1949年からの世界ロードレースGP(現MotoGP)の歴史のなかでは、僅差の1点差、または同ポイントでタイトルの行方が決まったシーズンが幾度かありました。今回はナント!! 5勝もしたライダーが、「未勝利」のライダーにタイトルをさらわれたという珍事が起こった1999年125ccクラスを紹介します。

なんとも珍しい、勝ち星ゼロでのタイトル奪取!

20年以上世界ロードレースGP(MotoGP)の全クラスを熱心に観るようなファンの方なら、1999年のあの出来事を忘れることはないのでは? 物語の主役は1973年生まれのスペイン人ライダーのエミリオ・アルサモラ。そして助演男優賞? は、1982年生まれのイタリアン、マルコ・メランドリでした。

アルサモラは1999年シーズンでGP6年目。対するメランドリはフル参戦は2年目で、前年度ランキング3位という有望の若手でした。過去通算2勝のアルサモラに対し、フル参戦初年度ですでに2勝をマークしたメランドリ・・・1999年はともにホンダRS125Rで戦うことになります。

1999年、125ccクラスを走るE.アルサモラ。

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まず、この年のシーズン序盤は開幕から3連勝と、日本の東雅雄が大活躍しました。続く4、5戦はアプリリアのロベルト・ロカテリが優勝。第6戦はアプリリアのアルノー・ヴァンサンが優勝しますが、第7、8戦は東が勝利し、早くも5勝をマークします。

しかし、シーズン中盤の第9戦からはメランドリが強さを発揮。第9〜11戦まで3連勝を記録します。一方東は第10戦でフリー走行時にコース上の鹿に激突!! という不運に見舞われ、以降調子を落としてしまい復調することなくランキング3位でシーズンを終えました・・・。

メランドリは第13戦、そして最終戦でも勝ち星を積み上げ・・・見事シーズン通算5勝をマークします。だが、メランドリは最終戦で2位に入ったアルサモラに、わずか1ポイント差でタイトルを奪われることになりました! (アルサモラ227点、メランドリ226点)。

最後までもつれたタイトル争いを制し、車上で喜ぶE.アルサモラ。

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今は、マルケスのお師匠さんとしても知られています。

1999年シーズン、アルサモラの227点の内訳は、2位5回、3位5回、4位2回、6位2回、15位1回、そしてリタイアはわずか1回・・・というものでした。長いGPの歴史で唯一無二の「未勝利でのタイトル獲得」は、チャンピオンシップ争いには「安定感」が大事、ということを教えてくれる出来事といえるのでしょう。

なおアルサモラは現役引退後、現在MotoGPの最強王者に君臨するマルク・マルケス(ホンダ)の師匠として知られるようになります。2004年に同郷リェイダ県出身のアルサモラと出会った11歳のマルケス少年は、アルサモラのチームですくすくと一流ロードレーサーとして育って(中略?)、今に至っているわけです。