法定速度でゆったり流す。そのときZ900RSは?
バイクでスポーティな走りを楽しむことは醍醐味のひとつです。でも、誰だって四六時中ガンガン走る訳じゃありません。むしろ、愛車とはゆったり走る時間のほうが長いはず。
そういうのって、長い時間と距離を走らないとわからないんですよね。ですので今回はナンバーの付いたZ900RSで、伊豆をぐるっと回ってきました!
12月の寒空ですけど高速道路を抜けて、都会から離れると気分爽快!冬はクルマも少ないから、ガラガラの道を独占できます。
それにしても……
クローズドコースじゃない、一般道で最高出力111馬力のパワーはボクの腕前じゃハッキリ言って使いきれるレベルじゃありませんね。ひと言で感想を言うなら……
めっちゃ速いな、Z900RS!
です(笑)
今回、走ってみて改めてわかったんですけど、Z900RSのエンジンは、とにかくトルクの厚さが半端じゃないんです。
4000回転も回っていれば、5速だろうが6速だろうがグイグイ加速するんですよ。このトルク感は生産終了となった1200ccのZRX1200 DAEGすら凌ぐように思います。
旅のはじめに箱根ターンパイク~伊豆スカイラインを走って、それを思い知りました。
発進から時速30kmくらいまでは1速と2速でつないで、そこから一気に3速は飛ばしちゃう感じ。1速や2速でギクシャクしないのは電子制御スロットルのおかげでしょうね。パワーデリバリーの調律がお見事!
Z900RSのエンジンセッティングを担当したエンジニアさんは、天才かもしれません。
時速30kmも出たら、そこから一気に4速や5速まで上げてもいいです。むしろ、それくらいのほうが穏やかに走れますから(笑)
そして、眺めの良い雄大なワインディングを飛ばさずに走る。
コーナー進入でのブレーキは優しく当ててスピード調整するだけ。ギアチェンジもしない。こういう走り方でも、Z900RSは本当に気持ちいいバイクだと知りました。
時速60kmで感じる、カワサキの4気筒らしさ
伊豆スカイラインを降りて、一気に伊東の海まで。冬だから観光客が少ないのか交通量も少なくて、ツーリング冥利に尽きる瞬間です。
ぼんやり海を眺めながらシーサイドクルージング。その時、ふと気が付きました。
あれ?ちょっと空冷4気筒っぽい?
その時のエンジン回転数は2000回転、ギアは6速、時速60kmです。5速で2300回転あたりでも同じですが、6速のほうが強く「それ」を感じられます。
高回転まで回さない時の「ドオオオオーッ」っていう低いサウンドを聴きながら、完全にパワーバンドから外れているだろう6速/2000回転からのスロットルオン。
この瞬間が、素晴らしい!
本当に、ちょっと空冷エンジンかと思うくらいの味わいがあるんです。ワンテンポおくれてスピードがついてくる感じ。ゴリゴリと回転が上昇していく、そのフィーリングが最高です。しかも優秀なことにノッキングひとつ起こさない。
Z900RSって、こんな走りかたもできるんだ……って驚きました。
こういうのはギンギンにエンジンを回していたら、絶対に気がつきません。なにせこのエンジンは、4000回転を超えたら、5速でも6速でもけっこう力強く加速しちゃいますから。
味わいは2000~3000回転にアリ!今回、これを知ることができて、伝えることができたことが最大の収穫じゃないかと思っています。
感覚的に、このエンジンは「旅バイクの資質」も備えていると感じられるんです。
それなのに、タイトな峠はエキサイティング
Z900RSは、のんびり走るのも、ここまで楽しめるバイクだとは思いも寄りませんでした。
しかし!
それなのに、タイトなコーナーが連続するワインディングではやっぱり思いっきりスポーティなんです。
そのスポーティさを生み出すのは、まず、前後のサスペンションだと思います。
ぶっちゃけますが、ゆっくり流す時はZ900RSのサスセッティングが少し固めに感じる人が多いかもしれません。もちろんガチガチではなくて、 充分ツーリングも楽しめる範囲内での話です。
でも、負荷のかかるコーナーではこのセッティングが絶妙。具体的に言うと、深いバンク中にギャップを踏んでも、収束が早いんです。
基本的に一般道って凸凹ですからね。そういう道でも、安全に走りを楽しめる足周りのセッティングがされているのだと思います。
そうこうするうちに下田あたりで日が暮れます。冬は日が暮れるのが本当に早いです。
みなさんも冬にツーリングをする時は、ゆとりのあるスケジュールで楽しんでください。そうは言っても夜は冷えますから!
