英国鉄鋼王の家庭に生まれ、オックスフォード大学を卒業した貴婦人ガートルード・ベル。華やかで安定を約束された生活を捨て、アラビアに渡った彼女はイラク建国に情熱を注ぎ、“砂漠の女王”と呼ばれるようになる。
”もう一人のアラビアのロレンス”とまで称された一人の英国女性の波乱万丈な人生を映画化。

実在した、女性版”アラビアのロレンス”ガートルード・ベル

ベルを演じるのはニコール・キッドマン

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鉄鋼王を父に持ち、オックスフォード大学を女性で初めて首席で卒業した才女ガートルード・ベルは、男性と同じように世界へ雄飛することを夢見ていたが、彼女が生きた時代は19世紀後半。女性は社交界の飾る華でしかなく、美しければそれだけ政略結婚の大事な駒として扱われる時代だった。

そんなありきたりの生活を拒否するガートルードに手を焼いた父親は、テヘラン駐在公使である叔父がいるペルシャへの渡航を提案する。砂漠の国の厳しい現実を見れば、強情な娘も自分がいかに恵まれた環境に暮らしてきたかを思い知るだろう、という思惑だったが、なんとガートルードは逆にアラブの魅力にはまっていく。

それはやがて考古学者にして諜報員としてイラン建国に大きく貢献する、”砂漠の女王”誕生へと繋がっていくことになるのであった。

分厚いガラスの天井を突き抜けたあとは、華麗な猛禽類のように飛翔していくヒロイン

男の精神と高い知性を宿した女性。それがガートルード・ベルだった。
彼女のような女性はどの時代にもいたと思うが、ガートルードには正真正銘男勝りの気概があり、さらに彼女の運命の扉を開くことができるだけの財力と権力を持つ父親がいた。さらにこの父親が(娘の気概を理解し野心を叶えるためではなく)娘を溺愛するあまりに彼女の我儘に妥協したがゆえに、彼女は歴史の表舞台に登場することができた。

19世紀末の男社会において、美貌と知性を備えた女性であっても出世の道はゼロに等しかったが、ガートルードの場合は、野心や好奇心を抑えることを知らずに育ったことが幸いして、チャンスを得る。そして一度機会を得た彼女は、逆に女であるという”特殊さ”を武器に時代の寵児として、アラビアの地におけるカリスマ的存在へと成長していく。悲恋や激しくうねる激動の時代を糧として。

ヒーロー映画ではなく、実在の人物の人生を描く伝記的性格の強い作品

第一次世界大戦を経て、ヨーロッパの列強の野心の前に後世の紛争の火種を抱えていく中東。そこを舞台に、強く野心を抱えて動乱の渦中に飛び込んだ一人の女性と、彼女が果たすことになる重要な役目を描いた作品。その歴史背景の全てを知らなくとも本作を楽しむことはできる。
同じ時代、同じ地域で活躍した有名人として、アラビアのロレンスことT.E.ロレンスがいるが、彼もまた本作に登場し、ガートルードとの接点を持つ。
同性愛者との疑いを持たれることが多いロレンスと違って、ガートルードは徹頭徹尾女性であり、そのことで本作でも度々ロマンスが描かれるし、歴史的アクション映画という趣より、やはりガートルード・ベルという女性の伝記的映画の側面が強いからだ。

だからというわけでもないが、オスマン帝国からのアラブ独立闘争において、アラブ諸国の独立に尽力した英雄として(「アラビアのロレンス」の中で)描かれるロレンスと違い、本作のガートルードは、社交界や政略結婚から逃れようとした結果、激動の運命に絡まれていく女性の生き方を描いている。より実在の女性の人生を描いており、自発的な使命感とは違う、一人の女性の文字通りの数奇な人生という感じだ。

『アラビアの女王 愛と宿命の日々』予告

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