今どき高性能なんて当たり前。でも、スペックだけがバイクの魅力じゃないってことくらい、ライダーはみんな知っていますよね? 派手さは必要じゃない。他人からの賞賛もいらない。でも、譲れない美意識がある。そういう人に乗って欲しいのが、カワサキのW800っていうバイクです。

10年前には、わからなかったこと。

わたくしロレンス編集部キタオカ、基本的にクラシックなバイクが大好きです。

味わいのあるエンジンといえば単気筒か2気筒。空冷が好きで、エンジンの振動が好きで、機械式のキャブレターの荒っぽいフィーリングが好き。

だから、2011年にW800が登場したときは「Wもとうとう電子制御、インジェクションかぁ……」なんて残念に思ったもんです。

だってカワサキの「W」って言ったら、カワサキ大排気量車のご先祖様みたいな存在ですよ? 360度まるごとリアルクラシックの塊。

この美しさに電子制御なんて似合わない、と感じていたのだと思います。

でも、数年ぶりに乗ってみたW800は、ちょっと違う印象でした。

演出じゃないフィーリング

アイドリングでは小刻みに奮えるエンジンを感じるけど、それも控えめ。クラッチをつないで走り出すと、スーッと柔らかく前に出てトトトッと走ります。

そこに「荒々しさの演出」は一切ありません。これが800ccの2気筒?と思えるくらい静かで穏やか。

素直に白状しますが、以前はこのフィーリングに“物足りなさ"を感じていました。もっとドカドカッと走らないんだろうか……って。

ところが最近は、発達したインジェクションで「旧車っぽいドコドコ感」や「パワーあるぞ感」の演出も自由自在。排気サウンドもそれっぽくサウンドチューニングすることが当たり前になってきましたよね。

そういう演出された古っぽさも嫌いじゃない……っていうか、けっこう好きです(笑)

けれど、そんな時代の中で乗るW800は逆に特殊でした。言うなれば、お化粧のない“すっぴん”に等しい状態です。

「あ、エンジンって本来こうだよな……」

ハタと気がついた感じ。そういう当たり前のことすら、いつの間にか忘れてたみたいです。

今回乗ったのはW800ファイナルエディション。インジェクションカバーにはハンマートーン塗装という手間のかかる塗装が施されていました。

それを思い出せたのは、加速感でも排気音でもない、エンジンのメカノイズのおかげです。

W800のエンジンは今どき珍しいベベルギア(傘歯車)によってカムシャフトを駆動しています。

単一の機種に採用するにはコストもかかるし、もはやロストテクノロジーに近いんですが、それがエンジン回転数の上昇・下降に合わせてウィィィィーン!と金属音を奏でるんです。

そこにW800の「機械としてのエンジン」を感じました。燃料噴射装置がキャブレターから電子制御インジェクションになっても、この特殊さだけは他にはありません。

ちなみに走りの中で、前後ともに柔らかめのサスペンションは急な動作を嫌います。

ガツンとかけるブレーキ、無理にハンドルをこじるような乗り方をしてもW800は気持ちよく走ってくれません。

つや消しブラックのハブもファイナルエディションの特別仕様。この“ちょっとそっけない”感じが、何だかいい感じです。

流れに身を任せる感じで、コーナーの進入では車体姿勢を安定させるために薄くブレーキを当てる程度がいいと思う。そしてリーンウィズのままバイクを自然に寝かせていってスロットルオン。

コーナリングをひとつの流れとして、よどみなくつなげていく感じ。こうなると柔らかいパワーフィーリングが気持ちいいんです。

ちなみに5000回転から上で「もういっちょ!」 と力強く伸びるところがカワサキ車らしさ、ですけど(笑)

それでも心拍数が跳ね上がるような緊張感は皆無です。

きっと、すべてに余裕をもって楽しむのが“W800流”なんでしょうね。

ちなみに排気音は静かですけど、走っていてもちゃんと耳に届きます。控えめなサウンドとベベルギアの駆動音のハーモニーには、なかなか趣深いものがあるんですよ?

これは確かに“オトナ向け”

美しいけど派手さは無くて、走りで強い主張もしてこない。日本の美意識「侘びさび」がそのままバイクになったような印象です。

慎ましやかで貞淑というか……そばにいて安心、みたいな。

考えてみると、こういう優しい気持ちになれるバイクも珍しくなってしまいました。特に大型免許クラスでは、もうこれしかないかもしれません。

いつだって「主役はライダー」というスタンス

W800は運転のしやすさ、という面では誰にでも乗れる優しいバイクです。足着き性もいいし、乗車姿勢も無理がありません。リラックス&快適の極みです。

でも、このバイクを真にカッコよく乗りこなそうと思うと、ライダーの度量が問われるかもしれません。

だって、バイクが強く主張しないから、いつもライダーが主役になるためです。

だから、W800を乗りこなすにはライダー自身のライフスタイルが重要になってくると思うんですよ。

にわか、で申し訳ないんですけど、イメージとしてはこういう感じでしょうか?

W800、こうやって乗ってみたい!

革ジャンで硬派に装って、静かに大人っぽくアウトローを気取ってみる。

実際に街中で「あのWの人、カッコいいな」って思う時は、こういう空気感を身にまとっている人が多い気がします。

こういう時に憧れるのは名優スティーブ・マックイーンのアウトロー感ですね。

夜の街をお洒落に楽しむスタイルっていうのも、大人っぽくて憧れ。

エレガントな雰囲気にも溶け込めるW800って、大したものです。

昼の街ではカジュアルもいい感じ。

今回こうやって写真を撮っていて、ある意味、どんなシーンにも寄り添ってくるW800がスゴいなと思いました(笑)

休日、バイクとカフェに出かけるなんてお洒落ライダー上級者な行為もお手の物?

うん、手前味噌だけどチョットいい感じです……W800と過ごす日々って充実してそう(笑)

カワサキ車ならでは

でも、改めてW800はカワサキのバイクなんだな、とも感じました。

どんなスタイルで乗ってもやっぱり「硬派」で、どこかにアウトローな雰囲気があるんです。機械として従順でも、秘めた雰囲気がそうじゃない。

バイクは基本的にひとりです。タンデムもできるし、今やインカムでつながるのも当たり前の時代ですけど、本質的にはひとりの乗り物だと思っています。

そういう一匹狼のアウトロー感が、W800にはあるんですね。

でもそういうのって、すごく「カワサキ乗り」っぽくて好き。

W800は決して速くないし、荒っぽくもない。優しくて、硬派で、時代に流されない頑固一徹。

そこにあるのは時代遅れの、昭和の美意識かもしれません。

でもこのバイクを『男前』と言わずして、なんと言いましょうか?

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