クリストファー・ノーラン監督による戦争映画。
歴史に残る第二次世界大戦中の”ダイナモ作戦”題材に、空、海、陸の三つの”戦場”に視点を分けて描き出された、2017年の大ヒット映画。
特に空戦の描写は静謐かつ荘厳で、息を飲む美しさ。

第二次世界大戦時の英仏連合軍の撤退作戦を題材とした実話ベースの映画化

舞台は第二次世界大戦初期。ナチス・ドイツがまだ優勢を保っていた1940年、ドイツ軍の(戦車や航空機を駆使した)電撃戦によって、フランスやイギリスを中心とする連合軍はいともたやすく撃破されてしまう。
ドーバー海峡に面する街 ダンケルクまで追い詰められた英仏連合軍40万の兵士たちは、まさに背水の陣を敷くが、陸海空からのドイツ軍の攻撃を受け、全滅を覚悟せざるを得ない状況に追い込まれる。
海を隔てたイギリスでは、40万人の兵士たちの救出作戦を計画。命がけのミッションに、軍人だけでなく民間人も参加するが・・・。

本土決戦を覚悟し、戦力を温存せざるを得ない英国の苦慮

当時の英国首相チャーチルは、矢継ぎ早に要地を落としていくドイツ軍を目の当たりにして、英国本土での決戦を想定せざるを得なくなる。そのため、ダンケルクに追い込まれた友軍を救いたいのはやまやまだが、あまり多くの戦力を割くことが難しい。

そこで、空軍からはスピットファイア3機、海からは一定時間に一隻の駆逐艦の派遣が精一杯。あとは、民間船への協力依頼をせざるを得ない状況。

結果的には40万人の将兵のうち、9日間で英仏含む33万人が救出されたものの、多くの武器や備品が押収されたうえ、数千人が捕虜になった。しかし、この救出劇に多くの民間人が参加し、遊覧船や漁船など800隻以上が集まったという事実が英国民の士気を大いにあげ、やがてナチス・ドイツへの反攻のきっかけを生んでいく。

撤退作戦を阻止しようとドイツ空軍が襲いかかる

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度重なる爆撃に英仏連合軍はなすすべがない

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英国は3機のスピットファイアを派遣

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非常に淡々と、シンプルに戦争を描く

本作にはドイツ兵はまったくと言っていいほど出てこない。
戦意を失い、とにかくダンケルクを脱出しようとする多くの兵士たちの姿と、彼らを救うため奮闘する男たちの姿を交互に、そして陸海空の異なる場面を平行して描くだけだ。

例えば派遣された3機のスピットファイアは、撃墜されたり燃料不足で不時着したりと、とにかくパイロットたちはそれこそ死を賭した奮闘をするが、救出された兵士たちには彼らの努力は届かず報われない。
この撤退作戦は、ダイナモ作戦と呼ばれ、救出した人数を考えれば非常に大々的なものではあったが、作戦そのものは地味。しかし、作中ナチス・ドイツへの呪詛や、過度にその存在を否定するような描写もなく、善悪は関係なく、淡々と”戦争”を描き出している。

逃げ惑う多くの英仏の兵士たちは、とにかく死の恐怖から逃れようと必死。彼らを脱出させようとする将校にはまだ気概がみえるものの、全体的には敗北に打ちのめされた哀れな姿ばかりがリアルに描かれる。

英国政府はこの撤退劇の成功を逆手に取り、英国民へより一層の団結を訴える。ある意味ダンケルクは、米国民にとっての真珠湾同様に、イギリスにとって徹底抗戦を誓うきっかけであるのだが、それを敵国に対するむやみな敵愾心を描くことなく、淡々と描いていることに、好感もてる作品である。

映画『ダンケルク』予告3【HD】2017年9月9日(土)公開

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