一夜明けて、自分に驚く
早朝から弓ヶ浜へ。南伊豆は都会の喧騒とは無縁です。静かな波の音とZ900RSの排気音しか聞こえない静謐な世界。
Z900RSは、こういうシーンで「自分に酔える」バイクだと感じました。この陶酔感は愛車に選ぶバイクには重要な資質のひとつです。そして、さらに驚いたことがもうひとつ……
ぜんぜん疲れてない……
前日、寒空の下を走って南伊豆まで来たのに、昨日の疲労感みたいなものが、まるで残ってないんですよ。疲れを持ち越していないんですね。
その理由はおそらく「重量215kgの軽さ」と「発進に気を使わない極厚トルク」に加えて、この「ライディングポジション」です。
高めのハンドル位置で背筋がまっすぐ。旧車みたいな乗車姿勢ですけど、これのおかげで肩がこらないし、背中も首も痛くならないんです。
そして、ドカッと座れる座面の広いシート。これも快適さの一因ですね。
トドメはこの足着きの良さでしょう。両足カカトまで超ベッタリ。しかも軽いんだから、考えてみれば疲れる要素がありません。
シート高は800mmですが、数値よりも断然、低く感じます。これ、身長160cmくらいあれば女性でも扱えると思います。
バイクを「愛でる」ことができる
ところで、ボクだけじゃないと思うから言うんですけれど、旅の中で「オレのバイク、世界で一番カッコいいよなぁ」とうっとりできることって、けっこう重要じゃないですか?
なまこ壁の和風建築に、一幅の絵のように収まるZ900RS。
もしこれが愛車だったら、きっと「こいつ買ってよかったナァ」って感じる瞬間だと思います。僕なら写真に撮って友達に見せますね、間違いなく(笑)
全体の雰囲気だけじゃなく、ディテールも満足感が高いです。オーソドックスな丸眼1灯ヘッドライトはLEDで現代的な雰囲気もあり……
「Z」感のあるテールセクションも美しいです。ウインカーも洗練されてます。
性能じゃない部分での「長く愛せるバイクの必須条件」も、Z900RSはきちんと備えてるんです。
Zはこうやって、ちょっと「自分大好き!」な感じの写真を撮ってみたくなりませんか?
それって、このZ900RSが愛せるバイクだっていう証拠ですよ!
青春かっ!?
朝の薄い曇り空から一転、昼前には青空が広がります。南伊豆マジックで12月にも関わらず気温は16度に(笑)冬ツーリングは、やっぱり伊豆がいいですねぇ。
松崎町は「世界でいちばん富士山がきれいに見える町」と宣言しています。その中でも雲見海岸は最高のスポットのひとつ。
ご覧くださいませ!ニッポンのオートバイたるカワサキ「Z」と富士山の饗宴を!!!
まったくもって、バイクの旅は心の洗濯ですね。旅の相棒がZ900RSなら完璧ってもんですよ。
最後はビシッと「走り」でシメる!
最高のシチュエーションに、ついテンションが上がって脱線しまくりでスミマセン。
伊豆スカイラインを降りてから、基本的に海だったので、最後はやっぱワインディングだろ!?と思って仁科峠を駆け上がります。
標高が上がるにつれて空気が冷えて、澄んでいきます。路面温度も下がりますが、トラクションコントロールが標準装備なのは、やっぱり安心感ありますね。
ゴチャゴチャと使い切れない電子制御はいりませんけど、Z900RSはシンプルにABSとトラクションコントロールのみ。このふたつで充分ですよね。
バイクって、これでいい!
旅の締めくくり気分で西伊豆スカイラインへ。海岸線をんびり流すZ900RSと峠もエキサイティングに楽しめるロードスポーツとしてのZ900RS。
そのどちらもが、間違いなく現代「Z」の真実でした。
Z900RSのふたつの顔。そこに共通するのは「走ることが楽しい」っていうことです。
Z900RSって。人とバイクが一体になって走る時間を、すごく大切にできるバイクだと思います。旅することで、それが実感として感じられました。
超シンプル。それがZ900RS。
たぶんバイクって、これでいいんですよね。余計なものは要らない、本当はこれ以上の性能なんて必要ないのかもしれません。
それよりも「バイクで走れて、俺は幸せ者だな」って思えることのほうが大事。
Z900RS。このバイクが愛車になるライダーは、きっと幸せだろうな。
旅の終わりに、すこしだけの羨ましさを感じつつ、ボクはそんなことを思いました。