低価格はひとつの側面にすぎません
アドベンチャーバイクのスタイルと快適さにロードスポーツの走りをミックスしたNC750X。これをホンダはクロスオーバーと呼んでいます。
2011年発表の初代は排気量669ccのNC700X。このバイクが発表された時は騒然としました。
なんせ大型免許枠の排気量なのにABS無しのマニュアルトランスミッション車だと64万9950円。税抜だと61万9000円という破格のプライスだったんです。
そして2012年2月の発売と同時に爆発的ヒットモデルとなりました。
今のアドベンチャーバイクのブームの火付け役と言ってもいいかもしれません。
そして2018年の今は3代目に進化しています。スタイルも高級感が出てますが、それだけじゃありません。
やはり2014年に745ccに排気量アップされ、その後に欧州基準に合わせて出力特性が変更されたことが効いています。
素直な感想として、NCのエンジンは熟成によって、良いエンジンに成長しました。
最高出力は54馬力ですが、そこは750ccクラス。かなり低速~中速に強い高トルク型エンジンに仕上がっています。
初代NC700Xでは、走っているといきなり回転が頭打ちしていしまうことがありましたけど、熟成の結果うまくパワーフィーリングが整えられて、それもほぼ無くなりました。
ちなみにエンジンは62度も前傾して搭載され、低重心化に貢献しています。
2速~3速がある意味、凄まじい
ちなみに今回乗ったのはオートマチックDCTじゃなくて、マニュアルトランスミッションのEパッケージ車です。
久しぶりに乗ったけど、改めて凄まじいな……と感じました。
低速ギアの扱いやすさがハンパじゃないんですよ、NC750Xって。
2速とか3速といった低めのギアが、5速とか6速みたいに優しい。この扱いやすさは他のバイクじゃちょっと味わえません。
完全にドライバビリティ優先。それが徹底されています。
高速道路を5速とか6速でやんわり流していると思って、ふとメーターを見ると3速あたりで高回転まで回して走っていたります。
意識的に高いギアを使うようにしないと、うっかり2速とか3速でクルージングしてしまうんですよ。
こんなこと、普通は大型バイクじゃ起こりえません。圧倒的だと言っていいほどにパワーデリバリーが優しいんです。
でもパワーデリバリーが優しい=スポーティじゃないではありませんので御注意を。
むしろ深くバイクを寝かせている状態からでも恐怖感無しでスロットルを開けていけるんです。
NC750Xを「速いバイク」だとは言いませんが、あなどれないレベルの走りを披露すると思ってください。
スポーティな走りを楽しむにあたって、スロットルの開けやすさは最重要項目のひとつ。それをNC750Cは先天的に備えていますから。
しかも、NC750Xは前後17インチホイールなので、ハンドリングが極めてニュートラル。
きっちり狙ったラインを駆け抜けることができます。ここも扱いやすさに貢献していると感じますね。
ブレーキも唐突に効かない特性で安心です。シングルディスクですが重量も重過ぎない221kgですし、特に不満はありませんでした。
あと、個人的にはリアタイヤが160幅とすこし細めなのが気に入っています。
最近はアドベンチャーも180幅が主流になってきましたけれど、やっぱり160幅だと動きが軽い。
言い過ぎかもしれませんが、250ccのオフロードバイクみたいに軽い動きをするのもNC750Xの特徴のひとつだと思っています。
そしてメーターの右端、見えますか?
2018年モデルからマニュアルトランスミッション車のEパッケージ仕様にはトラクションコントロールが装備されているんです。
さらに安心してスロットルを開けられます。
ちなみにEパッケージ仕様は……
グリップヒーターも装備。ETCも搭載されています。もちろんABSも。
NC750Xをマニュアルで乗るならEパッケージが本命でしょうね。
価格は88万200円(税抜81万5000円)になりますけどABS・トラクションコントロール・グリップヒーター・ETCの追加と考えれば格安と言えると思います。
これらが必要ないと感じるなら、74万3040円(税抜68万8000円)で大型バイクの新車が手に入るというのもNC750Xの美点のひとつですけど!
のんびりがやっぱり真骨頂
でもやっぱり、のんびり流すのがNX750Xの真髄です。
ワインディングもなかなか楽しく走れますが、のんびりツーリングペースで走るのが、いちばん気持ちいい。
並列2気筒エンジンのパルス感を感じながら、2500~3000回転あたりで流す。
風を感じて、風景を楽しんで。バイクで走ることをそのものを味わう。
そうして走っていると、NC750X以上のパフォーマンスなんて必要ないんじゃないか?という気にすらなります。
アドベンチャースタイルによるウインドスクリーンは胴体部分に当たる走行風をきちんとカットしてくれるので、快適性も充分。
排気量750ccの余裕で高速道路もどこまでも走っていけます。
排気量が大きいバイクの利点は速さだけじゃありません。パワーがある=運転がラクというメリットも非常に大きいとボクは思っています。
しかもですね……
このタンクに見える部分はラゲッジスペースです。
容量は22Lでフルフェイスヘルメットが一個、すっぽり入るくらい。
この便利さがハンパない……すべてのバイクにこういう収納スペースがあればいいのに……とすら思ってしまうほどに便利です。
バイクのスタイルの美しさを損なわずに積載性を高める。これは理想のひとつですよね。
一泊くらいのツーリングならば、この収納だけで充分ですから。
ちなみに給油口はリアシートの下にあります。燃料タンクをシート下に配置して重量マスの集中化を計り、扱いやすさを生んでいます。
ところでNCのエンジンは、丁寧に走るとリッターあたり30km近く走る、凄まじく良好な燃費を記録します。
シート高は800mm。前方が絞り込まれた形状で、身長が165cm程度あれば、余裕を持って扱えると思います。
こういうアドベンチャースタイルのバイクの中では屈指の足着き性を誇ると言っても良いでしょうね。
バイクの価値は値段じゃない
バイクの価値をうんぬんするのに、価格のことばっかり言いたくないんですが、それだってすごく大事なこと。
「こういうバイクがあるなら、ちょっとがんばって大型免許を取ってみようかな!」って思えるキッカケになると思うんです。
しかも、どこにも不満がない。ちゃんと満足できる性能・スタイル・装備をNC750Xは備えているんです。
絶対に、安かろう悪かろうじゃない。
むしろその逆。
この価格で、これほどのバイクが売られていることに驚くしかありません。
大型免許へのステップアップ。忙しい現代人には、その時間を取る事もなかなか難しいものです。
そんな中で「いっちょトライしてみるか!」ってモチベーションをくれるバイクって、珍しいと思うんですよね。
そして、それを先陣を切って用意するホンダっていうメーカーは、本当に偉いなぁと思います。
他を牽引する。こればっかりは、さすが世界一のバイクメーカーという他ありません。
コストパフォーマンスは神レベル。熟成を重ねた走行性能も文句なし。スタイルだって堂々としてカッコいい!
みなさんはNC750Xって、どういうバイクだと感じていますか?
大型バイクの入門用? 初心者向け?
いやいや、もうそんなレベルの完成度じゃないんです!
乗ってみたら、絶対にみんな驚きます。
さっきも言いましたけどね……
「こんな良いバイクが、こんな値段で売ってていいのか!?」
きっと、そう感じると思いますよ!