ユアン・マクレガー 主演のスパイエンターテインメント。
モロッコでの休暇中に、ロシアン・マフィアの亡命計画に巻き込まれたイギリス人の大学教授ペリーとその妻ゲイルは、MI-6の管理下スパイとして動くハメになって・・・。
年間100本の映画を観る筆者ができるだけマイルドに作品批評w

ストーリー:旅先で知り合った男はなんとロシアン・マフィアの大物

主人公のペリーはロンドン大学の教授。美人弁護士の妻ゲイルとともに、旅行でモロッコにやってきた。
二人の関係は良好とは言えない。ペリーが教え子と浮気をしたことがゲイルの知るところになったからだ。二人は夫婦生活を再構築するきっかけとして休暇をとり、モロッコにやってきたのだった。

初日の夜、やや険悪なモードで食事をする二人だったが、ゲイルが仕事の電話を受けてペリーを置いて店を出ると、同じレストランで、1本100万円以上する高級な酒を飲みまくっていた粗暴な男たちのリーダーと思しき男がペリーに話しかけてくる。それはロシアン・マフィアの資金管理を担当する古参幹部のディマだった。ディマはなぜかペリーを「プロフェッサー(教授)!」と親しげに呼び、彼が主催するパーティーやテニスにペリーを招くのだった。

やがて彼は人気のない場所でペリーに、彼に接近した訳を打ち明ける。それは、亡命の意思を英国側に伝えるための橋渡しをペリーに委託したいというものだった。政治と癒着してさらに腐敗していくロシアン・マフィアの実情に身の危険を感じたディマは、彼が管理する資金洗浄(マネーロンダリング)の実情と、それによって私服を肥やす政治家たちを暴くための情報と引き換えに、家族とともにイギリスに受け入れを希望していた。

買いかぶられたことを迷惑に思うペリーだったが、ディマの必死さと、既に交流してしまった彼の家族たちの命を救いたいという気持ちに負けて、ディマの依頼を引き受けてしまうが、それをきっかけにペリーとベイルは、ロシアン・マフィアと英国政界、そして英国諜報機関MI-6の暗闘に巻き込まれていく。

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なぜ僕を選んだ?
悪夢のような非日常的な世界に引き込まれることを知りつつ、あなたなら見知らぬ悪人の必死の願いを受け入れられるか?

ティザーを観ているときは、図らずも亡命劇に巻き込まれたペリー(ユアン・マクレガー)が、どんどん退っ引きならない状況に追い込まれ、破滅に向かうような救いのない物語なのではないか、と思っていた。

しかし、実際には、偶然知り合っただけの家族を、義理というか信義のような感情でほっておけず、むしろ積極的に関わってしまう夫婦の物語だったのだ。
亡命を希望するディマがもたらすであろう情報は確かに一級のものだったが、英国側からするとロシアン・マフィアを叩いたところでそれほどメリットはなく、さらにその結果逮捕できるかもしれない政財界のターゲットたちは大物すぎて、失敗した時のリスクが高かったので、この話には及び腰だった。ディマの亡命を受けて政財界の膿を一掃しようと考えたのはMI-6の一担当者に過ぎず、作戦のバックアップ体制は脆弱極まりなかったのである。

だから主人公ペリーと妻ゲイルは、何度か挫折しかかる作戦の中で、その都度離脱できるチャンスを得るのに、彼らはディマたちを見捨てることができず踏みとどまるのだ。

この物語は、男同士の極めて稀な友情の物語であり、キャッチコピーにもある、”なぜ僕を選んだ”という言葉に集約される。ディマとペリーの出会いはあくまで偶然だし、少ないチャンスの中でディマがペリーに白羽の矢を立てたのは、おぼれようとする者が藁にすがるのと同じだったかもしれない。
しかし、直感的にペリーの忠実さや誠実さを感じ取ったからこそだったし、それを理解したからこそペリーもまたその切実な願いに応えようとした。

ペリーとゲイルのように、ふとした瞬間に暗闇に引き込まれる恐ろしい偶然に、いつ何時僕たちも引き込まれるかわからない。本作は、そんなありえそうな身近に潜む危機を描きつつ、そんな中で困っている人を見捨てられない、というある意味あたりまえの感情に突き動かされていく夫婦の、真似しようのないヒロイックな行動をスリリングに描く、素晴らしい大人のハードボイルドだ。

映画『われらが背きし者』予告編

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