2001年9月11日に起きた米国同時多発テロ(9.11)は、多くのアメリカ人に新たな戦いを決意させることになった。家族のため内勤への転属を認められたばかりのミッチ・ネルソン大尉もまたその一人。彼は未曾有の悲劇が繰り返されないよう、自ら現場復帰を志願する。
そして、テロの首謀者とされるビンラディンと彼が支援しているタリバンへの反撃のため、ネルソン大尉と、彼が率いる陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の精鋭たちは敵地アフガニスタンに向けて旅立つことになる。
ミッチ以下わずか12名の精鋭たちに与えられた、達成困難なミッションとは?テロリストたちとの壮絶な戦いを生き抜いた誇り高き男たちの生き様を描く、実話ベースの戦争アクション映画。

実話を元にした緊迫したストーリー

新しい家に引っ越したばかりのミッチ・ネルソン大尉と妻、そしてまだ幼い一人娘の、穏やかで温かい家族の描写から本作は始まる。

幼子が指差すその先にあったテレビの画面に、世界貿易センターに突っ込む旅客機の姿が映されたそのときから状況は一変し、舞台は軍部の作戦司令室へと移り、ネルソン大尉の表情も娘を前にした柔和な笑顔から一転して厳しく引き締まったものになる。

9.11のテロの描写はほとんどなく、ある意味見慣れた、テロリストに乗っ取られた航空機がそれぞれのターゲットの建物に突っ込んでいくニュースのシーンが流れるだけだ。しかし米国民にとってはそれだけでインパクトは十分、あのときの緊迫した想いがすぐに蘇るのだろう。

ミッチ・ネルソンは家族のために安全な内勤を希望し、現場を離れていたものの、米国としてテロにすぐさま反撃する必要を感じると同時に、その尖兵になるために現場復帰を申し出て認められる。

彼と、彼を含む12人の陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の精鋭たちに与えられた任務は、アフガニスタンに乗り込んで、ドスタム将軍率いる反タリバン勢力を味方にして、テロリストの拠点であり、5万人のテロリストが待ち構えるマザーリシャリーフを制圧するというもの。それ自体非常に苛酷で実現困難なミッションだが、さらに彼らは山岳地帯の移動に慣れない馬を使う羽目になる。

予期せぬ危機的状況に冷静に対応しながら、ミッチたちは目的地マザーリシャリーフへと歩を進めていくが、やがて思いもかけない事態が発生し、ロケット弾や戦車で武装するテロリストたちの大軍を相手に多勢に無勢の戦いを挑まざるを得なくなる・・・

主演はマイティ・ソーで大ブレイクのクリス・ヘムズワース

http://gaga.ne.jp/horsesoldiers/

敵への怒りや報復欲求に浸ることなく、冷静に任務に当たる主人公たちの姿勢に共感

本作の原題は「12 STRONG」。12人のツワモノたち、といった感じか。
ホース・ソルジャーというタイトルだけを聞くと、西部劇とか、南北戦争時代の戦いを描いているかのように勘違いしがちだが、実際には21世紀に実際にあった激しい戦闘の映画化である。

アメリカ人の愛国心を奮い立たせるような内容であり、テロリストに対して雄々しく反撃した米国特殊部隊の活躍を描いているわけだが、イスラム=悪、のような描き方は全くなく、テロリストは憎いが、さりとて米国が常に偉い、というような表現はない。

ミッチ・ネルソン大尉たちに協力することになるドスタム将軍は、その功績からやがてアフガニスタンの第一副大統領にまで上り詰めるが、複雑な政情の中で巧みに生きる軍人のしたたかさや傲慢さを与えられながらも、ミッチとの間に友情を育み、対等の立場として描かれる。

また、ミッチの部下(映画「ムーンライト」で主役を演じたトレバンテ・ローズ)と、彼の護衛を命じられた少年兵との心の交流も微笑ましく、差別的な演出はゼロだ。

つまり、民族間の戦いであったり、異教徒との戦いというような設定ではなく、あくまで9.11という事件を起こしたテロリストへの反撃、というシンプルな見方だけを我々に与える作りになっていることに、好感をもつ。

主人公ミッチ・ネルソンは当初、9.11で破壊された貿易センタービルの破片を託され、テロリストへの復讐心を煽られるが、彼はその破片をアフガンの土の下に埋める。それはむやみに敵愾心をもって復讐をするのではなく、テロの悲劇を繰り返させないためだけに戦う、というシンプルな軍人としての矜持を示したものだと思う。

激しい戦闘シーンや非常にリアルで、見ていてドキドキハラハラものだが、そうしたアクションを楽しむと同時に、敵への怒りや報復欲求に浸ることなく(感情的になることなく)、ある意味淡々と任務に当たるミッチ・ネルソンたちの姿勢に共感することで、本作の本当の狙いや面白さを感じとれるのではないか、と思う。

2018年5月4日、日本全国公開予定だ。ぜひ見て欲しい。

む映画『ホース・ソルジャー』ショート予告 5/4(金・祝)公開

www.youtube.com