1996年製作・ダニー・ボイル監督のイギリス映画『トレインスポッティング』。ヘロイン中毒の無軌道で定職にもつけないスコットランドの若者たちの、どうしようもない日常を描いてヒットした作品の続編。
ダニー・ボイル監督の名作の続編。大人になりきれない哀れな男たちの人生を描く
ユアン演じるレントン、スパッド、ベグビー、シック・ボーイことサイモン。定職もなく、将来の夢も希望ももてず、ヘロインに溺れ、セックスに逃げ込むだけの毎日から逃げ出すために、ヤバめの仕事に手を出し、成功する。しかし、その報酬をレントンが持ち逃げするところで前作『トレインスポッティング』は終わっている。
今回の『T2 トレインスポッティング』はその続編。
レントンは逃亡先のアムステルダムで結婚し、会社勤めをしていたが、46才にして結婚生活は破綻し、仕事も失い、故郷に帰ってくる。
スパッドは相変わらず麻薬中毒で家族にも見捨てられているし、乱暴者だったベグビーは刑務所暮らし。サイモンは鄙びたパブの経営に四苦八苦しながら売春やゆすりを生業にしている。
結局20年前と変わらない荒んだ生活をしているのだが、出戻ったレントンからすると、それがかえって心地いい。普通の生活に適合しきれずに故郷に戻った彼にとって、悪友たちが更生していないことが救いなのだ。
とはいえ、彼らはもはや怖いもの知らずの20代ではない。底辺を這うような生き方から脱却しようといろいろ画策するが・・・。
大人になりきれない、かつての無軌道で下品な若者たちの”今”を描く、遅れてきた青春映画。
どうしようもないけれど、陽気で自由な主人公たち
セックス、ヘロイン、アルコール。
前作『トレインスポッティング』に描かれた日常から、何の変化も進歩のない。いたずらに歳だけ取ってしまったレントンたちの、どうしようもない時間を描いた本作。若い頃はそれでも明るい未来を夢見たものだが、40代半ばもすぎると、そんな無邪気ではいられない。
気分や見た目は若い時のままで問題ないのだが、生活レベルが同じだと、やはり哀れを誘うほかないのだ。
ただ、フーテンの寅さんもそうであるように、レントンたちは荒んだ生活の中であってもどこか明るい。若い頃と同じように、陽気さを失っていない。それが唯一の救いであり、その一点のおかげでどうしようもない彼らの生き方(とその自由さ)に、どこか憧れめいた気分を持ってしまうのもまた事実なのである。