしくはそれ以前のものもあり、いきなりその時代にタイムスリップしたような気分にさせられます。

軍事の峠としては、たとえば、山梨県の宇津ノ谷峠。豊臣秀吉が小田原征伐の際に、侵攻しやすいように整備された峠です。この宇津ノ谷峠は、奈良時代、秀吉の戦国時代、明治、大正、昭和、平成と6つの時代の峠が残されているのが、峠ファンには垂涎の峠になっているそうです。

豊臣秀吉によって開かれた宇津ノ谷峠

明治時代に作られた宇津ノ谷隧道

「大正トンネル」と呼ばれている宇津ノ谷隧道

昭和34年に作られた新・宇津ノ谷隧道

廃道化して、峠が消滅!!

峠は生き物なんです!峠は時の流れとともに消滅してしまうものなんです!人が通ることで整備されてきた峠ですが、新しい道やトンネルができ、人の往来がなくなってしまうことで、自然に還ってしまう峠もあります。峠の道は使わなければ苔むしていき、その後、アスファルトの亀裂ができてしまいます。その亀裂に種子が根付き、草で覆われ、人の往来ができなくなってしまいます。北海道の林道などでは、こういった峠に遭遇することができます。だからこそ、今、このタイミングで峠へ行かないと出会うことができなくなってしまうのです。

自然に還って廃道化する峠(北海道・於鬼頭峠)

真夏の暑さを吹き飛ばす、幻想的な峠と背筋のゾッとする峠

最後にふたつの峠を紹介します。2954峠を巡った著者は、今まで「森の妖精」や「ましら」など、山怪と呼ばれるものに出会ったことがないと言われたいますが、気味が悪かったという峠があると言います。それが、和歌山県の香ノ塔峠だそうです。写真を撮ってすぐに立ち去りたいと思った峠だったそうです。

早く立ち去りたいと思った和歌山県。香ノ塔峠

一方、その美しさに心が洗われたというのが、その香ノ塔峠のひと山越えたところにあるコカシ峠だと言います。鬱蒼とした森林の中にある峠でその幻想的な佇まいに感動したそうです。

神々しい雰囲気で幻想的な峠。和歌山県・コカシ峠

そんな峠の面白さをガイドした『全国2954峠を歩く』。
今までにない、新しい旅「峠を楽しむ旅」へ出かけてみませんか。
豆知識を身につけて、周りの人を驚かせちゃいましょう!!

「全国2954峠を歩く」
中川健一著
ページ数/168ページ
定価/本体1,600円+税
978-4-86257-391-9
発売日/2018年8月7日

www.amazon.co.jp