インディアンの『スカウト ボバー』にはアメリカンクルーザーの常識がまったく通用しませんでした。超ロー&ロングで、しかもファットタイヤなのに……曲がる、止まる、めちゃくちゃパワフル! 味わいと高性能って、ここまでバランスできるのか!?

完全に見た目に騙されました

アメリカ最古のモーターサイクルブランドとして知られるインディアン。そのラインアップに追加された最新モデル『スカウト ボバー』をご存知でしょうか?

このバイクの走りが信じられません。ボクは完全に騙されたと言っていいと思います。

限界までロー&ロング

アメリカンを賞賛する時によく「地を這うようなロー&ロングスタイル」って言われますけど、メーカーが作る新車状態のバイクで、ここまで徹底的に“すべてが低い”スタイルは珍しいんです。

それはもう完全に走行性能を捨てたか?と思えるレベルなんですよ……

クラシカルなファットタイヤにも存在感がありますが、注目したいのはフロントフォーク。

スタンダードのスカウトよりもさらに短くなっていて、フロントまでもがローダウンされています。

リア側を下げて「ローダウン」と言うのはよくあること。だけどフロントまで下げてくるのは珍しいですね……これによって大きく走りの性能を失うことになり兼ねないからです。

当然、リヤサスペンションもショート化。かなりレイダウンして装着され、サスペンションのストローク量も少ない印象です。

ぶっちゃけると、失礼ですが到底まともに機能するようには見えないんですよ。

ライダー身長/176cm

しかも、この乗車姿勢です。スタンダードのスカウトより手前に引かれたステップ位置は良いんですが、それでも足をかなり前に投げ出す印象。ハンドルもそこそこ遠い。

だから実車を見て、跨った瞬間に思いました。

『あ、これは見た目がすべてのバイクかな』って。

ありえないはずなのに……

走り出した直後にまず思ったのは、予想していたより乗り心地が良い、ということ。

でも、そんなレベルじゃありませんでした。何ていうのか、常識外なんです。

乗っているうちにライディングポジションが身体に馴染んできた、その後のことなのですが……

高速道路に乗って気がついたんです……そういえば走り出してから一度も、路面からの強い突き上げを感じていないんです。

前後サスのストローク量は少ないはずなのに……ありえない。このサスペンション、実はすごい!?

しかも、高速道路の直進安定性が半端じゃありません。アメリカンらしい「どっしり感」とは違う、高性能なロードスポーツみたいなフレーム剛性の高さを感じます。

その組み合わせが、ゴツゴツしない快適なクルージングを実現させているんです。

ところで言い忘れてましたけど、インディアン/スカウトシリーズのV型2気筒エンジンはめちゃくちゃパワフルです。

排気量1133ccで最高出力94馬力。でもピークパワーだけじゃなくて、低回転域から高回転域まで、きちんとトルクが出ています。力強さにワクワクする感じ。荒々しさと扱いやすさの絶妙ブレンドでした。

アメリカンとしては完成度が高い、じゃないんです。これはエンジンとして純粋に、世界基準で完成度が高いと言っていいと思います。

しかも挟角60度のVツインは不等間爆発を採用していることもあって、低い回転域で流す時は味わいもあるんですよ。

サウンドにもバラつきがあって、いい雰囲気。

低速域はテイスティだけど、スロットルオンで獰猛にスッ飛んでいく。この二面性がスカウトの面白さだと思いました。

しかも、すばらしい完成度のサスペンションと車体設計で、どんな速度域でも走りに不安を感じない。

スタンダードのスカウトもかなり走りますけど、ボバーはアメリカンクルーザーを愛する人々には一度乗ってみて欲しいと思いました。これは、ちょっとした衝撃ですから。

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走りがアメリカンの域を超えている

だけど驚くのはまだ早いんです。パワフルなエンジンと車体と前後サスペンションのバランスが真価を発揮するのは、まさかのコーナリングでした。

常識的に考えれば、このスタイルに旋回性能なんて期待できないはず。

でもスカウト ボバーは違ったんです。これは本当にスゴいと感じました。

このファットなタイヤからは想像もできないほど、バイクを寝かせる初動が軽い!

ヨイショ!ってがんばって寝かせる必要がないんです。ロードスポーツみたいにスッと曲がり始めて、そのままバンクセンサーが路面に接地するまで一気に寝ていきます。

コーナー進入時のブレーキングもシングルディスクが信じられないほど、ものすごく止まる。イメージ通りに減速できます。

もちろんベタベタのロー&ロングスタイルだからバンク角には限界がありますけど、それにしたってこの安定感と軽快さはレベルが違う。

重量の配分が絶妙なんだと思います。

しかも、そこからスロットルを開けていくと、アウトに膨らむことも無いままオン・ザ・レールで狙ったラインをトレース。バンク中にギャップを踏んでも乱れません。

個人的にはボバーの「ソロシート」仕様が男らしくて好き!

ところで、シートも実は高機能部品でした。コーナリング中や強い加速の際に、シートの後端部分が、グッとライダーをホールドしてくれて安心なんです。

何をしても『怖さ』が無い!

不安を感じずにハイパワーを開放。怒涛の勢いでコーナーを脱出する快感。こんな走りかた、もはやアメリカンクルーザーじゃありません。

まさに目からウロコでした。

このスタイルでコーナリングなんて絶対に無理だと思っていたのに、むしろコーナーが面白いなんて……ひとりのアメリカン好きとして、すごく良い経験をしたと思います。

スタイルと走りは両立できる

ボクはアメリカンクルーザーが好きで、もう20年くらい所有もしています。その中では、カッコいいけど走りは我慢。そういうオートバイもたくさん見てきました。

スタイルを求めれば求めるほど、性能は捨てざるを得ない。

そう思っていたのに、考え方が変わったんです。

低く構えたスタイルでも、走る楽しさを捨てなくていい。

インディアンを造るアメリカのポラリス社は、さすがオフロードヴィークルなどでトップシェアを誇るだけはあります。車体設計の技術の積み重ねが違うんでしょう。

それに見てください、このヘッドライトナセル。プラスチックじゃなくてアルミ製です。リヤのショートフェンダーのデザインだって、完璧なクラシック感。

アメリカン系が好きな人のツボをちゃんとわかってますよね。

このスタイルなのにスカウト ボバーは走りを捨てなかったんです。技術で、それを克服した。

ストロークが少ないはずの前後サスはよく動き、しっかり路面を捉えます。ブレーキ性能も素晴らしいし、エンジンも高剛性なフレームも、先にお伝えしたとおり不満なんて一切ありません。

歴史の中で話をすれば、インディアンは常に最先端のパフォーマンスを求めたメーカーでした。

だからインディアンにとって『きちんと走ること』は当然なのかもしれません。

だけど、それに真正面から挑んだアメリカンクルーザーが今までに無かった!

最新のバイクとして高性能は当たり前。そして伝統も重んじる。

2014年にインディアン/スカウトが登場した時も、その走りに感動しましたが、ボバーはその衝撃をさらに上回ったと思います。

アメリカンクルーザーは好きだけど、楽しい走りは諦めている。そんな人がいたら、是非一度インディアンに乗ってみてください。

スカウトボバーでなくてもいいんです。走りのレベルの高さは、すべてのインディアンの走りに共通するものですから!

雰囲気だけじゃない。きちんと手綱のついた、本物の荒ぶるアイアンホース。

インディアンなら、もう走りを諦める必要は無いんです!

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おそらく今回しか手に入らないデザインなので、インディアンの味わいと高性能を感じるついでに手に入れておいてくださいね。

アメリカン好きにとっては、けっこう貴重です!

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