マルク・マルケスやバレンティーノ・ロッシら、世界的トップライダーをはじめとするレーサーたちが、トレーニングの一環だったはずのダートトラックライディングに心底惚れ込んでいることはよく知られた事実ですが、本日は、彼らはもとより、競技の本場アメリカのプロライダーたちにも一目置かれる抜群のテクニックを持つ、日本人ダートトラックライダー・大森雅俊選手を皆さんにご紹介したいと思います。

世界を熱狂させる、日本人ダートトラックライダー!

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。フロントブレーキのないマシンを操って左回りのオーバルトラックを誰よりも速く駆け抜け、その順位を競うダートトラック。シンプルであるが故の奥深さ・・・については毎週金曜日の当コラムでその魅力を様々な角度から熱量高めでお伝えしていますが、生でその雰囲気を味わったことのない方には、それでもまだちょっと単調なものと感じられてしまうかもしれませんね。

本日ご紹介する大森雅俊選手は、レースでの勝敗に限らず、幅広いパフォーマンススキルを様々な場面で如何なく発揮し、自身をワールドクラスのライダーとして広く世界に知らしめるとともに、オーバル・ダートトラックレーシングのダイナミックな魅力を力強く発信し続ける、我々の自慢の "RACING BUDDY" のひとりです。

驚異のバンク角に世界が震えた、再生回数55万回のYouTube動画がこちら!

大森雅俊 Ohmori Masatoshi

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茨城県で育った大森選手は、中学校在学中からキャリアをスタートしました。出身地から近いツインリンクもてぎ (栃木県) で2011年まで運用されていたレーストラックに毎週のように足繁く通い、10代後半にはすでにトップカテゴリーへ昇格。またアメリカ・ペンシルベニアからゲストライダーとして来日したプロ選手の元へ度々 "スポーツ留学" し、毎週末のローカルレース・さらには全米選手権プロシングルスへの参加機会にも恵まれるなど、本場のレースシーンに深く接する貴重な経験を重ねます。

当時のもてぎでのレース映像・アスファルト路面でのデモンストレーション・ミニバイクでのトレーニング風景など、そのライディングスタイルを生き生きと捉えた上のYouTube動画がきっかけとなり、いつしか日本人ダートトラックライダー・大森雅俊の名は、世界に知れ渡ることとなりました。

面目躍如!並み居る強豪を退けスライドコンテスト王者に!

Concurso de Derrapes | Skidding contest - III Superprestigio Barcelona 2015(UHD/4K)

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2014年早春に初開催されたスペイン・バルセロナでのダートトラックレースイベント "スーパープレスティジオ" では、当地のスーパースター、M.マルケスをはじめとしたロードレース界の猛者たちと、アメリカから招聘された当年グランドチャンピオン、ブラッド・ベイカーの対決が世界中から熱視線を浴びましたが、大森雅俊もその類い稀なマシンコントロールと驚異のバンク角を高く評価され、日本はもとよりアジアからの唯一の招待選手として挑み、見る者に鮮烈な印象を与えました。

スーパープレスティジオは、一般的なダートトラックフォーミュラ (規格)である19インチ専用タイヤを使用せず、単一メイカーの17インチ・レーシングレインタイヤ縛りでのレース。主催側の思惑による特殊なレギュレーションで、摩耗は専用タイヤ以上に早くセッティングも異なるため、アメリカンスタイル = 前後19インチに慣れ親しんだライダーには大変不利な条件となります。

さらに現地バルセロナへ単身乗り込むことになった大森にとって、コミュニケーションの面でも数段ハードルの上がる初のスペイン語圏でのレース参加、また地の利を生かしたヨーロピアンライダーたちが高度にチューニングされた自身のマシンを駆るのに対し、サスペンションを除きほぼストック状態の貸与されたマシンで挑まざるを得ないなど、様々なハンデを乗り越え、翌年の二度目の挑戦では、B.ベイカーらを抑えスライドコンテストでの "ベストパフォーマンスアワード" を獲得します。

バルセロナ・スーパープレスティジオ2017に向けた直前の練習風景

Superprestigio Dirt Track 2017 | Johann Zarco, JD Beach, Cardús, Masa Ohmori & more by Jaume Soler

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これまで4回チャレンジしたスペイン・バルセロナでのレース、最新回はマルケスの参加はなく、また諸事情から次回以降はフランスでの開催に変わるようですが、これまで当地で大森の披露した卓越したマシンコントロールの才は多くのヨーロピアンライダーに刺激を与え、また彼が毎年のレースウィーク終了後に返却する車両とともに残す膨大なセッティングデータも、スペインのダートトラックコミュニティ全体にとって貴重な資料となっているようです。最新回に向けたテスト・練習風景からも、彼が様々なアプローチで最良のライディングを目指し、全力で取り組む様子が見受けられます。

全米ダートトラックトップランカー、サミー・ハルバートとのバンク角対決!

Sammy Halbert vs Masatoshi Ohmori Slide-Off

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バルセロナでのスーパープレスティジオ・ダートトラックと同様に、大森はオーストラリアでのレースにも計5回、招待される機会を持ちました。元GPライダー/スーパーバイク世界チャンピオンであるトロイ・ベイリスが主催し、自らの名を冠した "トロイ・ベイリス・クラシック" への出場です。

オーストラリアンスタイルのダートトラックは、これまたアメリカの正統派とは様々な面で趣きの異なる "なんでもありのストロングスタイル" 。タイヤサイズに制限はなく、またレース本番の路面はダートの上にコールタールを大量に撒き、乾きかけのアスファルト舗装工事中のような、ネバネバした独特の粘着質のサーフェイスとなりました。走行後の洗車にはガソリン (!) を使用したそうです。

レース本編映像の紹介はまた別の機会ということにして、上の動画は大森と同じく当地に招待された数名のアメリカンライダーの中で、最もワイルドなサミー・ハルバートとの練習風景から。2人の意地が地味にぶつかり合う "バンク角対決" の模様です。

そして・・・バイクリンボー!?

Japanese FLAT TRACK Rider Masa Ohmori #70 Motorcycle Limbo / Superprestigio Dirt Track 出場の大森雅俊

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近年の大森選手は、国内では筆者ハヤシの主宰する "日本で最も刺激的なダートトラックレースシリーズ" FEVHOTSの年間シリーズ戦を中心に、常にダートトラックレースの最前線で走り続けています。当シリーズを主軸として走る他の多くのライダーと競い合うとともに、ここ数年でダートトラックに親しむようになった後進のエントリーライダーや、さらにはキッズたちへの熱心なアドバイスを日頃から欠かすことはありません。

また日本各地で行われるモータースポーツ系イベントで、豪快な "アスファルトスーパースライドショウ" や、誰よりも深いバンク角を最大限に活かした "バイクリンボー" を披露したり、郷里茨城県・常陸大宮市の町おこしのための親善大使、各地のラジオ放送への出演など、ダートトラックの魅力を世に広く伝える活動にも精力的に取り組んでいます。

我々FEVHOTSと恊働でのプロモーションイベントやスクーリングなどの新たな展開も、夏までに完成予定の長野県 "オートパーククワ" をはじめとした各地のトラックで開催するべく、計画は着々と進行中。我が国ダートトラック界の至宝、大森雅俊選手のさらなる進化と活躍にご期待ください。最新情報は本人SNSなどでご確認いただければと思います。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!