11月18〜19日に鈴鹿サーキットで開催されるRICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2017では、『マスターズ・ヒストリック・フォーミュラ1』をはじめ往年のF1の名機が数多く参加します。そんなマシンの多くが採用するのが、コスワースDFVという名ユニットです。DFVってどんなエンジンだったのか・・・ここで振り返ってみましょう!

デビューは1967年・・・そして1980年代まで、長年活躍します

コスワースDFVというエンジンは、1966年のF1のレギュレーション変更・・・1.5リッターから3.0リッターに排気量拡大に対応して開発されたV8ユニットでした。そもそもコスワースという名は、マイク・「コス」ティンとキース・ダック「ワース」の名前を組み合わせたもので、英国の名門BRMから独立したふたりに、ロータスが戦闘力のある3.0リッターエンジンの開発を依頼したことから、DFV開発はスタートしています。

V8のDFVの設計は、F2用4気筒1.6リッターOHCエンジンのFVA(フォー・バルブ・タイプA)をV8化したような構造であり、DFVはダブル・フォー・バルブ・・・V型8気筒DOHC・気筒あたり4バルブを意味する名前でした。

1978年型ティレル008に搭載されたコスワースDFVエンジン。なおギアボックスはヒューランド製です。

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当時コスワースは資金難に陥っていましたが、ロータスの総帥のコーリン・チャップマンの橋渡しにより、大メーカーであるフォードから資金援助を得ることに成功します。そして完成したDFVは、1967年にロータスの新型車である49に搭載され、デビューを果たすことになりました。

1967年第3戦のオランダGPでは、DFVを積むロータス49はグラハム・ヒルがポールポジションを獲得。そして決勝ではジム・クラークが優勝を記録しました! フェラーリやホンダなどのV12勢に馬力では劣るものの、コンパクトで軽く、セッティングやメンテナンスが容易というメリットが、GPの現場ではアドバンテージとして活きることになりました。

また、エンジンをシャシーの一部に使える設計もDFVの大きな特徴で、これが1970年代F1の車体の進化・・・とりわけ、グランドエフェクトカー開発に大きく寄与したことは確かでしょう。なおロータス49は1967年に出走した全9戦でポールポジションを獲得! しましたが、決勝ではDFVの初期不良やギアボックスのトラブルがたたり、通算4勝にとどまりタイトルは惜しくも逃しました。

そして、レーシングエンジンとして異例な長寿を誇ることになりました

この成功により、フォードは1968年からDFVへのカスタマーへの販売を開始。その後マクラーレン、ティレル、ウィリアムズ、アロウズなどのチームがDFVユーザーとなり、DFV搭載車は1970年代のF1マシンの主流という地位に就くことになります。

DFVはその後DFY、DFZ、DFZ(3.5リッター)へと改良を加えられ、F1の世界で長年プライベーターチームに愛用され続けました。ドライバーズタイトルは1968年のグラハム・ヒル(ロータス)から1982年のケケ・ロスベルグ(ウィリアムズ)まで12回獲得。コンストラクターズタイトルは1968年のロータスから1981年のウィリアムズまで11回獲得。そして、通算勝利数は155勝というのが、DFV系ユニットが得た栄光の記録となります。

1960年代末から1990年代初頭までの期間、多くのプライベーターチームの活躍を支えた「DFVの時代」をF1のひとつの黄金期として語る人は少なくありません。そんなDFV搭載F1を多く見ることができる「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2017」は、F1ファンを自認する者のみならず、すべてのモータースポーツファン必見のイベントと言えますね。現場の鈴鹿で、早くあのV8サウンドを聞きたいです!

こちらの動画は、貴重なDFVのヒストリーやメカニズムを紹介する11分余のドキュメンタリーです。キース・ダックワースら当時の関係者も登場する興味深い動画なので、ぜひご覧ください。

F1 Cosworth DFV V8 Engine

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