古来より、全ての道はローマに通じると言われますが、そのローマは一日にして成るわけではありません。モーターサイクル誕生とほぼ同じ、100年以上の歴史をもつアメリカンダートトトラックの世界は、近所のおっちゃんちのバックヤードトラック → 各地のローカルレーストラック → 全米を股にかける統括団体によるプロレースまで、裾野の広いピラミッド各層が緩やかに、しかし確実に連携した仕組みで成り立っています。本日はこのスポーツコミュニティの一翼を担う、ローカルダートトラックにまつわるお話です。とりあえずあなたも裏庭にレース場、作りませんか?

と、サラっと簡単に言ってみました。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/レースプロモーターのハヤシです。広大な国土のアメリカのプライベートトラック事情と、あなたのご近所で練習できる場所を開拓することは、一見全くリンクしない話題かもしれませんが、この種目の将来を考えるうえで、各地に魅力的なローカルシーンが立ち上がることは鍵となる重要な要素だといえます。

とはいえここは日本、ささやかなオーバルトラックといえど、日常的なモーターサイクルでの遊び場をこれから新しく確保するのは、言うほど簡単なことではありませんが。

ダートトラックは、他のどのカテゴリーより "音がうるさい" スポーツ。

スロットル全開と全閉を繰り返すこの種目は、好意的で興味のある人々以外にはなかなか耳障りな騒音をもたらします。たとえ100ccのキッズバイクでも、全開時はそれなりの音量 (音圧) になりますし、路面管理の容易な小さなトラックを複数台で走るなら、その音は常時鳴り響くことになります。

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450ccや600ccの大排気量車の音量は言うに及ばずですが、全開区間が走行シーンの半分近いダートトラックに関して、静止時に音量計で測る数値は大した意味をもちません。耳障りであるか否かという感覚的な尺度の前では、車両のサイレンサーを加工しての消音対策にもあまり期待はできません。加えて純正マフラー以下の消音を優先すると、車体に熱がたまり、不調の原因ともなりかねません。

Webisode #6: THE RANCH
V. ロッシの所有するプライベートトラックも、場所の選定から完成までに10数年が費やされた。彼の世界屈指の名声を持ってしても、安定した運営のためには周辺住民と走行音についての頻繁な調整が大変重要らしい。

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四六時中ノイズを生む時間制限なしの練習走行と、ごく短時間の走行とはいえ10数台がいっせいにスタートするレース形式。それらを受け入れる環境・場所に用地を求めるのがまずは最優先だといえます。走行時間を厳密に管理したり、とくに大きな音の出る状況をトラック管理者が把握して対応すること、トラック周辺への防音壁の設置や、消音のために木立を利用することなども効果的です。

埃を抑え路面クオリティを保つための撒水・平滑を維持するメンテナンス機材。

乾いた土の路面は大量の埃を発生させます。近隣への配慮 (農作物や洗濯物への害がよく指摘されます) 、もとよりスポーツの場としてのクオリティを一定以上に保つためにも、路面への霧状の撒水のための道具が必要になるでしょう。気候と路面状況によっては1日に数トンの水量が必要となる場合もあるので、上水道利用は現実的ではありません。雨水や河川からの効率的な取水が望まれます。

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トラックをフラットに保つためのメンテナンス機材として、アメリカで最もポピュラーで、かつマストアイテムとされるのは、"モーターグレーダー" と呼ばれる自走式の未舗装道路整地用車両です。前後輪間のブレードは高さや傾きを変えられ、平滑に地面を均し / 削ることができますが、日本のレーストラックではなかなか見かける機会がありません。

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現在日本のトラックで重用されるのは、H鋼などの鉄骨材を組み合わせた "トンボ" を引き回す方法です。牽引車の上下動をおさえ、速度を適切に保つことで、路面のウネリを少しずつ削り取る作業が可能です。下の写真では牽引車として小型のロードローラーが使われていますが、路面を締め固める "ホイールパック" という作業にも、このようなロードローラーやクルマでの転圧は欠かせません。

まずはローカルライダーが定着すること。

お客様として、走行料金さえ払えばいつでも走らせてもらえる、言うならば "遊園地方式" で各地のトラックでのスポーツライディングを楽しむには、このスポーツの特性はあまり向いていないのかもしれません。最終的には自身が快適に走行するため、で一向に構わないわけですが、トラックコンディションを高い水準で維持し、さらに遊び場として育てていくためには、地元・あるいは足しげく通うメンバーという意味での "ローカルライダー" がイニシアチブを取り、まず皆が走行に集中できる好条件を、自分たちの手で作り上げていく必要があります。

Kentucky Flat Track with JD Beach and Troy Bayliss

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人を集める = 求心力と魅力のあるイベントを企画すること。

良質なトラックコンディションは、限られた少人数が右往左往したとて一朝一夕に作り上げられるものではありません。人が集まるから、期待に応えて状況をアップグレードさせられる・トラックコンディションがより良くなることでさらに人が集まる、という "善なるスパイラル" がすこしずつ回り始めなければ、そのトラックは活き活きと躍動を始めないのです。

筆者の経験からも、ことダートトラックというスポーツにおいて、レース = 競争という明快なテーマ以外で、人を集める方法を探るのはたいへん難しい課題です。もちろん付随して、スポーツライディングの純粋さを追求したライディングスクール・走行会 / ミーティングといったアクティビティは当然あり得るわけですが、いずれにせよ、それぞれの主催者が、次のステージの目標を何処に定めるかはたいへん重要になるはずです。

Mid America Speedway 2018- Round 3

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とにかく手間ばかりかかる難儀な種目、ダートトラックについてそんなイメージを刷り込んでしまったかもしれませんが、それでも取り組む価値のある、魅力的なスポーツであることは保証しますよ。筆者はこの週末・・・6/16(土)と6/17(日)に、奈良県下市町のウッズモータースポーツランド下市で開催する、関西のビンテージダートトラック愛好家の皆さんとの久々のライディングセッション "FEVHOTS オープンプラクティス~Dirt Core CAMP~"に参上する予定です。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!