連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。第17回は、“惜しかった”ホンダ車の後編。比較的新しいモデルを取り上げたいと思います。(デジタル編集:A Little Honda編集部)

“惜しかった”ホンダ車の前編はこちらから!

まずは1998年に登場したHR-Vだ。

まだSUVブームの夜明け前とあって、ワゴンでもクロカン(クロスカントリーの略)でもない新しいモデルとしていた。最低地上高は190mmとたっぷりあり、スタイルはいわゆるハイライダールック。

大胆だったのが3ドアのみだったこと。これがネックとなって販売はイマイチ。皮肉にも輸出先のドイツでは「カッコいい」と大人気となる。エンジンは1.6Lで105ps(4WDは125ps)とキビキビと元気に走り、CVTと5速MTも用意していたのに残念だった。99年に全長とホイールベースを100mm延ばして5ドアを加えるも、時すでに遅し。

1999年登場のアヴァンシアも“惜しかった”代表格。

マルチに使える5ドアワゴンでスタイリングも良かった。リアシートはスライド&リクライニングするし、リアゲートは“21世紀のエアロデッキ”よろしくルーフまで回り込んでいた。

2.3Lの直4エンジンを搭載し最高出力150psと3LのV6で215psがあり、前者が4速AT、後者が5速ATとしていた。当時、欲しくなって「どっちにしようかな」と真剣に悩んだものだった。販売のテコ入れのため2001年に2.3Lエンジンを搭載するヌーベルバーグなるスポーツ仕様も加えるが、ユーザーにはあまり響かず、だった。

モビリオも欠かせないだろう。

2001年に意外にも不発に終わったキャパの後継として登場。全長4m強のコンパクトボディながら、両側スライドドアに加え、7人乗りを実現。スタイリングが奇抜だった。

路面電車をイメージしたそれは好みが分かれたが、発表会で「カッコいいですね」と私が言ったら、ホンダの人は「河原さんの好みとなると不安です」と返された記憶がある。1.5Lエンジンを搭載し最高出力90psにCVTの組み合わせで走りは良かったけど……。まあ、次のフリードで起死回生を果たすから“OK!”でしょう。

2002年のザッツも惜しかった。

ライフをベースにして絶妙なスタイリングに仕立てた。角なのに丸で、白物家電のような出で立ち。

室内もモノトーンでシックにまとめていたし、個人的に“ヒット間違いなし!”と思った次第。が、世の中甘くはなかった。最高出力64psターボは結構元気良かったのに、やっぱり3速ATのみがネックだったのかも。次の2006年のハイトワゴン、ゼストで4速ATとするが、こっちもイマイチだった。

最後は2004年に登場した3×2のミニバン、エディックスだ。

前席3人掛けは、1998年のフィアット ムルティプラや日産ティーノが先駆けていた。夫婦が子供を中央に座らせて楽しくドライブ……を想定していた。

その子供席はスライドさせて後席の祖父母とコミュニケーションも図れ、使わない時は倒してセンターアームレストになった。ボディ幅は1795mmと今のレベルではOKだったけど、当時はこれもネックに。最小回転半径は4.9mと小さかったし、最高出力156psの2Lエンジンに5速ATの組み合わせで性能的にも問題なかったのに、とても残念。

以上、2回に分けて“惜しかった”ホンダ車を紹介した。もし、今でも乗ってらっしゃったら胸を張って欲しい、売れなかったかもしれないけど志は高かったんだ、と。

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