「偶然目にしたクルマとヒトの情景に魅かれ思わずシャッターを切っていた。その瞬間に変わらないもの、変わってほしくないものをたぶん見つけていたのだ」(永元)

日本で一番長い歴史を持つ自動車専門誌「Motor Magazine」。その表紙を長年撮影しているフォトグラファーが永元秀和だ。その永元氏のライフワークが、クルマとヒトの撮影である。その舞台は日本だけにとどまらない、世界。ここではそんなベテランフォトグラファーが世界中で撮影した「クルマとヒト」の写真をいくつか紹介する。

#001 1978 Yokohama ヨコハマ 日本(JP)&アメリカ(US)

クルマは1971年製シボレー インパラスポーツクーペ。

横浜の本牧にあった米軍住宅の中にたたずむ一台のクルマに目を奪われ、自分との居場所を隔てるフェンスのアナから覗くようにシャッターを切った。学生だった私がはじめて外国を意識した情景。日本であって日本ではない場所は非日常の異国にしか見えなかったが、同時に憧れもした。写真上部の坂道を残して今は日本の住宅地に変わり当時の様子を見ることはできない。今回のテーマの原点ともいえる写真です。(永元)

#002 1987 Le Mans ルマン フランス(FR)

クルマはシトロエン2CV。

このシーンは解説をしない方が想像を膨らませることができそうだ。実はこの写真、フランスで年に1戦行われるルマン24時間耐久自動車レースでの一枚。一般公道を利用するためレース中にもかかわらず地元のヒトがコースサイドまで出てきてしまうこともある。80年代になってものんびりした耐久レースの雰囲気を感じる。(永元)

#013 2009 Geneve ジュネーブ(CH)

2009年3月のジュネーブ旧市街は曇り空で肌寒かった。ヨーロッパでは路肩に乗り上げる駐車の仕方は一般的だが、ここはほかにクルマがいない。反対側には駐停車禁止らしい標識もあるところを見るとこのフィアット500は違反? でもとっても街並みに似合って目立っていたのでカメラを向けると素敵なご婦人が角を曲がってきて、街並み、クルマ、ヒトの素敵な三重奏となった。(永元)

「クルマとヒト」をテーマにした作品はまだまだある。ここで紹介したのはほんの一部だ。そんな永元氏の作品が並ぶ写真展が7月23日(月)から銀座K’s Galleryで開催される。

また今回の写真展は、若手画家風見規文氏とコラボレートしているのも特徴である。実は、永元氏と風見氏が出会ったのは、Motor Magazine誌の表紙を撮影していたスタジオである。そんな縁もあり、このふたりの写真展の告知も私が引き受けたといわけである。興味のあるひとは、ぜひとも銀座に足を運んでほしい。

風見氏は精力的に撮影を続けてきたレントゲンシリーズの静物写真を展示

こちらは風見氏の作品。

「物心ついた頃からひたすらに絵を描いてきました。社会に出る時、美術に得るものがある仕事をと考えた結果、撮影に携わる職に就きました。10年間多くの方の仕事をお手伝いさせて頂き、学び、気づけば写真でも作品を制作するようになっていました。ほとんど発表はしませんでしたが、撮影の現場を離れるのと入れ替わるように発表の機会を頂戴できるようになった事にご縁を感じます。初めて暗室作業をした時、とても絵画的な行為だなと感じました。それ以来、絵を描くように写真の作品を制作しています」(風見)

永元秀和プロフィール
1956年 東京生まれ
1979年 日本大学芸術学部 写真学科卒業
1979年 モーターマガジン社入社 写真部所属
1987年 日本レース写真家協会(JRPA)会員
2012年 富士フイルムフォトサロンにて”永元秀和写真展「クルマとどこまでも。」~Motor Magazineとともに〜“を開催

風見規文プロフィール
1980年 東京生まれ
2005年 文星芸術大学美術学部日本画科卒業 最優秀賞
賞歴
2002年 第22回上野の森美術館大賞 優秀賞
2011年 第15前橋アートコンペ 銀賞
2016年 ACTアート大賞プリント部門2016 入賞
作品収蔵 上野の森美術館 文星芸術大学
個展、グループ展多数

●写真展情報
「世代を超えて2人展」<永元秀和・風見規文>
2018年7月23日(月)〜7月28日(土) 月〜木12時〜19時/金12時〜20時/土11時半〜17時
銀座K’s Gallery
〒104—0061 東京都中央区銀座1-13-4 大和銀座一ビル6F
TEL 03-5159-0809/http://ks-g.main.jp/